「2022年10月」の記事一覧

読書:人生で大事なことは、みんなガチャから学んだ / カレー沢薫

水色チェックマークのあるタイトル作品のネタバレを含みます

カレー沢薫先生の「この人、努めて冷静に『気が狂って20年!』みたいなモンを書いたり描いたりするよな……」的なエッセイだったり漫画だったりが好きで、ちょいちょいといろんなコンテンツを読んでいる。そのうちの一つであるこのエッセイ本は、後半になるにつれ、いつもの笑いが謎の感動に変わるので、読み応えがあった。刀剣乱舞のへし切り長谷部と、土方歳三に沼った一人のオタクの生き地獄だけで、1冊の本になることなんてある?こわ……。

人生で大事なことは、みんなガチャから学んだ / カレー沢薫

とはいえ、カレー沢先生は既婚者であり、エッセイを書かれるきっかけも、夫婦で生きるメディア『TOFUFU』という媒体からの依頼だったため、基本はリアル結婚生活をベースに書かれている。と思う。ただ、先生自身は夫婦生活を題材に書くことは避けてきたらしく、その気持ちを見かねた編集さんが、逃げ道としてオタクの話(二次元の推しと結婚生活)とかしていいですよ……と勧められたっぽいが、先生自身は「正直それもなあ……」と言うお気持ちだったのかもしれない。多分、奥歯を噛み締めながら、リアル夫婦生活とオタクの話の両方を無心の反復運動で書いているんだろうな……という偏見が過ぎる読みをしながら読み進めたが、最後にはタイトル回収してくれるので涙が出ちゃった(笑いで)。なんやかんやで、面白いエッセイを読ませてもらったで!というハッピーエンドスマイルにさせられてしまうあたり、カレー沢先生の『とりあえずで自分を切り売りできる作家』というストロングスタイルの強みを見せつけられた気がした。

面白かったところ。多種多様な表現であらゆるオタクの悲しみを表現するところ(旬の過ぎたジャンルにハマってしまったオタクが焼け野原を見て呆然と立ち尽くしていたり)。尽きることのないへし切り長谷部という名の命の泉。刀剣乱舞のアニメ、花丸の方ではフワフワだった兼さん(和泉守兼定)が、アニメの活劇の方では「兼さんが大卒だ」と騒然とされるほど賢マンになっていたこと。徳川家康が敗走時ウンコを漏らした時、屈辱を忘れぬために肖像画を描かせたことを「私もそれに倣ってFGOの土方さんガチャで〇〇万溶かして撤退した時の顔を写メって待ち受けにするべきだった」とか言い出すこと(教養の使い方)。ガチャ沼。あとガチャ沼の話。かくいう私も、FGOやメギド72、ミラクルニキといったソシャゲにまあまあの課金をしていたので(控えめ)、非常に身につまされる思いがした。で、でもさ、ガチャってストーリーとか勧めなくてもできるんだよ?ポチポチするだけで直ちにアドレナリン出るんだから、コスパはともかく、今流行りのタイパってヤツはよくない?ダメだ、30代前半で封じたはずの愚かさが、オタク特有の早口となって臓腑からまろび出そうになっている。今日はここまで!

読書:まず牛を球とします。 / 柞刈湯葉

水色チェックマークのあるタイトル作品のネタバレを含みます

今年に入って古典SF小説に手を出したあたりから、なんとなく流れでSF作家の著者・柞刈湯葉先生のお名前は知っていた。その後に「まず牛を球とします。」という本が出ていたのも、知ってはいた(Youtube番組で紹介していたんだと思う)。そして私は、有意義なことが聞きたいっぽい気分になった時、「いんよう!」というポッドキャスト番組を聴くことがあるのだが、そこでも「まず牛を球とします。」の話が出てきたので、私の領域にかなり侵入していることを知り、焦ってしまった。分かった!いつか読もうと思っていたけれど今読むから!ネタバレは待ってくれ!

まず牛を球とします。 / 柞刈湯葉

そういうわけで、このSF小説短編集を手に取った次第である。このブログを読み返すと、10月上旬くらいからチマチマ読み進めとるな(10/710/1510/19)。短編小説集って久しぶりに読んだかも。1ヶ月くらいかけて読んでいるので、記憶に誤りがあるかもしれないが、最近のSF小説って、無闇に煙草を吹かす科学者とかが出てこないんだな?ソ連も出てこないし……新鮮だな……(?)

