「2022年」の記事一覧

読書:「便利」は人を不幸にする / 佐倉統

水色チェックマークのあるタイトル作品のネタバレを含みます

本のタイトルを見た瞬間、多分こういうことを言いたい本なのでは?という仮説を立ててみた。

▼なぜ便利は人を不幸にすると言えるのか?

  • 不便さから工夫が生じると思えば、すでに便利であることはそれ以上の工夫の余地をなくすし、容易に扱えることは、すなわち理解も容易なものだという錯覚を生むから?(インフラや水道水の蛇口の仕組みなんか知らなくても、水は飲める世の中である)
  • 選択肢が多ければ多いほど、人は比較・検討に認知負荷がかかるのでは?(うろ覚え『選択の化学』)
  • 不便であれば、本当に必要なことにしかフォーカスができず、リソースの分配について明確な優先順位がつけられる。便利さは、あらゆる難易度を「簡単」にまで平すので、便利さが溢れると、簡単なものが溢れて、何を優先すべきかはっきりしにくい?とはいえ、不便すぎて生活水汲むのに半日かかる生活は嫌だな……。最終的に労働時間は変わってなさそうだから、生きるってそんなもんなのかもしれないが。

大まかに、こんなところかな。
それじゃあ実際に本を読んでみるか、レッツゴー鎌倉!

「便利」は人を不幸にする / 佐倉統

しまった、この本……読んだことがある……!!(P16めで強烈な既視感)
読んだ覚えがあるせいか、ちょっとパラ読みになってしまった。以下、本の内容と私の感想が入り混じったメモ。

・きりのない欲望。終わりのない不幸。どの時代、どの場所にいようと、結局のところ、人間のあらゆる悩みの総量は同じなのである、という仮説があるそうな。ここを読んで、「これ聞いたことある!それで、数年前の私は納得した覚えがある!この本読んだことあるな!?」と気づいた。ちなみに今は、数年前よりも悩みが減った(悩みの質も良い方へ変わった)という体感があるので、「え〜そうか〜?」と太々しく言える体になってしまった。

・最近の家電はすごい。知識のない人でも簡単に扱えることができ、スイッチひとつで飯が作れるし、掃除機も動く。何もしなくても冷蔵庫は冷えている。それらを動かす電気について意識することも特にない。認知負荷が全くかからないまま、ただ無意識に便利さを享受できるということは、とても素晴らしいことだ。しかし、便利に扱えるせいで意識に登らず、なんとなく知っているというだけで十分、理解をしようとまでは思わない、ということもある。それが大きなデメリットになることはあった。東日本大震災、原発などの災害への認識、それらへ対応する専門家への対応などだ。便利さを支えている技術が理解の範囲を超えているものだという認識は、ある程度持つ必要があるのではないか。

・個人ごとに独自の価値観を持つとはいうが、今は「便利」「快適」「安い」「速い」という前提が当たり前になってきているのでは?世界が多様化しているとは思うが、根っこのところはみんな同じになりつつあるのかも。(葉っぱの生存戦略)

・便利さで生まれた余剰時間で人は自由を得られるが、便利すぎると単純に人から「動き」を奪うものかもしれない。寝っ転がってスマホいじってばっかりになってしまうだとか。人も動物なので、単純に動くこと・思考を働かせること、この辺りはできた方がいいだろうと思うし、なんかいい感じにフュージョンできるような新しい便利さの概念がもっと生まれないものかな。

・アー!!!!伊藤計劃のハーモニーの話してる!!!!!!そういえば私この本で伊藤計劃を知ったような気もする!!!!!!!!!数年越しの伏線を回収してしまった。数年前の私へ、その小説は今の私が読んでおいたから、感謝してくれよな。

パーフェクトハーモニーってまだ通じるのかなパーフェクトハーモニーってまだ通じるのかな

メモは以上。事前に考えた本の内容の想定とは、まあまあ一致していて、まあまあ外れたと言ったところ。
私の総論としては、単純に人間の人格というかモラルというか、そういうものが今の技術に追いついとらんから、運が悪いと不幸になっちゃうことが多いのでは。じゃあどうするか、という課題が当然セットになってくるわけだが、どうしような…。なんだか雑なまとめになってしまった。

読書:66歳、動物行動学研究家。ようやく「自分」という動物のことがわかってきた。 / 竹内久美子

水色チェックマークのあるタイトル作品のネタバレを含みます

動物行動学か〜〜最近、Youtubeのいんよう!チャンネルの科学ニュース雑談で見た、「働きアリにおける分業の維持機構に新たな視点」という話がメチャ面白かったな……ということを思い出して、手が伸びた本。

この本は、『66歳、動物行動学研究家。ようやく「自分」という動物のことがわかってきた』という長いタイトルがそのまま本の概要になっているのだが、動物行動学を専攻とする著者が、「これまでの自分を振り返った人生編」と「人生から学んだことを述べる考察編」についてを書いた本になる。

