「2022年」の記事一覧

スゥーッ!

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茶の本 / 岡倉天心

なんか有名な本。かつて存在していた名古屋ボストン美術館に年1〜2回くらい行っていた時期があって、それに深く関わった岡倉天心の存在は知っていて、外国人向けに英語で茶と日本人についての本を出したという話もざっくり知ってはいた。多分動画かなんかで内容のまとめは見たことがあるけれども、そういやちゃんと本で読んだことないなあ、と思って今回手に取ってみた。せっかく原書では英語で書かれているのだしと思って、見開き左側ページが日本語・右側が英語で書かれた茶の本を選んでみたのだが、予想外の英訳が続いて結構面白かった。茶道のことTea cultっていうんだ!?

本の初っ端から、著者が「白色人種は黄色人種のこと笑ってるけどお前らなんも分かってねえな、舐めてかかったロシアが痛い目に見たの覚えてないのか?」みたいなバシバシの喧嘩腰で笑ってしまう。でもまあ、そんな西欧・アジアの両者でも、茶のことについてはお互い受け入れられるよね、茶で互いを慰め合えるよね、という感じから、茶を通してみる世界の歴史、一般的に茶のルーツとされる中国の茶に対する思想、禅との繋がり、茶室の趣と内包する美学、華美のために花を大量消費するのではなくただ花を生かす心について、茶人・千利休の辞世について、とつらつら説明がされて、ページ数もさほど多くなく、ジャパニーズ・ワビサビ・チャドーの世界観がさらりと体感できる感じの良本だった。

せっかくなのでルピシアの福袋で入手した紅茶なんかを飲みながら読んでいたが、私に茶気がなさすぎて、「日本のアーサー王とでもいうべき源義経(笑)」というところばかりに反応してしまっていた。もっと他にあるだろ!感銘を受けるところが!こんな大人になる予定ではなかったのに。(もうちょっと芸術を理解する知性を磨きたかった)

3cm先闇 赤をもっとおくれ

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部首のはなし 2 / 阿辻哲次

前回読んだ「部首のはなし」の続編。文体の運びとそこから滲み出る性格、見え隠れする男女観からして、多分おじいちゃんなんだろうな……と大変失礼な偏見を持って読んでいるが、さすがに培った歳月の奥行きがあって、どの話も面白い。お偉い学者の先生のお話って感じがあってためになる。

パラパラ読んでみて面白かったのは「刀(りっとう・かたな)」。分の下側、初の右側、利の右側。カタナというのは、片方のナ(刃を意味する古語)で出来ているそうで、片刃包丁の片刃=カタナなのだそう。八に刀とかいて分=カタナでものを切り分ける(八の意)こと。衣へんに刀で、初=衣を作るときにはまず布を刃物で断つことから。利=禾(穀物)を鋭い刃で断つほどに利が生じる様から。な、納得できる〜!

部首とか関係ないんだけど「寸(すんづくり)」。一寸法師の一寸=約3cmか〜おやゆび姫より小さいんだな、と思いながら読んでいたんだけど、一寸先は闇って言葉があるよな……3cm先は闇ってすぐ近くすぎん?と思わず明後日の方向に考えてしまった。すぐ先の未来でも読めないことは承知だが、3cm先の未来でもダメか?ダメだったかあ。

寸が長さや距離を占める言葉なら、「斗」はマス=量るという意味だそう。米をはかることが料理、といえばイメージしやすいか。北斗七星は、柄杓をテトリスしたような星座で、ひしゃく=斗、っぽい。

「文」。胸に彫り物を入れた人間を真正面からみた形とのこと。きらびやかな模様=文というのは、なんとなく分かる気もする。彫り物を指す紋紋(モンモン)も糸に文だし、文化の文でもあるし、華がある感じはする。

