何がきっかけで手に取ったか忘れている……!
この本は、良くも悪くも最近の日本の若者は〜みたいな内容の本、と言いたいところだが、著者は大学教員かつモチベーション研究をしている方で、学生との授業・就活でバチバチに若者と関わってきただけあり、説得力があると感じる内容だった。
私は最近の若者(大学生〜新社会人くらいを想定)の実情を全く知らない。「たぶんInstagramやTickTock、Youtubeのインフルエンサーに影響される世代、まじめをちゃんと装える、道徳観はありそう」くらいのイメージしかないのだが、実際どんなふうに世間から思われてるの?と気になりつつ読み終えた。
著者の調査によると、過剰に「いい子」で居ようとしてしまう、いい子症候群が若者にはあるように見えるらしい。精神科医の名越康文先生が言うところの『過剰適応』ってヤツ?
そのほかにも、「企業には疑いを持つ一方で、SNSやインフルエンサーには影響を受ける」「とにかく目立ちたくない(本のタイトル通り、みんなの前では褒められたくない。しかし、後で二人きりのときに褒められるのは嬉しい)」「意識高い系にはなりたくない(ガツガツ積極的になるのは痛いように見える)」「反応が薄い」「みんなの意見に合わせる、倣う」「予防線、自己防衛に長けている」「劣等感があり、自分に自信がない」「個人の努力や実績で配分を決めるより、ただ万人に平等に均等分配することを選択する割合が高い」「社会貢献を行いたい(ただし献血などではなく、仕事という場を整えてもらった上で、直接誰かに感謝されるようなことをやりたい)」「大人の考えをなんとなく見抜き、大人の『若者に教えてやりたい欲求』をうまく使うなど、合わせることができる」などなどが若者の特徴であるらしい。これは著者も言っている通り、特に悪いことではないように思う。
まず、日本の教育方針は常々、運動会でお手手を繋いでみんなでゴールをするみたいな「横並び」と称されることの多い横社会とも言えるが(同世代のコミュニティ)、社会に出てからはバキバキに明確な縦社会に放り込まれる。その擦り合わせを行う最初の場である「就活」で、急に『個性』とやらを発揮させられ、『競争』が起きる状況下で、戸惑うことも多いようだ。それでも、求人企業が「自主性のある若者が欲しい!」みたいなことを建前上言いつつ、でも「素直な若者のエネルギーを安価に使い倒したい」と思っているのは、基本的に若者たちは見透かしていると言って良いそうだ。エライ〜!!
マジで就活って、いきなりライアーゲームさせられるようなもんだからな。嘘も方便、物は言いよう、とはいうけれど、一回やっただけでメチャクチャ「大人」「社会」「自分」すべてに幻滅するからな。麻痺してからが大人の始まりとも言える。あらかじめそれらを想定できるというのは、とてもかしこいことだと思う。
ちょっと意外だったのが、「今の新入社員は飲み会に参加する」らしい。おや?そうなの?早く帰りたいと思っているのでは?と思ったけど、確かにそうか。私の認識がずいぶん古かったな。目立ちたくないいい子が上司の誘いを断ったりしないし、今の飲み会は暗黙の了解で圧をかけながら『若い女はビールを注げ、ラベルは上にしろ、若い男は場を盛り上げるために恥を晒せ』みたいな飲み会じゃないだろうからな。それなりに新人に目一杯気を使う上司もいるだろうし、上司も「断られるかな〜?」と不安に思っている中明るくイエス!と言ってくれたら株も上がるだろうし、そこまで悪い選択ではないのか(コロナ禍という状況は想定の外に置くとして)
あと、日本の悪い癖に影響されてて、基本的に「あきらかに困っている人を見かけても、その人が外のコミュニティの人であるならば、自発的には声をかけない」が「相手から助けてもらえないか?とお願いされたら、喜んで行う」みたいな傾向があるっぽい。これは令和の日本の若者に限らないのでは?昭和の日本の若者だってそうだったような気もする。また、「ずるいやつには自分が損をしても相手の足を引っ張る、同調できない黒い羊を罰する行動を取る」、いわゆるスパイト行動(前の日記でも取り扱ったやつだ!)も取る傾向にあると。これは……日本人全体がそうだからね……若者のせいというよりは、我々先人の悪い影響を見て育った若者たちの方が被害者というか……と思っていたら、やっぱ著者の方も、この辺は「大人が悪い」とバッサリやっているので安心して読むことができた。
現状維持とはゆるやかに朽ちることを指すまとめると、昨今の若者に対するイメージと、やっぱ就活はクソだな!という認識がなんとなくアップデートされた本だった。リアルでは一言たりとも口に出したくない「最近の若者は○○」だが、この著書の本を読んでいると、「こんな世の中で一生懸命生きてて、昭和でも平成でも令和でも、若者は等しくえらい…!全員伸び代がある!」と励ましてやりたくなる。老婆心ながらに人生の攻略本を授けたい大人の気持ちもわかるが、人生経験を散々積んでるはずの大人が、これから縦社会の経験を積む若者のスタートにケチつけてもしょうがないんだよな。他人事のように言っているが、マジで自分のことだからな、自戒しろよ私……!!