「漫画」の記事一覧

漫画:スーパーエレガント完全版 / 大川ぶくぶ

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ポプテピピックでブレイクした、大川ぶくぶ先生の初期のギャグ漫画「スーパーエレガント」一式セット!みたいなヤツらしい。めちゃくちゃページ数があるのにKindleで99円セールをしていたので、特に何も考えずにワンクリック購入した。ちなみに、ポプテピピックは有名な話をいくつかつまみ食い読みをしたことがあるだけで、通して読んだことはない。ではいくぞ!いざ鎌倉!

スーパーエレガント完全版 / 大川ぶくぶ

何がスーパーエレガントだよ、どうせクソみたいな漫画だろ、100%の偏見でナメてかかって読んだが、本当にその通りだったとは恐れ入る。

エリート女子高に通う主人公とそのクラスメイトたちで構成された(多分ここがスーパーエレガント要素)、脳ミソを1ミリも使わずに流し読むタイプのギャグ漫画(多分ここが大川ぶくぶ要素)。この手のギャグ漫画の内容をまじめに説明するほど虚しい作業はないよおばあちゃんが言っていたので、詳細は省くけれど、とにかく数打てば何かしらは当たったりするだろ形式の攻めのスタイルを感じるのが大変良い。
最初の方は「ちょっと見るのが辛いかもな」みたいな絵が続くが、完全版を謳っているだけあってこの本結構なページ数があるので、徐々に画力がアップしていく成長要素も楽しいし、だんだんネタの方向性が鋭くなってきているのを見ることも楽しい。6割7割超えたあたりから、だんだん見知った絵柄になっていく。ポプテピピックよりキャラクターの個性が生きて殴りかかってきている気がする。あとパロディネタが豊富。急に出てきたブライトが殴りかかるのはズルでは?ガンダムはまあ許されると思うけど、ムーミンとマインクラフトのネタは大丈夫か?登場人物たちの携帯がガラケーだったのに途中からスマホに変わっているな、何年やってんだこれ、とか、ドカンとくるネタはなくとも、細かいワザマエがちょいちょい面白い、暇つぶし向きのギャグ漫画だった。

漫画:スナックバス江 第257夜 / フォビドゥン澁川

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先日500円分のお食事券を貰ってしまい、それじゃあ自炊しにくいものをお店で頼むとするか!チキンカツカレー!!(チキンカツなんて揚げ物は自宅では絶対にしない、カレーは洗い物が大変だから作りたくない、そしてうちには炊飯器も電子レンジもないので白飯はない)ということで、久しぶりの贅沢を堪能した。
このお店のチキンカツカレーが予想していた量の1.5倍で出てきたため、ダイエット中ということもあって、思わずあすけんの女の顔色を伺う羽目になったのだが、まあたまにはいいでしょう!と自分に許可を出す。腹がはち切れるくらいのチキンカツカレー……久しぶりのコメ食……やっぱ白米はサイコーやな!

漫画:スナックバス江 第257夜 / フォビドゥン澁川

と思いつつ、その後ヤングジャンプを読んだんだけど、今週のスナックバス江の森田が「ダイエットして分かったことがあるんだけど、白飯ってうますぎへん?」とタイムリーが話題を出してきたため、朱美ちゃんと一緒に「「わかる」」という心の声が出てしまった。続けて、白飯だけでも美味しいって話もあるけど、その主張はまた違うじゃんとか、白米とおかずと組み合わせることの最強さについて語り始めてめちゃくちゃ同意しながら読んでいたら、中盤からまた森田が「炭水化物を抜いた食事なんてのは、セックスのない愛みたいなもんやね……」と言い始めた。こいつまた……世界の真理を一つ言語化したな……。
愛のないセックスはよく聴くけど、セックスのない愛……!本番のない同人誌をウッカリ買っちゃったみたいな物足りなさってことかみたいなもんか?と反射的に置き換えてしまったが、チキンカツカレーを腹一杯に食った後だから、すぐそのままの意味で理解できてしまう。久しぶりの炭水化物のかたまりと、体に悪そうな揚げ物の掛け算!明らかに高まっているのを感じる血糖値!自然とニッコリ上がる口角!そしてその後、血糖値スパイクで脳貧血めいた脳の寒さを感じてしまった時の恐怖!罪悪!普段の、健康を意識した野菜たっぷりの食事は、それはそれで美味しいけれど、やっぱこう……こういう炭水化物の爆弾からしか取れない心の栄養素というか、快楽的愉悦ってあるじゃん。

やっぱ森田はいいこと言うな!って満足して、その後ジャンケットバンクを読んで雑誌を閉じたんだけど、いや、血糖値スパイクはまずいでしょ(急に冷静さを取り戻した)。脳貧血めいた脳の寒さを感じてしまった時の恐怖!じゃないのよ。自分が、炭水化物の瞬間的な過剰摂取を気合いで乗り越えられる年齢を過ぎてしまったことを忘れてしまっていた。コワ〜、気をつけよう……。森田や朱美ちゃんも、気をつけろよな……!