66歳、動物行動学研究家。ようやく「自分」という動物のことがわかってきた。 / 竹内久美子

著書名を見ずに読んでいたせいで、男性が書いたんだろうなと思い込んでおり、「女のドロドロさに対する描写が結構具体的で、逆に今時珍しいな、こんなジェンダー気にせずバッサリ書いてくるのは……おや…?生涯の友が女性2人…?あっ、書いてる人女性だ!」と気付くまで結構かかってしまった。なんかのバイアスがあるんやろな、ちょっと反省した。

動物行動学についての知見が面白かった所をメモ。

・前提として、基本的に生物は繁殖行動を目的としているので、生殖能力の質の高さがその個体のジェンダーとしての価値になる。メスは一度妊娠すると、妊娠期間・出産・その他諸々の子育てといった多大なリソースを必要とする上、次の子供を得るまでにスパンが開くので、オスを選ぶ目が厳しくなる。オスは、メスを妊娠させるまで・させた後にかかる労力はほとんどないので、メス側に一定の生殖能力への期待(若さとか)があれば、メスほどは厳しく選ばない。よって、この基準に当てはまるものは、メスがオスを選ぶことが原則となる。(鳥とかはオスの方で華やかで美しいのははそういうやつね。世の女性が若作りするのも、生殖能力のアピールだといえる)
その上で、オスとメスの役割が逆転している鳥もいる。その鳥は、メスの方が美しく、オスの方が子育てをする。そうすると、オスの方が厳しくメスを選ぶようになる。
これらから見る本質は、「よりエネルギーを使い、拘束時間も長い、つまり一回の繁殖に対する投資が大きい方の性が、相手を厳しく選ぶ」ということになる。(当たり前のことのようだけど、言語化してもらって改めて「なるほど!」と思えた)

・免疫ってすごい。免疫力が高いやつは生命力も高い。だから免疫力が高いやつはモテる。(そうか?と思ったが、確かに病原菌に対する免疫がないとどうなるかはアメリカ大陸の歴史が物語っとるし、何より今コロナ渦だしな)
そういう意味では、島国である日本の場合、免疫力の集団獲得に祭りは有効である(2022年8月の阿波おどりで1/4がコロナに感染したやつだ…)。
人間はシンメトリー性を好むが(顔が左右対称である方がよいとされるやつね)、実際はさまざまな要因があり、完全にシンメトリーになることはない。そのシンメトリーを妨げる最大の要因は寄生虫・バクテリア・ウイルスなどによるもので、つまりそれら、シンメトリー性が一つの手がかりとなって免疫力の高さを押しはかることができる。ちなみに免疫力の高さは、主に男性側に求められる素質である(男性の方が、ルックスの違いで給料の格差がすごいっていうもんな)。ちなみに体臭の臭さが嫌われるのは、臭いの原因であるバクテリアの発生を抑え込める免疫力が見込めないことから…?なんかもう…免疫力って…すごい!(すごい!)

・政治的立場を「保守的」「リベラル」と二つに分けた時、その立場で嫌悪感受性の強さがわかるのではないかとする研究があるっぽい。保守的な方は嫌悪感受性が強いとされ、病原体の脅威にさられることや衛生状態に敏感、つまり危険なものには近づかないとするのでは?みたいな。そう考えると、リベラルは、「とはいえ、新しい免疫性を取得せんと、ヤバいもんが来た時集団が全滅することがあるやろがい!」みたいに飛び込んでいけることなのかな。やっぱどっちの人間も必要なんだなあ。

・いかにも賢そうにしゃべるやつは、「いかにも賢そうにしゃべる」ことにリソースを振り割っているだけだ。その能力と知識があれば大体やっていけることが分かってるため、実際の能力とはそこまで結びついとらんから、話を間に受けるな(先生!?偏見では!?しかも割かれているページ数多いな!?)

他にも面白いところが沢山あった。ちょっとだけ、著者の自他問わず向けてしまう攻撃性というか、不安定さ?が気に掛かるところもあったが、そういうものも込みで、今も著者は現役の研究家なんだろうなと思える、勢いのある本だった。ようやく「自分」という動物のことがわかってきた、というタイトルは、そういうことかもしれない。

読書:アフリカ人学長、京都修行中 / ウスビ・サコ

水色チェックマークのあるタイトル作品のネタバレを含みます

最近はイベリア半島〜アフリカ周りの地理に興味があるので、なんとなくタイトルに惹かれて手に取ろうとしたところ、「そういえば、京都の大学ではマリ人の方が学長になられたとかいう話があったのでは?これか?」と急に思い出した。期待する気持ちで本を確かめたところ、まさにその方の著書だったので、心の中でガッツポーズをとってしまった。イエス!こういったところに日々の喜びがあるってワケ。

