読書:虎よ、虎よ! / アルフレッド・ベスター
急に「野口!」とヨーガは笑うのよ
一昨日の続きから読了。
捕らえられた主人公が治療棟にぶちこまれて、自称老婆と脱出して、顔に彫られた刺青を消すために整形して、なんやかんやあって成金になって、またかつての女たちと出会い、黒幕と出会い、怒りを抑え、やがていつの間にか考える動物になっていた主人公は……みたいな感じだったかな。途中までだいぶ頭の中で整理しにくいし、登場人物はみんな頭バーサーカーの上、主人公はレッガー◎・アヴェンジャー●・バーサーカでポリコレに引っかかることしないが大丈夫か?と首を傾げていたのだが、急に『奥歯のスイッチで起動する加速装置』が出てきてテンション上がってしまい、そこからの加速的な展開も含めて一気に読んでしまった。奥歯スイッチの加速装置、本家ここかあ!(1956年出版だからおそらくそう)終盤の展開も凄まじかったし、紙面上での工夫も凄かったし、これはすごい名作なのでは?
スタートは粗暴で粗野な主人公だったが、復讐のために知識を学び、教養を身につける。途中整形で顔に彫られた刺青はなんとかしたのだが、怒りという感情で血管の通りが良くなると、その刺青が虎のように浮かび上がるようになってしまい、感情をコントロールする術を得ることを強要される。後半になってくると「ガリレオ」と揶揄されるようになるまでに成長し、終盤になると誰よりも考える動物になっていた。
ふと出る描写が抜群にいい。「ゆたかで空虚」「花開く怪物」「こよなく美しい屍衣」「焦ってはいけないのよ、あなた」「あの白い死骸に恋をするだなんて!」。
主人公を見捨てた黒幕にはびっくりしちゃったな。常に炎に包まれた人も出てきて、これファイアパンチの元ネタの元ネタなのでは?となるところもあったし、サトラレの人間が活躍するし、もう6作くらいの小説の設定をぶちこんでるのよ。途中まで読むのに随分苦労したが、それでも「よくわからんかったところ確かめたい、また最初から読んでみたい」となる、確かに不朽の名作と呼ばれるSF小説だった。