「2022年」の記事一覧

読書:虎よ、虎よ! / アルフレッド・ベスター

水色チェックマークのあるタイトル作品のネタバレを含みます

急に「野口!」とヨーガは笑うのよ

虎よ、虎よ! / アルフレッド・ベスター

一昨日の続きから読了。
捕らえられた主人公が治療棟にぶちこまれて、自称老婆と脱出して、顔に彫られた刺青を消すために整形して、なんやかんやあって成金になって、またかつての女たちと出会い、黒幕と出会い、怒りを抑え、やがていつの間にか考える動物になっていた主人公は……みたいな感じだったかな。途中までだいぶ頭の中で整理しにくいし、登場人物はみんな頭バーサーカーの上、主人公はレッガー◎・アヴェンジャー●・バーサーカでポリコレに引っかかることしないが大丈夫か?と首を傾げていたのだが、急に『奥歯のスイッチで起動する加速装置』が出てきてテンション上がってしまい、そこからの加速的な展開も含めて一気に読んでしまった。奥歯スイッチの加速装置、本家ここかあ!(1956年出版だからおそらくそう)終盤の展開も凄まじかったし、紙面上での工夫も凄かったし、これはすごい名作なのでは?

スタートは粗暴で粗野な主人公だったが、復讐のために知識を学び、教養を身につける。途中整形で顔に彫られた刺青はなんとかしたのだが、怒りという感情で血管の通りが良くなると、その刺青が虎のように浮かび上がるようになってしまい、感情をコントロールする術を得ることを強要される。後半になってくると「ガリレオ」と揶揄されるようになるまでに成長し、終盤になると誰よりも考える動物になっていた。

ふと出る描写が抜群にいい。「ゆたかで空虚」「花開く怪物」「こよなく美しい屍衣」「焦ってはいけないのよ、あなた」「あの白い死骸に恋をするだなんて!」。

主人公を見捨てた黒幕にはびっくりしちゃったな。常に炎に包まれた人も出てきて、これファイアパンチの元ネタの元ネタなのでは?となるところもあったし、サトラレの人間が活躍するし、もう6作くらいの小説の設定をぶちこんでるのよ。途中まで読むのに随分苦労したが、それでも「よくわからんかったところ確かめたい、また最初から読んでみたい」となる、確かに不朽の名作と呼ばれるSF小説だった。

「どうしてもやるのか?」「今更命乞いか」

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邦画プレゼン女子高生 邦キチ! 映子さん / 服部昇大

邦キチ無料公開期間に入ったので見てみたら、急にKOF実写版の話をし始めて笑ってしまった。あったな!私も昔見みたよ、京がバイク屋のせがれのやつ!「俺は草薙の拳なんかじゃない、バイクの修理屋だ」みたいなキレ方してた京にメチャメチャ腹筋殺された思い出があるな。部長はSNK派とのことでますます好感度が上がりました。

公式が埋め込みHTML提供してくれるので、埋め込んでみよう。

週刊少年ジャンプ 2022年25号

今週のSAKAMOTO DAYSの表紙、色使いメチャメチャオシャレでBLEACHみたいなセンス感じちゃった。ストーリーも熱い。

呪術廻戦185話。おいおいおいおいおい…おいおいおい。邦キチの直後にコレだよ。パンダのお兄ちゃん、「ボディがガラ空きだぜ!」じゃないのよ。KOFご存じだったんですか!?もっと早く言ってよ先生!先生に対する好感度がますます上がりました。そしてパンダ、パン、ぱん、パンパパン……。秤先輩、ちゃんと「早くきてくれー!」ってタイミングに来てくれて、胸が熱くなった。頼れる先輩じゃん。パチンカスなんて言ってごめんな。でもCR純愛私鉄列車はパチンカスの所業だと思っとる。鹿紫雲くんもバクラみたいなキャラクターで好きですね。

高校生家族86話。人妻女子高生(43歳)のマネージャーでもこんなに見事な青春できるんだな〜!毎回気軽に読めて、フフッて笑えるところ好き。

わが赴くは星の群

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紫色のクオリア / うえお 久光

電撃文庫!?電撃文庫を読んだの10年ぶりくらいじゃないか!?
先日の本でクオリア云々の話題が出てきて、それをうっすら覚えている状態でYoutube巡りをしていたところ、急に「紫色のクオリア」という小説をおすすめされたため、興味を持ってKindle本を購入しました。事前情報によると、哲学的なループものという設定とのこと。結論から言うと、メチャクチャおもろい小説でした。一気に読んでしまった。

