「2022年」の記事一覧

漫画:スーパーエレガント完全版 / 大川ぶくぶ

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ポプテピピックでブレイクした、大川ぶくぶ先生の初期のギャグ漫画「スーパーエレガント」一式セット!みたいなヤツらしい。めちゃくちゃページ数があるのにKindleで99円セールをしていたので、特に何も考えずにワンクリック購入した。ちなみに、ポプテピピックは有名な話をいくつかつまみ食い読みをしたことがあるだけで、通して読んだことはない。ではいくぞ!いざ鎌倉!

スーパーエレガント完全版 / 大川ぶくぶ

何がスーパーエレガントだよ、どうせクソみたいな漫画だろ、100%の偏見でナメてかかって読んだが、本当にその通りだったとは恐れ入る。

エリート女子高に通う主人公とそのクラスメイトたちで構成された(多分ここがスーパーエレガント要素)、脳ミソを1ミリも使わずに流し読むタイプのギャグ漫画(多分ここが大川ぶくぶ要素)。この手のギャグ漫画の内容をまじめに説明するほど虚しい作業はないよおばあちゃんが言っていたので、詳細は省くけれど、とにかく数打てば何かしらは当たったりするだろ形式の攻めのスタイルを感じるのが大変良い。
最初の方は「ちょっと見るのが辛いかもな」みたいな絵が続くが、完全版を謳っているだけあってこの本結構なページ数があるので、徐々に画力がアップしていく成長要素も楽しいし、だんだんネタの方向性が鋭くなってきているのを見ることも楽しい。6割7割超えたあたりから、だんだん見知った絵柄になっていく。ポプテピピックよりキャラクターの個性が生きて殴りかかってきている気がする。あとパロディネタが豊富。急に出てきたブライトが殴りかかるのはズルでは?ガンダムはまあ許されると思うけど、ムーミンとマインクラフトのネタは大丈夫か?登場人物たちの携帯がガラケーだったのに途中からスマホに変わっているな、何年やってんだこれ、とか、ドカンとくるネタはなくとも、細かいワザマエがちょいちょい面白い、暇つぶし向きのギャグ漫画だった。

読書:砂糖の日本史 / 江後迪子

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日本の都道府県の位置を当てる地理クイズで、九州の各県の配置を「長崎→佐賀→福岡でシュガーロード」という覚え方をしたことと、ポルトガル史をちまちま追いかけている最中だったため、視界に入った本。本の内容は概ねタイトル通りなのだが、本の説明書きがあったものをそのまま引用すると『歴史研究者が、料理に関わる史料を丹念にたどり、日本人と砂糖の出合いから、さまざまな料理に砂糖が利用され、受容されてゆくさまを描き出す。』となる。

全然関係ないんだけど、史学をやっている人は「受容史」という考え方があると古代ギリシャ研究家の藤村シシン先生の動画で聞いた覚えがあるので、この言葉が視界に入った瞬間テンションが上がってしまった。受容というのは、それがどのようにして、その国の人々の文化として受け入れられたか?みたいな歴史だったような気がする(とても浅い知識)

本を読む前に、癖で「なんとなくこんな感じの内容かなあ」と、いつもうっすら想像しているのだが、今回は次の通りの予想しかできなかった。

・南蛮貿易で大量に入ってきたはず(シュガーロード)、そのあたりから庶民に流通したと思う
・とはいえ砂糖の糖は中国の唐に当たるので、それより前に中国から仕入れていたことはあったはず、おそらく当初は薬として用いられた。
・沖縄でサトウキビをめちゃくちゃ作ってる印象がある。琉球国からも入ってきた?

では読むか!いざ鎌倉!

砂糖の日本史 / 江後迪子

初っ端から「鑑真が砂糖を聖武天皇に献上し、それが正倉院文書に記載されているのはよく知られた史実である」とあるが、知らないが?そしてまた出てきたよ鑑真!砂糖の糖は、唐の字があるから中国由来ではあるんだろうなと思ったけれど、またここで出で来たか鑑真!私が読む本の中で、柳田國男先生の次くらいにエンカウント率が高いのよ。

日本における砂糖の歴史は、ざっくりと次のとおり。

▼日本の砂糖

・砂糖は中国から伝播したと思われる。鑑真や遣唐使の経由。正倉院の献納リストに砂糖(蔗糖)の記録が残っている。この時代の砂糖の価値は、めちゃくちゃ高い。(西暦825年くらい?)
・勘合貿易で継続して中国から輸入。
・江戸時代に入ると南蛮貿易が始まり、大量に輸入が可能になる。南蛮菓子の普及。
・砂糖の生産については、外国からの輸入に依存するのではなく、国内生産に切り替えようとしていたのだが、日本の気候や土壌はサトウキビなどの砂糖の原料となる植物の育成に向いてないっぽく、何度も育成試しては頓挫している(砂糖の原産地は、インドまたは南太平洋諸島といわれているようなので、さもありなん)。国産の砂糖が作られたのは1620年、直川智という人が中国に渡って製糖技術を学び、ショ糖の苗を持ち帰り、黒糖を作ったとのこと(ただ国産とはいうが、この時代、沖縄は日本ではない。あとやっぱ砂糖の原料は暑いところじゃないと育たないのかなという印象)