以下感想。

・まず牛を球とします。
なんでも科学技術で改造が出来るようになってくると、人間の、なんだろう、人間性?倫理?道徳?がその利便性に振り落とされることあるよなあ。思想だけなら大体ことは素晴らしい理想論なんだけど、そのイデアを見ようとする現実社会の人間どもの器が追いついてなくて、なんか平たい、うっすらキラキラした地獄の顕現が観測されるというか。共産主義とか宗教とか……。それも人の文化なんだよなあ。なんの話してる?仙台行って牛タンが食べたい。

・犯罪者には田中が多い
急に『三毛猫ホームズ』『ニコニコ大百科』という単語が出てきたので、にこにこしてしまった。単純。読み終わった後、待てよ、作家くんがここまで悔しがる理由ってなんだっけ…?と首を捻りながら読み返した。ああ、彼の創作する主人公にはギャップが足りないって悩んでいたって話があったか!普段小説を読まないから、私は伏線の掴み方が本当に下手。

・数を食べる
私は理数系が壊滅的なので、逆に数字の概念の話になってくれて助かった。(助かってない)
とはいえ、数学はなんか「理解できなさそうだけど、人類には割り切れるもの」っていう認識なんだけど、概念は逆に「理解できそうだけど、マジで理解できるやつなんかおらんし、その上で理解できたら怖くない?」ってもんのような気がして、そういう(分からなさそうでわかるもの+分かりそうで分からんもの=わか、わからな、わか、わか?え?あ?みたいな)系統のホラーかなあと思ったりもした。

・石油玉になりたい

ちゃんと小説を読まないうちにググったりする無作法をカマすと、こういうことになる。


・東京都交通安全責任課
つまり、人間は、自分が作り出した時代って創作物をちゃんと乗りこなすスキルが足らないってコト!?(???)

・天地および責任の創造
かといって世界って創作物に対して、ちゃんと創造主が責任を持って辞めることで世界は大惨事になったから、飼ったペットの面倒は最後まで見るのが大事ってことだね……。
ぜんぜん関係ないんだけど、責任をとって辞めるってことの意味不明さが私も分からなくて、それはおかしいよ!って教えてくれたのが、ブラック企業に勤めていた時のブラック上司だった(最後まで辞めずに仕事をこなすことが責任であって、辞めて逃げることは責任じゃねえから!って辞めさせてくれなかった、私は朝5時まで仕事した)の思い出して、一人でフフッと笑ってしまった。

・家に帰ると妻が必ず人間のふりをしています。
家庭という絶対的に安心感があるはずの場所に、理外の怪物がいる。ははーん、さては人間社会の風刺だな?毒親とか鬼女とかDV夫とか、家庭内にもいるからね。人間に見えるニンゲンは怖いね。と思ってしまったが、後書きを見たらそんなことじゃなかった。ただただ2ちゃんの家庭版を見ていたことがある自分を自覚しただけだった。お恥ずかしい。

・タマネギが嫌い
具体的なタマネギの話をしているんじゃねえんだよ、概念のタマネギが嫌い(だからあらゆるタマネギが嫌い)って話をしてるんだよ!ってこと!?

・ルナティック・オン・ザ・ヒル
なんとなく『星を継ぐもの』を思い出しちゃったな。5万年後、月面上で、この謎の死体が2つ見つかって欲しいな。

・大正電気女学生 ~ハイカラ・メカニック娘~
俺は大正のことを何も知らない……。ただ、大正の少女の主人公は『お淑やかに見えて、最後は大きな決断をし、男に逆らう(父親を切る、違う男と逃げる、嫁いだ先で不倫をする)』というテンプレが人類史にあるような気がしていて(?)、その阿頼耶識の名残を感じられたので、よかったです(??)

・令和二年の箱男
箱男ってなんだろう?と思ってググったら(中略)、こっちは実在している小説じゃねえか!
よくも騙したァァァ!!

・改暦
やっぱ人間、一度は「トムソーヤの冒険」みたいな世界を描いたとしても、歳を取ってシステムを理解しちゃうと諦念抱いて「人間とは機械である」みたいな本を描きがち(マーク・トゥエインをディスるな)

・沈黙のリトルボーイ
科学と天運で見出すボーイミーツジャパン。

・ボーナス・トラック・クロモソーム
これ!最後のこれが私にとって一番面白かったかも!面白かったというか、主人公の考えに「わかる〜〜」ってなったので、背景を考えたり没入したり思考を追ったりする時間が気にならなかった。
あと、私が昔バンギャやってた頃、なけなしのバイト代で買ったマイナーバンドのCDの最後のボーナストラックに、2分48秒のブランクのあと急にハードめの音楽がかかる仕掛けに遭遇したことがあり、テンションが激上がりしたことを思い出した。