ウェブ版で11/22まで期間限定無料らしいので貼っておく。

漫画:散歩もの / 久住昌之、谷口ジロー

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Kindleのセールをやっていた時に買ったまま積んでいた漫画。私が散歩をするのが好きなことと、「孤独のグルメ」で有名な久住昌之先生、谷口ジロー先生両名の漫画ということで購入を決めたんだったかな。

散歩もの / 久住昌之、谷口ジロー

主人公は、文具会社に勤めるごく普通の既婚サラリーマン。
この漫画のテーマはタイトル通りに「散歩」と、あと通販生活さんという物を売る雑誌に掲載されていた漫画であるため、「物を買う」シーンがある事、ターゲット層が主婦層なので主人公が妻帯者であること、などのちょっとした縛りを上手く使った、一言でいえば散歩を絡めた日常系の漫画になる。やっぱ玄人の先生だな……と思わされる静かな世界観、そして主人公が歩いている、その背後にある風景の細かい書き込みが大変良い漫画だ。

また、1話完結型の漫画数話が全体の7割、その話についての解説や裏話をしている「あとがきにあえて」という文章が3割という構成で、ページ数から感じた印象よりもずっと読み応えがあった反面、「これは私が若い頃に読んでいたら、つまらん認定したかもしれん」とちょっと考え込んでしまった。
特に事件が起きるわけでもない、意外なオチがあるわけでもない、文具会社に勤めるただの既婚サラリーマンが散歩して、何かを見て何かを思い、ちょっとした物を買う、というそれだけの描写に終始する漫画なので、そのストーリー性や描写の細かさに何かを見出そうとする意識や気持ちの余裕がいるのかもしれないな。
著者たちの代表作である「孤独のグルメ」は食事という目的と快楽に読者は共感することができるが、ただ目的もない散歩に共感する読者はそんなにいるか?と一瞬考え込んでしまったが、よくよく考えればこの漫画の読者層は、漫画を掲載している通販生活という雑誌を楽しみにしている主婦層であるので、晴れた日に外に出ること、ちょっとした物を買うこと、生活圏の変化にふと気づくことに、私が思っている以上に目線を合わせやすいという事なのかも。
久住先生が自分で仰っていた通り、作者お二人が描かれる作品に「奥さん」という属性の登場人物が出てきたことも、新鮮さと、地に足がついた生活感が出ていたと思う。

言語化するのが難しいが、「大人が描いた、大人の漫画を読んだ」という気持ちになれる、いつもと違うタイプの良い漫画だった。

漫画:HUNTER×HUNTER 37巻 / 冨樫義博

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ジャパニーズピーポーの義務として、ここ数年は週刊少年ジャンプの電子版を定期購読しているため、もちろんHUNTER×HUNTERの連載再開を喜ばしく思っているのだが、連載再開前の話をすっかり忘れてしまっているという当たり前体操アクシデントに遭遇した。巷の情報によると、前巻にあたる36巻が出たのは4年前とのことなので無理もないのだが、とりあえず新刊の37巻を見ることに。

そうなんだよなあ〜!最新3話をジャンプで読んで文脈を思い出せなかったような人間が慌てて37巻見たからって、それよりも前の文脈を思い出せるワケもないんだよな。おかげで34巻あたりまで遡って状況を確認することとなった。

なんだか、HUNTER×HUNTERってもう「みんなが面白いっていうエンターテイメント」という概念が出来上がっているので、はいはいハンターハンターくらいの流行に流されている人間のノリをとってしまっていたのだが、いや、当然のようにハチャメチャに面白いんだよな……!話全体の情報量、会話の流れ、指示の狙い、悪手を取らされる各々のキャラクターの持ちうる性格や不安など、その1ページ1ページをめくるための工数がとんでもないことになり、たかが数巻遡って読み返すだけなのに3〜4時間丸かじりになってしまった。読み甲斐が、読み応えがある……!あと、ビスケとウェルゲー、テータちゃんと第四王子の恋物語(?)の行方も気になってたことを思い出したよ(??)