▼砂糖周りのメモ

・砂糖以前に普及していた甘味は、冬のツタの樹液を煮詰めた、非常に手間のかかる「甘葛煎(あまづらせん)」というものだった。『枕草子』に「けずり氷にあまづら入れて」という記述がある。(枕草子は西暦1000年くらい)
・ミツバチから作る蜂蜜という甘味の存在は知られていたが、外国から仕入れたミツバチは日本で繁殖しなかった(じゃあニホンミツバチって一体なんなんだよ!?!?)
・最初の頃、砂糖は苦い薬を飲む時に合わせて使われ、そのうち砂糖餅などの甘味に、茶席に、そして懐石料理に、庶民の菓子に、南蛮菓子に、との広まりを見せた……ということでいいのだろうか?
・豆知識として、卵を食べる文化は、基本的には南蛮菓子の普及に伴ってのことらしい。ふわふわ甘いお菓子にはどうしても卵がいるからね……。それ以前は、『日本霊異記』という書物に「今身に鶏の子を焼き煮るものは、死して灰川地獄に墜つ」とメチャクチャストレートに卵を食うなと書かれていたそうなので、普及していなかったそう。
・徳川幕府が後水尾天皇に「玉子ふわふわ」なる料理でもてなした話が面白かった。玉子ふわふわ!
・南蛮貿易では、ポルトガルなどの宣教師やってきては、甘い菓子で入信を誘ったという。巧妙すぎる……。ギブミーチョコレートの根性がこの時代から植え付けられてる。やっぱ甘いもんには屈するしかないんだなあ。
・全然関係ないんだけど、正倉院の献納リストに「はじかみ」ってあったのだが、はじかみってなんだろう。『ういろう売り』でも「はじかみ」って出てきたよな。と思ってググってみたら、はじかみ=生姜の類だった。甘味に関係がなかった。
・土用の日に食すものといえば、今は鰻が一般的だが、昔は砂糖(氷砂糖)だったらしい。へえ~

以上。途中から、史料で確認できた目録や献立、その解説が大量に出てくるので、ちょっと……割と……けっこう読み飛ばしてしまった。厳密な資料とかには、興味を持って読めるだけの力量が、今の私には無くてだな……。でも基本的に、面白いところだけ読んだから、とても面白かった。楽な方へ逃げるな。

雑談:今日は特に何もない

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今日は、「砂糖の日本史」と言う、これまたダイエット中の身には向かない本を読んではいたのだが、今日中に読み終わって感想まで書くのは無理だな……と言う諦めがついたので、おとなしく「何もない」と言うことを書くことにした。今日は特に何もないです!

▼それはそれとして電気代の話
今月の電気代の請求書を見ていて、世知辛い現実を直視してしまった。
先月と比べて、電気使用量は下がっているのにも関わらず、電気料金は上がっとるやないか!コワ〜!やっぱり昨今の情勢から、電気代上がっているんだなあ、と無理矢理ワカらせられるなどした。まだ日本はマシな方だとはいえ、冬季はこれからだってのに、全くおそろしいな。

▼あすけんの女という名のスタンドの力
ダイエット3ヶ月目、58.5→54.4kg。騙し騙しやってきて、なんとか折り返し地点まで来たぞ…!
週一で生協から野菜類の宅配を頼むなど、スーパーに、特にタイムセールの時間帯に寄らないようにする工夫が一番効果あったように思う。半額シールの貼られた寿司と唐揚げに手が伸びん奴なんておるか?おらんやろ(反語)

漫画:スナックバス江 第257夜 / フォビドゥン澁川

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先日500円分のお食事券を貰ってしまい、それじゃあ自炊しにくいものをお店で頼むとするか!チキンカツカレー!!(チキンカツなんて揚げ物は自宅では絶対にしない、カレーは洗い物が大変だから作りたくない、そしてうちには炊飯器も電子レンジもないので白飯はない)ということで、久しぶりの贅沢を堪能した。
このお店のチキンカツカレーが予想していた量の1.5倍で出てきたため、ダイエット中ということもあって、思わずあすけんの女の顔色を伺う羽目になったのだが、まあたまにはいいでしょう!と自分に許可を出す。腹がはち切れるくらいのチキンカツカレー……久しぶりのコメ食……やっぱ白米はサイコーやな!

