読書:人生で大事なことは、みんなガチャから学んだ / カレー沢薫

水色チェックマークのあるタイトル作品のネタバレを含みます

カレー沢薫先生の「この人、努めて冷静に『気が狂って20年!』みたいなモンを書いたり描いたりするよな……」的なエッセイだったり漫画だったりが好きで、ちょいちょいといろんなコンテンツを読んでいる。そのうちの一つであるこのエッセイ本は、後半になるにつれ、いつもの笑いが謎の感動に変わるので、読み応えがあった。刀剣乱舞のへし切り長谷部と、土方歳三に沼った一人のオタクの生き地獄だけで、1冊の本になることなんてある?こわ……。

人生で大事なことは、みんなガチャから学んだ / カレー沢薫

とはいえ、カレー沢先生は既婚者であり、エッセイを書かれるきっかけも、夫婦で生きるメディア『TOFUFU』という媒体からの依頼だったため、基本はリアル結婚生活をベースに書かれている。と思う。ただ、先生自身は夫婦生活を題材に書くことは避けてきたらしく、その気持ちを見かねた編集さんが、逃げ道としてオタクの話(二次元の推しと結婚生活)とかしていいですよ……と勧められたっぽいが、先生自身は「正直それもなあ……」と言うお気持ちだったのかもしれない。多分、奥歯を噛み締めながら、リアル夫婦生活とオタクの話の両方を無心の反復運動で書いているんだろうな……という偏見が過ぎる読みをしながら読み進めたが、最後にはタイトル回収してくれるので涙が出ちゃった(笑いで)。なんやかんやで、面白いエッセイを読ませてもらったで!というハッピーエンドスマイルにさせられてしまうあたり、カレー沢先生の『とりあえずで自分を切り売りできる作家』というストロングスタイルの強みを見せつけられた気がした。

面白かったところ。多種多様な表現であらゆるオタクの悲しみを表現するところ(旬の過ぎたジャンルにハマってしまったオタクが焼け野原を見て呆然と立ち尽くしていたり)。尽きることのないへし切り長谷部という名の命の泉。刀剣乱舞のアニメ、花丸の方ではフワフワだった兼さん(和泉守兼定)が、アニメの活劇の方では「兼さんが大卒だ」と騒然とされるほど賢マンになっていたこと。徳川家康が敗走時ウンコを漏らした時、屈辱を忘れぬために肖像画を描かせたことを「私もそれに倣ってFGOの土方さんガチャで〇〇万溶かして撤退した時の顔を写メって待ち受けにするべきだった」とか言い出すこと(教養の使い方)。ガチャ沼。あとガチャ沼の話。かくいう私も、FGOやメギド72、ミラクルニキといったソシャゲにまあまあの課金をしていたので(控えめ)、非常に身につまされる思いがした。で、でもさ、ガチャってストーリーとか勧めなくてもできるんだよ?ポチポチするだけで直ちにアドレナリン出るんだから、コスパはともかく、今流行りのタイパってヤツはよくない?ダメだ、30代前半で封じたはずの愚かさが、オタク特有の早口となって臓腑からまろび出そうになっている。今日はここまで!

あかね

静岡に住む、30代後半のものです。当時何に興味かあったのかを振り返るとき用に、読んだ本やYoutube動画、考えたことなどを書いていきます。