HUNTER×HUNTER 37巻 / 冨樫義博

37巻では、カチョウとフウゲツの片方が死んでしまったり、センリツが生来の人情によってやむを得ない選択をとってしまったり、ハルケンブルグやツェリードニヒの覚醒、複雑怪奇すぎるツェリードニヒの能力解説などなど見どころが多数あり、そんなことがあったなあ〜としみじみ読み返していたのだが、記憶にない話が1つ挟まってて二度見してしまった。カミィの施設兵である呪殺部隊関連の記憶が、まるでない……!!そんな話あったっけ!?!?過去のジャンプで見逃してた!?新刊読んでよかったあ〜!

王位継承戦に入ってから密室空間で数多の人間の思惑が入り乱れ、もうこんな大きな流れを制するのは個人の素質も、組織でもでは無理やろと思わされるのだが、だからこそ、最後に生き残る王子の「時流にうまく乗れた」という運が可視化されるのかな。最近の話では、幻影旅団とヒソカの因縁にまたフォーカスが戻ってきたようだし、やっぱ冨樫先生が執筆されている時代に生きてるってサイコーやな!と思わされる37巻だった。

漫画:マンガ日本の古典(25) 奥の細道 / 矢口高雄

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先日に引き続き、松尾芭蕉の「おくのほそ道」を題材にした学習漫画のシリーズを見て行こうと思う。

▼前回

漫画:松尾芭蕉 (コミック版世界の伝記) / 瑞樹奈穂、伊東洋漫画:松尾芭蕉 (コミック版世界の伝記) / 瑞樹奈穂、伊東洋

著者の矢口高雄先生は『釣りキチ三平』などで知られる有名な漫画家で、恥ずかしながら私はその漫画を読んだことはないものの、自然描写がメチャクチャ上手く描かれる方だというのは知っていた。その先生が自然の中を旅しながら句を創作する芭蕉の伝記を描いていると聞いて、「これは見たいヤツだ……!」と手に取った次第である。

マンガ日本の古典(25) 奥の細道 / 矢口高雄

漫画だからスラスラ読めるよね✌️と舐めたことを思っていたら、一コマ一コマに収められた矢口先生の緻密な風景描写と、執念すら滲み出る時代背景の情報量で、めちゃくちゃ時間がかかってしまった。

まずは初っ端の見開きページ、夕暮れの山里に対する超絶技巧の風景描写の細かさで殴りかかられて、その緻密な筆の運びに「おっと……?これは随分と情報量が多い漫画になりそうだぞ……?」という心構えを一旦させられることとなる。この漫画は週刊連載のスピード感で出されるものだとは思わないけど、松尾芭蕉の生い立ちを1冊の漫画にまとめる構想を練る時間や取材なんかも必要なわけで、その上でこんなにメチャクチャに手間がかかる風景を頻繁に描かれたりなんかしたら、その、工数は大丈夫なんですか?いろんな意味でハラハラさせられてしまった。

元々、矢口先生は中学生の頃に俳句を嗜まれており、奥の細道にゆかりのある秋田県出身ということで、「マンガ日本の古典シリーズ」の企画が持ち込まれ際には一も二もなく「奥の細道」に飛びついたとのこと。松尾芭蕉や奥の細道に関する大量の参考文献を読み漁り、自ら取材も行い、先生曰くたっぷり4ヶ月かけて(矢口プロ総出でも4ヶ月で終わるような作業工数に思えないが?)、この漫画を描かれたそうだ。先生の画力もさることながら、松尾芭蕉への思い入れがびっしりあるんやろなと思わされる註釈のや解釈テキスト、しかし重要なところは、文字ではなく絵をもって松尾芭蕉が見た風景を可能な限り再現しようとする執念、「これは力作……」と思わされる作品でした。

この漫画一冊では尺が足りなかったようで、残念ながら山形の道中で締められているのだが(母の故郷の鶴岡の一歩手前であることが惜しまれる)、私がお気に入りの「五月雨を集めて早し最上川」に関するエピソードや、月山周りの情景も細やかに描かれていて大変満足だった。また、前に見た松尾芭蕉漫画の感想で「閑さや岩にしみ入る蝉の声、のセミの分類について、後世の歌人たちがバトったことがある」という覚え書きをしていたが、この状況の説明が普通に入ってたところも面白かったな。句の推敲についてや、「おくのほそ道」の創作(フィクション)としての面も言及されていて、きちんとした下調べが見えて好感が持てた、よい伝記漫画だったと思う。