表紙を見た時に、「ちくまQブックスっぽいデザインだな〜?」と思って手に取ったら、意外とずっしり重くて「ちくまQブックスじゃない……!」と騙された感を覚えた。誰も騙してないし、この後ちくまQブックスを見たら全然似ていなかったので、ボケが始まったのかもしれない。とてもかなしい。
ということで、早速読んでみた。脳と心の関係について面白い雑学ブックスだと思っていたら、脳の断面図とか脳の部位の解説とか、めちゃくちゃ人体の画像が出てくるので二重にビックリしてしまった。
この本の章立てと大まかな内容は以下の通り。
はじめに
一番示唆に富んだページ。脳が働く上で最も重要なことは省エネ、従って脳はなるべく物事をパターン化・カテゴリー化して処理を早めようとする。狩りをするときに重要なのは、勝率の高そうなことを反射的に出すことであって、腹を空かせたライオンの前で深い思考をしていては生存率が下がる。ただ、省エネにこだわるが故に、常識や先入観、偏見といった思い込みが助長されて、柔軟さを失うことになる(意訳)というくだりには、そうだよなあ……と思わされた。
(1)脳の構造
・基本的な脳構造の知識。脳の外観や、右脳や左脳、ニューロンやシナプス、領域の役割などについて
この章だけ、ほぼすっ飛ばしてしまった。既存の知識だから飛ばしたとかではなくて、具体的な構造については、素直に興味がない……!まだ1章目なのに大丈夫か?と自分を心配してしまったが、結論から言えば、これ以降の章は大丈夫だった(面白い)。
(2)脳と体
・五感や脊髄反射、満腹中枢や平衡感覚といった身体に影響するメカニズム
舌の味蕾で感じた情報は脳で処理されて感じる(舌の部位の解説イラストあり)、という、いかにもつまらなさそうな解説ページが、私にはとても面白かったのが驚きだった。喉の奥側の舌には、確かにイボイボある!そして舌先の方は味蕾の数が少なくて、喉に近い方の味蕾は数が多いのかー。そうすると、美味しいものを咀嚼していても、「美味しい!」と感じている状態をすぐに破棄する(口にものが無くなれば快楽は感じなくなるのに、なぜ人はこんなにも簡単に飲み込み、また次へ次へと食べようとするのか?という理屈がいまいちわかってなかった)のは、もっと美味しく感じる部位が、飲み込もうとしないと届かない位置にあるからなのかな?そして、咀嚼すればするほど噛みごたえなどの感覚の鮮度が失われていくからという事情もある?と自分なりの仮説を立てられたりして、一人はしゃいでしまった。
(3)脳と言語・記憶
・言語の獲得と発達について、記憶の残り方、記憶力の容量と減退する仕組みについて
長期記憶・短期記憶、ワーキングメモリなどは1000万回くらい本で見たことがある知識なのだが、この辺りについての話は不思議と飽きない。多分、日課の漢字の書き取りなどで自問自答することがあるから、より強く興味を感じているのかも。どうやればこの記憶に深く刻むことができるのかについて、「言語化せずとも体で覚える『手続き記憶』が、他のものと比べて比較的長期に渡って記憶に残ることを考えれば、やっぱ学習する際にはアウトプット戦略を取るしかないか、でも面倒だなあ〜!」など、歯噛みしながら面白く読んだ。
(4)脳と生命機能調整
・ストレスが脳へ与えるダメージやその影響について、交感神経・副交感神経、活動に関するパターンについて
全体的にうっすらした知識があり、そこまで興味が湧かないため、読みよばしをしてしまった章。
(5)脳と情動
・感情やドーパミン、性欲や報酬系など、情動を司どる機能についての話
読みよばしをしてしまった章その2。これも多分、既存の知識ではドーパミンが放出されないとかそういう話なんだろうな。
(6)脳の一生
・脳の育ち方・スキルの習得の仕方から、それぞれの脳機能のピーク、そして衰えることで何ができなくなるかなど
右脳左脳や男脳女脳って、小さい頃は、なんでか信じられなかったなあ。多分、娯楽本を見て覚えて、しかし出典が出典だから「本当にそんなに性能に差なんてあるのか〜?」と疑っている状態のまま、正しい知識を見たことがなったからだと思う、と考えながら読んだら、「右脳左脳は、確かに各々の役割がある(これは知っていた)」「男脳・女脳という明確な区分はない。最初は誰しも女脳が作られ、その後男性ホルモンの濃度によって、グラデーションの濃淡ができる」らしい。母体にストレスがかかると、この男性ホルモンの分泌が悪くなって、胎児の男性化に支障をきたす可能性があるとのこと。へえ〜。一夫多妻制の第二夫人以降は女児を産む傾向があるって、こういうのが関係するのかも。(ノー根拠)
(7)脳と心の病
・アルツハイマー、脳卒中、AHDH、薬物依存その他諸々の、脳と心が関わる病について
現在時点では、特に該当する病にかかっている自覚がないので、流し読みした。でも、何かしらの快楽を与える物質や現象に人間が依存してしまう傾向は、美味しい食事やガチャでなんとなく自分自身も身に覚えがあるので、セーブかけなきゃな……と感じた。
(8)脳研究の歴史と未来
・脳研究の始まり、AIへの応用、人工脳の誕生、冬眠技術など
SF小説でよく見るやつだな〜と思いながら見ていたら、人工脳の誕生!?SFならともかく、現実社会では初めて聞いたが!?倫理的な承認の得ている分野だっけ?と今日イチ困惑しながら読んでいたら、「人工脳が次々と誕生!」みたいな言葉が出てくるので二度見した。倫理観とのバランスは図らなくてはならないけれど、一応、その研究の重要さで進んではいる分野なのね。
以上。読み応えのあるビジュアル図鑑でした。