主人公の女の子には友達がいて、それが紫色の瞳を持つ「ゆかり」という名の少女だった。彼女の目には人はこのように見える。すなわち、ロボットだと。彼女には世界の人間がロボットに見え、どのような性能を持っているかがわかる。あの人はセンサーが優れているから天気予報に優れる、この殺人事件はあの人にしか出来ないやり方だ等。それのみならず、彼女は壊れたプラモデルを直すように、人間を直すことができた。彼女の紫色の瞳にはこう見える。そう見え、そう感じる。シュレディンガーの猫のように、不確定な全てを、彼女はその瞳の目で見て感じたクオリアで確定する。そんな彼女の目には、主人公は「汎用性に優れた適応能力のあるロボット」に見えた。
しかし、彼女・ゆかりは「ジョウント」と言う組織に請われて外国に飛んだ半年後、死亡した。憤った主人公は、亡くなった彼女にかつて見出され、与えられた特性と共に追いかけるようになりーーー。みたいな感じ。
哲学的要素もあり、量子力学あり、SF要素あり、だんだん主人公のスケールが宇宙規模になってきたりして、終始目が離せなかった。

知りたかったクオリアの話が根底にあるし、ロボットと人間は何が違うのか?は「われはロボット」で学んだし、ゆかりをスカウトしにきた組織の「ジョウント」は、かの有名なSF小説「虎よ、虎よ!」のジョウント効果からだろうし、今読むからこそめちゃめちゃ面白いのかもしれない。ただ、キャラクターの口調や性格には好き嫌いが分かれるかもしれないな。

虎よ、虎よ! / アルフレッド・ベスター

こんな時のために積んでてよかった。いやー、もう今読むしかない。

25世紀。精神の働きかけだけで空を移動する『ジョウント効果』と呼ばれる精神感応移動(テレポーテーション)の発明によって、人類は黄金期を迎えていた。しかしそれは、富と窃盗、略奪、そして惑星間戦争のきっかけとなる。

ん?と思ったのは『ジョウント効果』、これ科学の発明じゃなくて、一個人による超能力を開花させることだな?てっきり科学的な技術として成立したテレポーテーションだと考えていたから、意外だった。視覚で捉える。精神を統一する。この二つの能力を発展させたものは、誰でもジョウント(テレポーテーションの新語)できるようになるらしい。そして、その体系が確立されてくると、今度はジョウントした連中による窃盗、犯罪、病原菌のばら撒き(銃・病原菌・鉄でありそうなやつ)、輸送の崩壊などなどであらゆる市場と倫理が崩壊の兆しを見せ始め、やがて戦争が勃発した……というところまでがプロローグ。
次の章で主人公の紹介がされるわけだけど、普通に「人間失格の状態」って評価されてて笑っちゃったな。主人公は乗っていた宇宙船・ノーマッドが爆破したため、宇宙空間に放り出されて漂っていて、たまたまやってきたヴォーガ号という宇宙船に助けを求めても無視され、怒りと共に復讐を誓う、と。最近見なかったアヴェンジャータイプの主人公だな。章の始まりで、学もスキルもないみたいなボロクソな評価をされていたが、生き延びて復習したい一心で学習し、試し、前に進んだその男は、やがてとある星の住人に助け出されーーー。みたいなところかな。今日はここまで……と思ったが、助けた連中は主人公・ガリヴァーの顔にとんでもない刺青を施す、ガリヴァーを可哀想に思った瞬間ガリヴァーが女を脅迫した上に手籠にする、ガリヴァーが造船所の宇宙船に爆弾を投げつける、ガリヴァーを捕まえた悪者(?)はガリヴァーに悪夢を見せたり尋問したりで乗っていた宇宙船・ノーマッドの場所を吐かせようとする等等、この主人公がやられたい放題だし、主人公もやりたい放題すぎる。今のところ登場人物みんな頭バーサーカーだが大丈夫か?ハラハラしながらページをめくってしまった。本日は第4章まで。
タイトルの『虎よ、虎よ!』の虎は、顔面にえげつない刺青を入れられたガリヴァーの姿と、その復讐に燃える生き様から取ったものなんだろうな。おそらくな。

晴耕雨読は誰が言い始めた言葉か?

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朝からポツポツと雨が降っていたので、「じゃあ今日は外に出かけず本を読むか、晴耕雨読だな」と思ったところで、急に「晴耕雨読ってどこから湧いた言葉だ?中国か?」と気になり始める。軽くググってみたところ、語源・由来不明、出典不明とのことで不思議な感じがしたし、ググった先で生き継いた『レファレンス協同データベース』なる、国立国会図書館が全国の図書館等と協同で構築する調べ物のための検索サービス(質問・回答サービス含む)があることにも驚いた。インターネットがある世の中でよかった。

「脳」整理法 / 茂木健一郎

脳科学者で有名な先生なのかな?ここ数年、脳によくないとは思いながらマルチタスク作業をすることが癖になってしまっていて、どげんかせんといかんと思い、ちょいちょいと脳関係の本を再読し始めた。まあそんなことで頭は良くなったりはしないのだが。この先生の本は、目次をパラパラと見ていた時に気になって手に取った。