まあそれはさておき、2018年4月より2022年3月までの間、京都精華大学学長を務められた先生(Wiki調べ)の本である。

アフリカ人学長、京都修行中 / ウスビ・サコ

タイトルと表紙から感じる雰囲気の通り、読みやすい文体のエッセイ。京都の大学で学長を務めるくらいだから日本語が堪能なのも分かってはいたのだが、五カ国語を操るの凄すぎない?
数ページをめくって一番興味が惹かれたのが、専攻が空間人類学(建築と空間の関係性から見る人類学みたいなやつ?)だったことである。これも前々から気になっているジャンルで、イーフー・トゥアンさんの『空間の経験ー身体から都市へー』を積んでいることを思い出しちゃった……。この積み本もいずれは読まねばなるまい。

著者の母国であるマリと言う国は、アフリカ大陸の西側に位置する内陸国である。一夫多妻制で、大きな中庭を囲んだ家を持ち、その中で家族・親族合わせて100人くらい住まうことがザラだと言う文化らしく、そんなことある!?とビックリした。一夫多妻制の文化があるのは分かるのよ、でもそんな多人数で一箇所に住む!?一夫多妻制ってどういう家でみんなで住んでいるのか、ということを、今までちゃんと想像したことなかったなあと気付かされた。マリでは、そんな多人数が住まう家にある大きな中庭に、皆が集まって何かをすることが多いらしい。調理をすればその中庭はキッチンに、お皿を並べればダイニングに、椅子を置けばリビングとなる。このエピソードを聞いたとき「この空間の使い方、ちょっと日本と似てるかもしれない……!」と感じた。日本は狭い畳の上に、布団を敷いては寝室にし、布団を畳んでしまった後にちゃぶ台持ってきて食事どころに、その後は勉強をして、みたいなことしてたかもしれない。近代建築は一空間に一機能という傾向にあるようだが、そのあたりへの変化も込みでこういった話を聞くと、空間人類学に興味が出てくるな。

本の前半は、日本(京都)へ来ることになったきっかけについて、後半は実際に京都に30年以上住んでみて感じたことへの考察などについてを語られている。いやー、京都の生態についてメッチャわかった気になってしまった……。観光所はたくさんあるけれど、天皇に献上するための上質な品を作る職人も抱えている。ソトとウチの境界線を引くし、とにかく婉曲的なので高度なKYOTOリテラシーを要求されるが、彼らなりに気を遣ってくれてもいる。新しい考えも、一旦は受け入れる度量もある。特別これが知りたい!という目的があって手に取った本ではなかったのけれど、京都とマリのことを楽しく知ることができた。

そしてこれはなんのジャンルの本だ…?とりあえず「カテゴリー:社会」にセットしておく。

本を読み終わった後に見つけたウェブ記事なのだが、良い記事だったのでメモ。

吹き荒ぶ風のゲーニッツでも暴れとんのか?

水色チェックマークのあるタイトル作品のネタバレを含みます

台風また来るんか〜しゃあないな〜と半分ナメてかかっていたら、ストレートに直撃してきて、ものすごい暴風雨になってしまっている。そんなあ。

今日観たものは以下の通り。

▼漫画
・紅殻のパンドラ #97 (前編)

▼Youtube
・【ゆっくり解説】救いを求める狂気の群れ・民衆十字軍【歴史解説】
・ザマの戦い 受け継がれる魂と魂のぶつかり合い!

▼読書中
・ポルトガル史
・レンタルなんもしない人のレンタルなんもしない人のなんもしなかった話

読書:中学社会のなぜ?が1冊でしっかりわかる本 / 玉田久文

水色チェックマークのあるタイトル作品のネタバレを含みます

クイズ形式の中学社会の本。地理・歴史・公民のジャンルからそれぞれ問いを出されるので、知っているものはそのまま、うろ覚えのものは頑張って答えらしき必死に考えてから解答をみる、と言う検索学習をするタイプのやつね。(頭の中で必死に思い出そうとするほど、その後の記憶力の定着も良くなる)

中学社会のなぜ?が1冊でしっかりわかる本 / 玉田久文

とりあえず、高校生向けは烏滸がましいから中学生向けの社会から……!と軽い気持ちで半分ナメてかかっていたら、結構…だいぶ…分からなかったので反省したい。

本「鑑真は何しへ日本に?」
私「誰!?!?」

本「勘合はなんのために使われた?」
私「勘合……なに?」

本「国際連合に、日本は何番目に加入した?」
私「知らね〜〜〜〜〜〜〜!」
本「80番目や」
私「マジで中学生こんなこと覚えてんの!?」

地理はまあまあ思い出せたり推理で凌げたりできたが、歴史が壊滅的にダメ、公民はまあまあダメと言うことが判明した。全体的にダメ。20%もちゃんと答えられなかった気がする。そんなあ〜!あんなに解説動画を見てたのに!?(その発想がもうダメなのよ)

とはいえ、1ページめくるごとに頭を必死に使って読む本とか普段そうそう読まないから(低レベル読書)、そう言う意味では程よい疲労感を覚える筋トレみたいな良本だった。またこういったシリーズを手に取りたい。

とりあえず、鑑真……誰だよ!(Googleに尋ねよ)