以上。いろんな仕掛けがあって面白い本だったな。

(法螺貝を吹く音)

水色チェックマークのあるタイトル作品のネタバレを含みます

そろそろエアコンで暖房をつけても許されるのではないか? vs まだハロウィンも来てないのに!?そんなことが許されるのか!?という自我と自我との戦いに明け暮れているのだが、さすがに寒すぎるので、エアコン暖房はともかく寝床だけでもと冬仕様に変えた。

▼おふとん冬の陣
・毛布
・羽毛掛け布団(防ダニカバー)
・電気毛布
ーーーーーーーーーーーーーー
・私(超極暖のインナー)
ーーーーーーーーーーーーーー
・ヒートテック毛布
・除湿シート
・敷布団(防ダニカバー)

さらに加湿空気清浄機を設置し、夜中寒いからとトイレの暖房便座も電源を入れて(冬以外は節電でコンセント抜いている)、と勢いに乗ってきてしまい、ここまでやったらもう暖房をつけていいのでは!?という気分に変わってしまった。やっぱ人間、冬に気合いで抗おうなんて無理なことなんだよ。

漫画:マダムが教えてくれたこと / ユニカ

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Twitterでチラリと見た覚えのあるWeb漫画が、Kindle Unlimitedに入っていたので、反射的にポチった。最近は『マダムたちのルームシェア』というWEB漫画も人気のようだし、マダムものって一定の需要があるんだなあ。まあ人間誰しも歳をとるから……みたいな分かった風な感想が出てくるくらいに、このジャンルにはマジで疎いのだが、せっかくの機会だし絵柄が好きだし、まあ見てみるか!と手に取ってみた。

マダムが教えてくれたこと / ユニカ

就活中の女子大生が、バイト先のカフェでオシャレでカッコいい70代のマダムと出会い、憧れ、少しずつ良い方向へと変わろうとし、成長をしてゆく感じのストーリー。若者が心から憧れられる年配の人って、たぶん探せば世の中にいっぱいいるんだろうけれども、まず自分の視界にその人が入り、意識に登って、その上で心から認めるなんてことは滅多に無いような気がするから、その点この女子大生はすごい。

この女子大生は積極的にマダムに話しかけ、素敵だなあと思うマダムの振る舞いを少しずつ取り入れ(背筋を伸ばしたり、ファッションについて学んでみたり、人を観察するようになったり)、そして成長してゆく過程で世界の見え方が変わり、今度はマダムが女子大生から学んだりして、交流を深めていく。そして最後は、という感じの物語だろうか。主人公がクヨクヨしつつも前向きに行動できるタイプなのが、かなりプラスに働いている漫画に思える。続刊があるわけでもないようだし、綺麗に一冊に話が纏まってるのが好印象である。脱線するんだけど、最近、完璧超人じゃないと、尊敬できる対象として認められないような風潮ない?人間誰しも欠点はあるし、他人には見せたいものしか見せたくないし、理想なんて実在するワケないけど、そこで投げ出したり思考停止をしたりせず、現実に向かって一歩踏みだす力がある主人公は、見てみて安心感があったな。面白い漫画だった。

漫画:正反対な君と僕 1〜2巻 / 阿賀沢紅茶

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ジャンプラで読んでみたら、とても良かったラブコメの漫画がこちら。

正反対な君と僕 1〜2巻 / 阿賀沢紅茶

ジャンプラで数話みて、面白かったのでKindleで一気に買いした。この歳になってくると、身構えずに楽しく読めるラブコメが本当にありがてえ〜!色恋沙汰がめんどくせえ漫画は、探さなくても視界に入っちゃうからな……。本当にありがたい漫画だ。

表紙絵とタイトルから受ける大体の印象の通り、明るいギャル系の女の子と真面目っぽい男の子が付き合い始めた、という流れの物語になる。男女のどちらも真摯だし、付き合い始めてお互いの価値観が広がりを見せる感じ、たいへん安定感を持って楽しめる。最新話では、サブキャラクターたちの恋愛の広がりも見えるようになっていく流れっぽい。

普段は「人間そんなに頭が色恋沙汰ばっかりなワケあるかよ!そんな風潮だから歌が全部恋愛ものになっちまうんだろ、目を覚ませ!」と思って生きているんだけど(こんなかなしいモンスターになる予定はなかった、と言っておく)、ふしぎとこういうラブコメディは素直に屈してしまうんだよな。普段、ちゃんと屈しておかないからこんなモンスターが生まれてしまうんだよ、きっと……。新刊が出たら、また買おうと思う。最新刊がまだ2巻めなので、追いつきやすいの助かる……!