「2022年」の記事一覧

そういや合歓の花ってちゃんと見たことないかも

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歌集 合歓の花 / 阿形志津

図書館で借りた、個人の短歌をまとめた本。本屋では買えないタイプの個人が発行している同人誌(印刷所と著者の住所が奥付にあるやつ)だったので、とても懐かしく思い、借りてしまった。いやー、地元の情景を短歌にしているってすごくグッと来るものがあるな。明らかに見たことがある場所の写真とともに、ここで生まれ育った人生と情景で短歌作りました!と言われると、なんだか気持ちリアルに思い浮かぶんだよなあ。最近、地元の民話を聞いたりと、地元由来のあれこれに興味を持ちだしているんだけど、この行動は当たりだったと思う。メチャ楽しい。気に入った短歌は以下の通り。

葉を閉ざし夕べをひそと咲いている合歓咲く七月わが生まれ月

さざ波に 映る夕日の影ありて夢にたつ旅の海は恋しき

芽吹くもの紅も緑もみな淡く春の光を彩りてゆく

歌集 合歓の花 / 阿形志津

シンプルに、私も植物とこの辺りの海と夕日が好きだなーと言う趣向の一致と、この方、孫のことや福祉のこと、戦争、亡き夫、旅路の思い出を短歌にしているページもあったりで、短歌で人生を綴っているのすごくいいな〜とても好き〜と思ったりした。芋蔓についての話を見た時は「ああ〜!静岡の民話で見たやつ!この辺り、芋関係の話があったよね!」と、以前読んだ地元の本から得た伏線がちゃんと回収され、なお楽しい。終始しみじみと読むことができた。

この本とは全く関係ない話をするんだけど、合歓といえばeuphoriaだなあ。以前、ペルソナでも、同じように「眠る少女が見る幸せの夢が、あまねく全てに伝播する。その少女が夢を見ている楽園への扉がどこかにある」みたいな設定があったことで、このゲーム共通の元ネタ絶対にあるはずやん、なんだろう?イギリス小説っぽい……と思ったまま、それから先一向に情報を集められず保留になっていたんだけど、案外日本の小説とか民話なのかもしれないな。

透明と透明感と透明感のある肌の違いとは

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透明感のある歌なら、中谷美紀のアルバムと即答できるところだが……!

世界一美しい 透明スイーツレシピ / 透明愛好家 tomei

タイトルのまんま、透き通ったスイーツを集めたレシピ本。
この著者の方は、Twitterで時々バズってタイムラインに綺麗な透明感のある写真が流れてくるため知ってはいたものの、最近Youtubeでもオススメされるようになり、気になる機会が増えて矢先に見つけた本だったので、手に取った。

あと、前はお菓子のレシピ本を見ても「うちにはオーブンがない、レンジもない、トースターもない、ガス火もない(IHヒーターのみ)」と言うことで実践編まで至らず、本を読んだきりで終わってしまってはいたものの、上のTwitterの写真にあるような、ドリンクやらゼリーやらだったらなんとかなるかもしれん、と言う考えもあった。

実際に本を見てみると、フルーツゼリーや、水信玄餅、寒天、ゼリーと炭酸を合わせたフルーツポンチなど、ぱっと見簡単に作れそう(慢心)。美味しそうと言うよりは「きれい〜〜」と眺めるだけでも満足してしまいそうだが、さすがにレモンにジャーム、ソーダ水を足したものくらいは……私にだって作れらあ!と言うことで、そのうち作ってみたい。最大の問題は、我が家に透明なグラスが一つもないことくらいか……。

最後に、どのように写真を撮っているのかのコラムのページもあって、なかなか楽しめるレシピ本でした。

ありったけの夢をかき集め

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天冥の標Ⅰ メニー・メニー・シープ(上) / 小川一水

日本の作家が書いた、2009年に出たシリーズもののSF小説。舞台は西暦2803年、植民星メニー・メニー・シープにやってきた人類の話。入植から300年が経ち、この惑星へ降り立つ際のいざこざで、高度な文明は失われてしまったとされる。また、代謝系が変化して、通常の人間とは異なる生態を獲得した種族もいる。そのような世界の片隅で、医者をしている男がいた。彼は、ある日「怪物」と呼ばれる見た目をした生き物と出会う……みたいな始まりのやつ。

やっぱこの世界も、上級国民(議会議員)と下級国民(生産市民)、非人間(怪物、アンドロイド等)の格差みたいな話あるな〜!?倫理観を地球に置いてきたのか?SF小説に、高度な文明、高度な科学力、高度な人間性を期待するのが間違っとるのか!?でも、優しそうな女性議員が煙草を吸っていたシーンは、SF小説お決まりのやつなので良かった。あるある…煙草を吸うインテリ…!

地球からは家畜を羊しか持ち込めず、この植民星で石油や鉄鉱石があんまり取れないのは厳しそう。電気で大半を賄うのにも、大掛かりな設備を維持するにも、鉄は朽ちるとは思うが、そうするとやっぱこの植民星で文明保ったまま生きていくのは無理なのでは?一部のアンドロイドの維持に必要なレアメタルも採れんだろう。と思いながら読み進めていたが、お偉いさんもやっぱこの星は嫌らしい。市民たちに節電の圧政を敷いていたが、その電力で、300年前に乗ってきた宇宙船を再起動させて、他の星へ行きたいようだ。まあそうなる……。上からの圧政に対し、反旗を翻した主人公たちの活動や、植民星を開拓して新しい移住先を探そうとする一味たちを見ながら、上巻は終わり。
続きはまた今度読もう。

