桜の樹の下には死体が埋まってることで有名な小説、青空文庫で探してみたら、文庫5P分(2000文字以下)で終わることに気づいた。あまりにコスパ良すぎるな……!(実際読んだことあるよマウントを取るために必要な労力に対しての費用対効果)
前々から気になっていた例の絵本をようやく読んだ。
ヘンゼルとグレーテル、こんがりパイの魔女風味とか出てきたらどうしようかと思った 遠くにあればより美しく、近くにあればより醜く見えるもの一回絶版になったと聞いたので、今更手に入るのか…!?と心配したが、普通に復刊してました。簡単に手に入ってよかったよかった。
内容は、主人公の黒い肌の少年・ちびくろさんぼが、自分を食べようとする複数の虎に対して機転と勇気で乗り切る話。
父と母に素敵な衣服(赤い上着、あおいズボン、緑の傘、紫の靴)を買ってもらったちびくろさんぼは、ご機嫌でジャングルへ散歩に行った最中、次々に人喰い虎と出会う。自分を食べようとする虎に、ちびくろサンボは自分が着ていたアイテムを一つ渡すことでその場を凌ぐ。次に、また別の虎と出会う。食われそうになる。アイテムを渡す。これを、衣服がなくなるまで繰り返した。どの虎も、命と物の交換で手に入れたそのアイテムを気に入ったようで、「俺がジャングルで一番だ!」と機嫌よく去っていったが、四つのアイテムを手に入れた四匹の虎たちは、やがて誰が本当に一番なのかを争うようになった。ちびくろさんぼは、言い争いの横で投げ捨てられているようにも見えるアイテムを見つけ、いらないのなら貰う、と言って回収。虎達は、興奮ししながら木の周りをぐるぐると回る。その余の速さに、ぐるぐると回り続けた虎達は溶けたバターとなってしまった。その後、通りかかったちびくろさんぼの父は、手持ちの壺に溶けたバターを回収。家で待っていた母がバターを使ったパンケーキをたくさん焼き、そのパンケーキはとらの模様のように茶色と黄色で出来ていたのでした。めでたしめでた、
だ、ダンガンロンパで見た大和田バターの出典ここだァー!!!!!!!!!!!!!!!
思いもよらないところで、思いもよらない作品の元ネタに気づいてしまい、めちゃくちゃエキサイトしてしまった。お、お前〜〜〜〜そう言うことかァ〜〜〜〜!!!!!!!!!!
落ち着いたところで、改めてWikipediaを見てみた。
ふむふむ。
インドに滞在していた著者が手作りで絵本を作ったと。それを友人がイギリスの出版社に持ち込み、1899年に出版したが、なんか著作権周りに大分闇を感じる事情があったと。(友人は持ち込んだまま著作権登録をしなかった、だから海賊版が出回った等)
それに加えて、(おそらく海賊版で作られた絵本を見て)、原色の派手派手しいファッションセンスや、パンケーキの大食い描写から『偏見による黒人蔑視ではないか?』との声がアメリカで上がってしまい、それを見た日本も一度自主的な絶版を決断する。ただ、黒い肌のちびくろさんぼ家族は、植民または奴隷にしているアフリカ人ではなく、著者はインドに住んでいた時に絵本を作って、インド人の少年をモチーフにしていた。インドに虎が出てくるイメージは多々あるが、アフリカには虎は生息していない。当時アメリカ国内で発生していた黒人差別に対する運動には、無理やり絡められてしまったような状態だった…のかな?著作権問題、誤認された描写、過敏になっている差別表現への対応諸々で一旦絶版になったが、諸々の状況を鑑みて、日本では復刊することになった、みたいな話らしい。
確かにワクワクする絵本だしなあ、世界的にもかなり売れていた本だったようだし、今になってはそれでよかったと思う。
著作権切れのため、絵本の内容を公開しているサイトもちょこちょこ見つけた。
参考までに見た動画メモ。
この一連の騒動についての本もいくつか出ているようなので、また機会があれば手に取ってみたい。
と言うことを踏まえて、1998年復刻、インド人版の『ちびくろ・さんぼ』こと『トラのバターのパンケーキ』の方も読んでみた。アジア系インド人っぽい登場人物のイラストに変更され、前書きにも「30年インドで暮らし、ふたりのむすめのためにインドを舞台にした物語を書きました。お話の主人公には伝統的なインドの名前をつけ〜」との記述が。へー配慮するじゃん、と思いながら本文を読み始めたところ、さ、サンボが!?ババジに名前を変えられとるが!?あまりに配慮しすぎたのでは!?!?
これも50年だってから復刻したバージョンの『ちびくろ・さんぼ』の一種、と言いたいところだが、だ……大丈夫か?表紙が既にかなりアフリカ系アメリカ人だが?原典に近づけようと頑張ってインドに寄せた『トラのバターのパンケーキ』をみた後だから、逆にこの『おしゃれなサムとバターになったトラ』、帯に説明のある「〜さまざまに不難を受けてきた物語を再構成し(中略)主人公サムに、生命と命を吹き込むために南部の黒人独特のストーリーテリングを使っています」が私を不安にさせてくる。そっちに寄せたんだ!?原点の著作権が切れたから、そのまま改変して非難を考慮したものに作り直したと。まあ元々、海賊版が出回ってた当初は50種も出てたっぽいこと書いてあるので、これも忠実な流れか……と思ったら、著者とイラストの2人はアフリカ系アメリカ人(岩波文庫から『奴隷とは』という本も出している方)だそうで、うーん情報量が多くて頭がこんがらがる。
絵本のストーリーはちょこちょこと改変されており、動物と共に暮らす架空の国に住まう「サム」が(中略)トラのバターでパンケーキを作ってエンド、みたいな感じ。イラストに力を入れており、迫力のある動物(特にトラ)が見応えがある。文章で読み応えがあったのは、後書きかなあ。「原作の主人公は、黒人であってもアフリカ人ではない。トラがいても、インドではない。架空のどこかなのでした」お、おう。また情報がブレとる。「最も普及した岩波版の絵本は、黒人のステレオタイプを描いたとされる非難は交わしようもないほど、醜悪であった」「その代わりこの絵本の会社は、米黒人と仕事をする機会が非常に多いから、サンボ問題の適切な解決の一端を担えると思うよ!(意訳)」「原作者の意図とは違うイメージが長らく一人歩きしていたけど、これでようやく親子で楽しめる古典が息を吹き返したよ!(意訳)」みたいなテキストが並べられ、お、おう……。俺は何をみている?絵本なのに、いろいろな問題が透けて見えとんのよ。人種差別問題はデリケートな話になるのでさておくが、出版業界同士で揉めあってる様がバチバチに見えて、おもしろ〜(本音)
ここまで来たら、全部読みますかあ!
ちびくろさんぼには、双子の弟ができた。ウーフとムーフと名付ける。日に日にかわいさを増していく弟たちをみていたジャングルのさるたちは、自分の子供にしたいと誘拐を実行(!?)。高いヤシの木の上に置かれた双子をどのように助けようか……と言うような感じ。安定のパンケーキエンド。
おばあさんを助けたお礼にコインを1枚もらったちびくろさんぼが、「もうじゅうのねむらせかた」という本を買った。ハチミツを取りに行った先のジャングルの中で、夢中になって本を読み耽っていると、人喰いトラがまた一匹一匹と近寄ってきて……という、トラ・リターンズに胸が熱くなるなどした。前はバターになった彼らだが、今度はどうなるのか?最後までワクワクしながら読める、いいシリーズだった。完。