まずは愛しきものを殺せ
この本の正式名称が『名著から学ぶ創作入門 優れた文章を書きたいなら、まずは「愛しきものを殺せ! 」』なのだが、めちゃくちゃ聞き覚えがあるサブタイだと感じて手にとっていた。文章術の指南書?的な本の名文句だったように思う。そしてその文章術の名著を50冊以上読んだ著者が、重要と思われるポイントをピックアップして紹介した本が本作になるのかな。どこかで見たなこの形式?(もしかして:ビジネス書ベストセラーを100冊読んで分かった成功の黄金律)
著者は、新聞記者で博士号持ち・専門機関で40年以上創作講師を務め、自身も作家として活動している等、まごうことなき本職のプロなのだが、そのせいあってかそこそこ分厚い本になっている。中身は読みやすくて親しみのあるテキストで、名著の優れた教えを引用しながら文章を書く際に気をつけたいポイントを説明している。
愛しきものを殺せ……文章を装飾する目的でお気に入りのフレーズを使うこともあるだろう。しかしそのフレーズは、本旨に沿うものか?そうでなければ、たとえ愛しいものでも、出版社に提出する前には取り除くべき。みたいな教え。確かにあるな〜!ふと思いついたあの一言が言いたい!ってなることめっちゃある。でも、それは本旨のテーマに沿った適切なフレーズか?言いたいから言っているだけでは?みたいな厳しい目で見ることも必要だと。初歩的なことだけど、確かにそうだよな。ノリで使う言葉もそうだけど、大事にしたいフレーズならなおさら、適切ではないところで使っては勿体無いもんな。愛しいフレーズはとりあえず他所に書き留めておいて、然るべきテーマで、最大限、効果的なタイミングで使うのがいいと言われれば、それはそう。
雑然とした箇所を見つけて削除しよう……著者のクラークが「ただならぬ2ページ」といった箇所に書かれた教えを要約すると、「(われわれの文章は)大袈裟な表現や無意味な専門用語に塗れ、窒息しかかってる社会そのもの」「冗長な言葉は雑草と同じ、放っておいたら日常になるから、見つけ次第削除しろ」みたいな感じ。現代は情報過多でどうこう言われているけど、文章の中も同じだよと。本質を明瞭に、簡素に刈り取れ。それがうまく文章を書くということだ。なるほどなあ。
計画に沿って書こう……大きな執筆プロジェクトになればなるほど、計画を必要とする。あと執筆に必要な資料は、必要だと思ったよりはるかに必要。収集の後には、よい選択をする。よい選択をするには、軸となる考え、つまり焦点が必要である。
文の長さを変えて、心地よいリズムを作ろう……短い文、中くらいの文、長い文を組み合わせ書こう。そのリズムは、音楽を奏でているようなものだ。ただ読ませるのではなく、耳も楽しませるリズムを考えよう。一つ一つのピリオドを、一時停止の標識と考える。
他、とりあえず試し書きをして、すでにわかっていることは?わかっていないことは?と自問する。楽しませ、教えるために書こう、など。
エーン、この本手にとっておいてなんだけど胸に突き刺さる。