昨日の「徒然草(ストーリーで読む日本古典)」を読んで、伝記ものの学習まんがも読みたくなったことと、松尾芭蕉の伝記ものの漫画が面白いって紹介していた人がいたような……という曖昧な記憶で手に取った本。
読み終わった後にちゃんと調べたら、その松尾芭蕉の伝記ものは『釣りキチ三平』の先生が描かれた別の漫画だったため、ネットで買いました。これはこれで後日読みたいと思う。
ともあれ、私が知っている松尾芭蕉は、「閑さや岩にしみ入る蝉の声、のセミの分類について、後世の歌人たちがバトったことがある」「古池や蛙飛びこむ水の音、もおそらくこの人」「ギャグマンガ日和にパロられてた人」「俳聖」「奥の細道」「昔の歌人俳人は大きな旅をして名句を残しがち、多分この人もそのひとり」というだいぶ出典の怪しい認識しかなかったのだが、その偏った知識がこのコミック版でやさしく是正されてしまった。子供向けの本を読む際には「どこまで子供向けに改竄されているのか」という点がやや気になってしまうのだが(今年の6月に「英才を育てるための小学校「国語」副読本」という本を読んでいた際、ロックな生き様を見せた良寛の過去がマイルドな生き様に修正されていたのを見て泣いた覚えがある)、Wikipediaの紹介と照らし合わせた限りは、そこまで大きな違いもなかったと思う。「夏草や兵どもが夢の跡」も松尾芭蕉だったかー!
松尾芭蕉の大まかな経歴や、有名になった「おくのほそ道」の旅路、残した名句、そして当時どのような文化を築き、また人を驚かせたのかといった話の流れは掴みやすいし、適度に知的好奇心もくすぐってくるので、「おくのほそ道」を手に取ってみたり、その旅路の地理を調べてみたりしたいなあと思わされるような良い伝記漫画だと感じた。
私の母方は山形県鶴岡市の出身なので、その近辺にある最上川という河川にちなんだ「五月雨を 集めて早し 最上川」という俳句が詠まれたエピソードが出てきた時は、ちょっと嬉しかったな。「よく考えたらその句は聞いたことがあったし、親戚の家に行く時とかに、最上川は目視で見たことがある…ような気がする…多分!」とニッコリしてしまった。あと、地味に面白かったのが、この本でも出てきた句の推敲のエピソード。「五月雨を 集めて”早し” 最上川」は、どうやら最初に詠まれた時は「五月雨を集めて”涼し”最上川」だったらしい。そうか、詩人だもんね、言葉の推敲はするに決まってるじゃん…!といたく感動してしまった。(文章を何度も練り直すという意味の「推敲」の語源は、中国の詩人が、「僧は推す月下の門…推す…敲く…どっちがいいかな…」と悩み抜いていたところを漢詩のできるお偉いさんにぶつかって相談して、「敲くやろな」と返されたエピソードで出来たはず)
軽い気持ちで有名な歴史上の人物の学習まんがを読んだだけでも、こういう記憶の紐付けエピソードがいっぱい湧いて出てくるので、歳を取るのも悪くない……!そういう思いに至る、懐かしい伝記漫画でした。