読書:音読で外国語が話せるようになる科学 / 門田修平
音読に興味が出てきて、AmazonのKindleで関連図書を探していたら、こんな並びが出てきて笑ってしまった。
- 音読で外国語が話せる容易なる科学 科学的に正しい音読トレーニングの理論と実践
- 外国語を話せるようになるしくみ シャドーイングが言語習得を保身するメカニズム
- シャドーイング・音読と英語学習の科学
音読 vs シャドーイング vs 音読&シャドーイング対決!普通に最後の本が一番強そう!
と思いはしたんだけど、シャドーイングより音読の方に興味が湧いているので、先にこちらの本から手にとった。音読とシャドーイングの違いは、以下の通り。
・音読:視覚情報を音声に変換する(テキストを目で追って発声する。小学校の国語の授業でやったようなやつ)
・シャドーイング:聴覚情報を音声に変換する(英語の学習でよく見る、耳でネイティブの発声を聞いて、すぐに自分も真似するように発声で追いかけるやつ)
シャドーイングは英語学習にすごく効果的!そういう実験結果がいっぱい出ている!みたいな話をよく聞くが、音読に関しての知見はあまり見かけたことがない。
ノーベル賞受賞者の湯川秀樹が幼い頃に漢文の素読(音読)をさせられていたことが後々勉学に繋がったという話や、目でテキストを追うインプットだけよりは声に出して読むアウトプットを行った方が記憶に定着する、音読が出来ないヤツはそもそもテキストを読めていない(目で見ているだけで独自の読み飛ばしや読み方をしてしまっている)、あとなんか音読は脳トレに良い、というフワッとした知識しか覚えていないため、今回ちゃんと読んでみることにした。
この本がいうところの、外国語習得のキモは以下のサイクルを回すこと。
(1)インプット…大量に本を読んだり音声を聞いたりする(リーディング・リスニング)
(2)プラクティス…インプットしたものを脳内に定着させる。インプットとアウトプットのループで強化される。
(3)アウトプット…声に出したり書いたりする(スピーキング)
(4)モニタリング…学習状況を観察し、調整を行うためのメタ認知
このサイクル表を見て思ったんだけど、学習やスキルの習得っておおよそこの流れではないか?と思い至り、そこで一気に興味が湧いてしまった。今井むつみ先生の『学びとは何か』という本を思い出すなあ。どれも大事な工程だとは思うが、私はこの「(3)プラクティス」について興味が湧いた。五感からのインプットを受け、それをアウトプットするためには、途中で脳で噛み砕き、変換する工程がある。入出力を繰り返すことでその処理を高速化し、流暢にし、脳と身体に定着させ、自動化させる、このプラクティス効果が、サイクルのループ、つまり実践において重要っぽい。これについて音読が効果的である、みたいな感じである。なるほど。
また、この本では音読だけではなくシャドーイングの重要さも説いており、大変ためになった。視覚だけではなく聴覚も使い、違う感覚から多様な入力を行い、それぞれを脳内の違う回路で変換し、意味を一致させて声に出す。テキストを目で追っているだけでは外国語を喋れるようにはならないし、音声を耳で聞いているだけでは外国語の読み書きができるようにはならない。特に日本語は必ず母音が最後に来る言語だし、習熟していない外国語の「音声言語(話し言葉)」と「文字言語(書き言葉)」の言語処理には乖離がある。聞く、見る、話す、それぞれ違うアプローチで英語のスキルを習得し、コミュニケーションのため、そして自己表現のために習熟するには、両方を行うことが効果的である……なるほどなあ。
ちょっと惜しいかもと思ったところ。発声時にはパワーポーズが効果的だよ!(力強いポーズを取ると力強く、弱々しい姿勢でいると気も弱く、といったように、その人の姿勢やポーズに人は影響されるのだ!みたいな説)という話が出ていたが、確かパワーポーズの提唱者が「パワーポーズは効果がなかった、もう研究しない」というコメントを出していたような。訂正が間に合わなかったんだろうな。科学とはそういうことを繰り返すものだとはいえ、勝間和代さんの昔の本の傾向でもあるんだけど、やっぱトレンドの最新の学説を自説に取り入れてすぐ本にして出すってこういう怖さがあるかもしれない。
とはいえ、外国語習得のみならず、他の学習においても応用が効く、良い本だった。じゃあ次は、シャドーイングをメインにした本について見てみるか……と思ってスクショを見ながら気づいたんだけど、
全員作者が同じなんだが!?!?!?!?