「青」。静=青+争で出来ているが、本来は青と赤のバランスが取れている状態。

どれも面白くて、全編ネタバレになってしまうのでこの辺にしておくが、やっぱ日本語はいいなって思えた。言葉の形一つとっても匂わせがすぎるのよ。中国先輩サンキューな。

最近のグルメ漫画って、人は死ぬし、感電死の危険があるんだ……

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美食探偵 明智五郎 1〜9巻 / 東村アキコ

うっすら名前に聞き覚えがあるので、多分ドラマ化とかしてたやつだな?パラ読みした瞬間から「この絵柄、絶対東京タラレバ娘描いた人だ…」と思って読んで実際その通りだったので満足だった。というか、いきなり1巻すっ飛ばして新刊の9巻から読んだんだけど、途中まで普通に高慢な商業社会に、小さなケーキ屋が飲み込まれてしまう感じのグルメ物語だったと思ってたんだよな。それなのに、急に妙齢のマダムがフォークで人を刺し始めるし、割と簡単に人が死ぬしの不意打ちでチビるかと思った。東京タラレバ娘の著者というイメージからくる作風で、人がバンバン死ぬものだと思ってなかったんだよな。先入観を全否定されたインパクトで思わず1巻を手に取り、そのまま全巻を読んでしまった。なるほど、探偵ものってのがベースにあって、テーマがグルメなんだな。ドラマ映えしそうな話の作りで、やっぱ売れてる人は売れそうなものを描くなとプロ根性を感じました。面白かった。

中華一番!極 12巻 / 小川 悦司

これも新刊のコーナーにあったので、いきなり12巻から読んでみた。まあ中華一番だし……イケるだろ!と思って読んでみて、実際なんとなくそれまでのストーリーを感じることは出来たんだけど、「塔が変形(トランスフォーム)してゆくぞ…!!!」でもなければ「八極聖典で長寿を得るか!八極電磁の感電死か!命懸けの八霊塔料理勝負!」でもないのよ。昨今のグルメ漫画は一体どうなっとる?中華一番の持ち味がパワーアップしていて面白かった。

冬か?寒いが?

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天才たちの日課 / メイソン・カリー

原題は「Daily Rituals: How Artists Work」、芸術分野の天才たちの日課(ルーティーン)をひたすらに収集しまくった方の本。だいぶ前に買って読み終えた本なのだが、この本の中に出てくる1800年代のイギリスの小説家チャールズ・ディケンズの生活パターンが認知心理学的に理想!みたいな話を最近ちょいちょい聞くので、改めて読み直しをした。こうやっていろんな著名人の日課を一気に見ていると、破天荒な人もまあまあいるが、規則正しい生活を自分に課している人が多い気がするな。規則正しい生活というのには憧れる。まあ、それはさておき、チャールズ・ディケンズの生活はどんなもんじゃいと見直したところ、大体以下の通り。

▼チャールズ・ディケンズ
・まず前提として、チャールズ・ディケンズは多作で有名。代表作は『クリスマス・キャロル』。守銭奴で嫌われ者の主人公が、クリスマスイブに過去・現在・未来を司る案内人と共に時間旅行を繰り返し、やがて改心すると言うもの。何度も映画化されているので、さすがにタイトルは聞いたことがあった。
・チャールズは朝7時に起き、8時に朝食、9-14時まで書斎で仕事(途中で休憩がてら家族と昼食)、何にも思いつかなくても仕事時間は椅子に座って時間を過ぎるのを待つ。チャールズの作家としての仕事時間はいつも一定である。
・書斎の中にある家具・文具は、決められた場所に正確に配置されている。
・完璧な静寂の中で作業をする。(防音のために二重ドアにした書斎で書く)
・14時になるとさっさと仕事を切り上げて、3時間ぐらいの散歩に出る。今書いている物語のことを考えながら、物語の土台になりそうな光景を探して歩く、とのこと。
・帰ってきて18時に夕食、その後は家族や友人と過ごし、24時に寝る。

私の理想の生活と大体同じような生活しとるな。静寂と部屋にあるものは自分の支配下にある、仕事時間は気が乗らなくても仕事する、その時間が終わればさっさと気分転換に外へ出る、その後はゆっくり過ごす。毎日同じ生活スケジュールと言うと退屈なように見えるが、大体の人間はその退屈さに負けて、気分の赴くままに仕事や運動を後回しにしてスマホいじったりするからな。規則正しい生活を、規則正しいままにこなすのは、本当にすごいことなのよってこの歳にして思えるようになってきた。私の求める生活スケジュールも、認知神経学的にも良いとされるチャールズの日課とそんなに変わりはないので、まあぼちぼちと頑張っていきたい。

何にもしない一日

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消防の点検が来るので朝っぱらから部屋を掃除して疲れ、一日中雨が降っていることを言い訳に、ゲームばかりしている1日だった。おかげで火星のテラフォーミングが完了しました。こんなに1日全く外に出ない日は久しぶりかもしれない。なんだかんだで外に散歩しに行ったりすることが多いからなあ。