知識について、ひとまず次の二つに分けて考えることができる。「世界知」という科学を根拠にした己の世界観を構成する知識と、「生活知」という生きていく上で自分個人に寄り添った知恵(母語やコミュニケーションなど)である。この世界知を生活知に寄せていくことが大事で、また、この二つの知をつなげていくということに生かせるのが脳である。世界知は、自分がいなくても成立している世界を見るためのアートであり、神の視点である。

また、何かが起こる時にも、次の通りに分けて考えることができる。「ランダム」、「規則性」、そしてその中間点に位置する「偶有性」。規則性は人に歓びの感情をもたらす(科学、天体の運行、数式の美、秩序、法律など)。ランダムについては人は無関心になるが、ランダムの中にも規則性を見出そうとする癖がある。例えば宝くじを買うとき、人はそこに何らかの規則性を見出そうとするが(ラッキーナンバー6がよく出る、大安の日に買う、日頃の行いを正す等)、そこには正しい規則性はなく、結果は全くのランダムである。占いについても同じことが言える。この間にある偶有性は……なんだろう、競馬とかだろうか。規則性があるようでもあり、全くの偶然・意外性に左右されるようでもある。この偶有性を脳は栄養にする、みたいなことを主張されている。この辺、ちょっと分からなかったが、偶有性のある新鮮な知識を蓄積して、それを脳が整理することで、創造的なものを生み出すことができる、みたいなことだろうか……?人は、規則性とも言える世界知を、偶有性に、生活知に寄せていくことで、脳の中で何かを創造し得る、とか。

いや、多分ちゃんと普通に読めば筋が通っているのだとは思うが、私の中で「この先生の手持ちのキーワードは、偶有性・クオリアだと思うけど、そうすると本のタイトルの「脳」整理法ってなんだ…?企画書で提示されたタイトルに強引に著者の持つ手札を絡めているとか?」と話が繋がっておらず、どうでもいいことばかりを考えてしまっている。私の脳の整理がされとらんのよ。これはシンプルに、私が脳に対して今現在そこまで興味がないからなんだろうな……。

逆にこの本で興味が湧いたのはP90の「脳は刺激を欲し、外界からの刺激を完全に遮断されると、勝手に幻覚を生み出して刺激を得る」みたいなくだり。なんか、感覚遮断タンクとかいう装置に人間を突っ込んで遮断した結果、そういう結果が出たらしい。この実験の被験者にファインマンの名前が上がっているので、これはまあ信じて…いいかな。でもそうすると、人間、夢を見る仕組みってこういうことなんじゃないか?と連想で妄想できたりした。つまり、寝ている時も脳は動いているのだが、身体の感覚は遮断されている。だから脳が勝手に刺激を作り出そうとして、幻覚を見る、みたいな。瞑想を極めると幻覚を見たり恍惚感を得たりするのもそう、とかどう!?私の瞬発的なひらめきにしては、そこそこ面白い仮説では!?(どうじゃないが)

もう5月20日!?

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勝ち続ける意志力 世界一プロ・ゲーマーの「仕事術」/ 梅原大吾

先日の途中から一気に読んで読了。いや、予想を越えて遥かに良い本だったな。
努力をして17歳の時に世界一位にはなったものの、梅原さんはゲーマーをやめてしまう。続けて選んだのは麻雀の道。やがてそれも止めることになり、今度は介護の業界へ。友人からの誘いがきっかけとなり、去ってから3年でまたゲーマーに戻って、そしてアメリカの企業からプロ契約の誘いが来る。この経歴がしっかり骨としてあり、そこから磨いた仕事術への見解の根拠を肉としてくっつけていく感じなので、話の根拠に納得することができた。納得は全てに優先するってジャイロが言ってたもんな(?)。

・考え続けること、本当に長く、少しでも努力を継続すること。
・自分の取り組みが正しいのか、そこで悩んでしまうのはまだ自信がないから。それでも続けていくと「正しくないかもしれないけど、俺はこれでいい」と思える日がやってくる。
・納得ができるまで突き止め、考えること。お金を稼ぐということが目的ならばこのやり方は効率は悪いだろうが、自分を成長させるということが目的ならば、大事である。効率を突き止めて、戦法をコピーし、そのノウハウだけですぐに最高点の10になることもできるだろうが、10止まりになる。例え時間はかかっても愚直に考え、11、12、13と限界を突破できる人間が世界のプロたちである。
・「(この道は苦しいかもしれないが)こう考えれば楽になるよ」みたいなアドバイスは嘘だと思う、楽をして大きな何かを掴むことはできない。かといって、がむしゃらな努力をしてはいけない。
・今まで「どうして若いうちにしかできないことがあるの?ちゃんと説明してよ」と思っていたが、介護の現場では、歩けないし一人で食事もできない、5分前のことも忘れてしまう人々が当たり前にいて、できることは本当に限られていた。だから復帰して、プロになる話をきた時、できるうちにやろうと覚悟を決めた。

などなど。よくある「自分を成長させる」というテーマが、全く見栄や嫌味のない文体と体験談で語られているので、読み応えがあった。良本でした。