私は独り身で在宅仕事をしており、発声の機会があまりなくて、たまに発声練習(「あおいうえおあお」みたいなやつ)をすることで「声が出せなくなるかも」という不安から逃げているのだが、この発声練習の際に「さ行」の空気が抜ける感じ、「は行」のなんか特別酸素消費が激しい感じ、「やよいゆえよやよ」のえの言いにくさ等、これは一体どういうことなんだろうと音声学にフンワリ興味を持っていたので、タイトルに惹かれて手に取った。
この本は、言語学者のご夫婦が、二人の子供を育てる上で体験した娘さんたちの言語習得(言語発達?)に置ける面白い気づきと考察についての本。軽い気持ちで読み進めて、途中「ヤバい、なんか理解できなくなってきた(無声歯茎硬口蓋摩擦音という漢字を本能的に拒否する脳)」という気にはなったものの、本のサブタイトルにある「プリチュワからピカチュウ、おっけーぐるぐるまで」の通り、お子さんの成長と興味関心から気づきが生じるところは理解が可能なので、とっつきやすい雰囲気と面白さで楽しく読み終えることができた。
子供が言葉を覚え始めるとき一般化で言葉を解釈する、という我が子の天才ぶりを発揮することに気付ける子育て周りの体験もさることながら(言われてみれば確かに〜!と共感できる)、音声学ってなんの学問なのかイマイチはっきりと分かっていなかったのだが、「ポケモンの進化における命名規則」「メイド喫茶のキャラ別による名付けの傾向(魅力度との相関)」「声優さんやラッパーさんの仕事に活かせる」「ちはやふるを面白く読める(競技かるたで読み上げる百人一首で「し」始まりの札は2枚あるのだが、最初の「し」の発声の聞き取りようでどちらであるかを予測して早く取れるのでは?みたいな仮説)」などなど面白い応用が効く世界なんだなあと感じた。