漫画:スナックバス江 第257夜 / フォビドゥン澁川

と思いつつ、その後ヤングジャンプを読んだんだけど、今週のスナックバス江の森田が「ダイエットして分かったことがあるんだけど、白飯ってうますぎへん?」とタイムリーが話題を出してきたため、朱美ちゃんと一緒に「「わかる」」という心の声が出てしまった。続けて、白飯だけでも美味しいって話もあるけど、その主張はまた違うじゃんとか、白米とおかずと組み合わせることの最強さについて語り始めてめちゃくちゃ同意しながら読んでいたら、中盤からまた森田が「炭水化物を抜いた食事なんてのは、セックスのない愛みたいなもんやね……」と言い始めた。こいつまた……世界の真理を一つ言語化したな……。
愛のないセックスはよく聴くけど、セックスのない愛……!本番のない同人誌をウッカリ買っちゃったみたいな物足りなさってことかみたいなもんか?と反射的に置き換えてしまったが、チキンカツカレーを腹一杯に食った後だから、すぐそのままの意味で理解できてしまう。久しぶりの炭水化物のかたまりと、体に悪そうな揚げ物の掛け算!明らかに高まっているのを感じる血糖値!自然とニッコリ上がる口角!そしてその後、血糖値スパイクで脳貧血めいた脳の寒さを感じてしまった時の恐怖!罪悪!普段の、健康を意識した野菜たっぷりの食事は、それはそれで美味しいけれど、やっぱこう……こういう炭水化物の爆弾からしか取れない心の栄養素というか、快楽的愉悦ってあるじゃん。

やっぱ森田はいいこと言うな!って満足して、その後ジャンケットバンクを読んで雑誌を閉じたんだけど、いや、血糖値スパイクはまずいでしょ(急に冷静さを取り戻した)。脳貧血めいた脳の寒さを感じてしまった時の恐怖!じゃないのよ。自分が、炭水化物の瞬間的な過剰摂取を気合いで乗り越えられる年齢を過ぎてしまったことを忘れてしまっていた。コワ〜、気をつけよう……。森田や朱美ちゃんも、気をつけろよな……!

ウェブ版で11/22まで期間限定無料らしいので貼っておく。

漫画:散歩もの / 久住昌之、谷口ジロー

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Kindleのセールをやっていた時に買ったまま積んでいた漫画。私が散歩をするのが好きなことと、「孤独のグルメ」で有名な久住昌之先生、谷口ジロー先生両名の漫画ということで購入を決めたんだったかな。

散歩もの / 久住昌之、谷口ジロー

主人公は、文具会社に勤めるごく普通の既婚サラリーマン。
この漫画のテーマはタイトル通りに「散歩」と、あと通販生活さんという物を売る雑誌に掲載されていた漫画であるため、「物を買う」シーンがある事、ターゲット層が主婦層なので主人公が妻帯者であること、などのちょっとした縛りを上手く使った、一言でいえば散歩を絡めた日常系の漫画になる。やっぱ玄人の先生だな……と思わされる静かな世界観、そして主人公が歩いている、その背後にある風景の細かい書き込みが大変良い漫画だ。

また、1話完結型の漫画数話が全体の7割、その話についての解説や裏話をしている「あとがきにあえて」という文章が3割という構成で、ページ数から感じた印象よりもずっと読み応えがあった反面、「これは私が若い頃に読んでいたら、つまらん認定したかもしれん」とちょっと考え込んでしまった。
特に事件が起きるわけでもない、意外なオチがあるわけでもない、文具会社に勤めるただの既婚サラリーマンが散歩して、何かを見て何かを思い、ちょっとした物を買う、というそれだけの描写に終始する漫画なので、そのストーリー性や描写の細かさに何かを見出そうとする意識や気持ちの余裕がいるのかもしれないな。
著者たちの代表作である「孤独のグルメ」は食事という目的と快楽に読者は共感することができるが、ただ目的もない散歩に共感する読者はそんなにいるか?と一瞬考え込んでしまったが、よくよく考えればこの漫画の読者層は、漫画を掲載している通販生活という雑誌を楽しみにしている主婦層であるので、晴れた日に外に出ること、ちょっとした物を買うこと、生活圏の変化にふと気づくことに、私が思っている以上に目線を合わせやすいという事なのかも。
久住先生が自分で仰っていた通り、作者お二人が描かれる作品に「奥さん」という属性の登場人物が出てきたことも、新鮮さと、地に足がついた生活感が出ていたと思う。

言語化するのが難しいが、「大人が描いた、大人の漫画を読んだ」という気持ちになれる、いつもと違うタイプの良い漫画だった。