勉強する気はなぜ起こらないのか / 外山美樹

う、ウーン!大体知っている話だった。目標や環境の設定、セルフコントロールの忍耐力、マシュマロ実験と、そのマシュマロ実験は特殊な環境下で行われたのであって、再現性は無いみたいな話も含めて……!ちくまプリマー新書を信用しすぎていた。目次をちゃんと読めば免れることができた事態だったのに、しまったな。途中で通読を断念。

やっぱ全人類「ひぐらしのなく頃に」を履修しておくべきなんだよ

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『ちびくろ・さんぼ』については下記を参照。

桜の樹の下にはコスパが埋まっている桜の樹の下にはコスパが埋まっている

『ちびくろサンボ』絶版を考える / 径書房編集部

1990年出版の本。日本での『ちびくろ・さんぼ』関連の絶版が相次いだ時に「なぜこのような事態が?私たちは差別問題をどのように考えてゆくべきなのだろうか?」と問題意識を持った径書房編集部の方々が出された本。

へえ〜!となったところを箇条書きで描いていく。

・原題『The Story of Little Black Sambo』を『ちびくろ・さんぼ』と訳したのは、当時の岩波書店版常務のアイディアで、漫画『のらくろ』から来ている。

・欧米では「ちびくろサンボ」の主人公サンボはアフリカ系黒人の絵柄で描かれている。しかし作者はインドにいた頃に描いた絵本だし、そもそもトラはアフリカにはいない。インドにはいる。絵本には「バター(あるいは、インドでいう「ギー」)」と注訳があるので、主人公のサンボはインドの少年の物語っぽい(しかし明言はされていない)。日本はイギリスの絵本を参照したっぽいので、普通に黒人で出している。

・日本での絵本絶版のきっかけになったのはサンリオの『サンボ&ハンナ』という黒人モチーフのグッズ。続けて、そごうデパートの黒人マネキン。これがワシントンポスト紙の目に留まり、「声も出ないくらい差別的」と大々的に批判を浴びた(サンリオは、差別についての指摘があった日にすぐ販売中止と回収を行なった)。アメリカでは「サンボ」というのは黒人(アフリカ系)蔑視の表現として使われている。この「サンボ」という名称を問題視した団体が、『ちびくろ・さんぼ』も差別・人権問題であると出版元へ批判をするようになり、慌てた日本の出版社は一律絶版にとした。ちなみに、日本では、「サンボ」というのは『ちびくろ・さんぼ』の絵本の男の子を差しており、蔑称だという認識はなかった。ここの違いで揉めたと言える。

・ちびくろさんぼの父は「ジャンボ」、ちびくろさんぼの母は「マンボ」。これらで「mumbo jumbo(訳:わけのわからない呪文、ちんぷんかんぷん)」となるので、一家三人揃ってアウトなのは常識というのが欧米基準。「サンボ」の蔑称は、スペイン語の「ZAMBO=猿、がにまた」を語源としているという話が定説らしい。これを知らなかったのが日本(本当か?流石に一人くらい指摘した人いたのでは?)。

・作者は白人のイギリス人女性で、二人の娘のために描いた絵本だとされるが、有色人種に対する差別意識があったのでは?と言われてしまっていた。

・そして急に、インドのシェルパ族の言葉には「サンボ=優秀な」「マンボ=たくさんの」「ジャンボ=大世界」という意味があるらしく、サンボ・マンボ・ジャンボの類の名前の人は結構いるという爆弾が投下される(おい!!!!今までの話が全部変わってくるじゃねーか!!!!!)

・チベットのメジャーな言語にも同じような表現があり、お坊さんが全員サンボの名前を持っている寺院もある。ジャンボはサンスクリット語由来(!?!?)、マンボも恰幅がいい母?(たくさん食べる、たくさん子供を産む)みたいな意味合いっぽい。

欧米「サンボは差別用語だからダメだよ!」
日本「あっはい」
インド・チベット「勝手にサンボを差別用語にすな」

ヒュウ〜死ぬほどややこしい時代背景!話し合え!今日は、本付属の小冊子+60Pまで。

全然関係ないんだけど、この小冊子を入手するにあたって書かれていた文章が、あまりにも太古の昔に見た『同人ペーパー取り寄せの儀』の文面で笑ってしまった。

径書房くん「『ちびくろサンボ速報』は、送料のみ実費でお送りします。ご希望の方は切手を貼った返信用封筒を同封の上お申し込みください」
私「いつの時代の話!?!?!?!?」

頭伯邑考ハンバーグか?

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ヒストリエ 1〜11巻 / 岩明均

長い間、私の『読みたい漫画リスト』に入っていたこの漫画、もはやリストに入れたきっかけすら忘れてしまったが、本日思い切って手をつけた。
いきなり冒頭からアリストテレスが出てくるなあ〜哲学者になる少年の話なのかな?と思って読み進めたら、これ、イスカンダルがブイブイ言わせてたあたりのマケドニアの話だな!?そういえば、アリストテレスはイスカンダルの教師だったことで有名だったな。このあたりの知識は、FGOで得たボンヤリしたネタと、藤村シシンさんゲスト回の『ゲームさんぽ』のトークでの会話、そしてYoutubeチャンネルの『俺の世界史ch』で知った知識くらいなのだが、そんな覚束ない前提知識でも、紀元前4世紀の古代ギリシアが舞台の歴史漫画として十分に楽しめた。
また、話の途中、急にミームで有名な「よくもだましたアアアア!!!!」「ば~~~~っかじゃねぇの!?」が出てきて不意打ちをくらい、そういった意味でもメチャメチャ面白かった。「ば~~~~っかじゃねぇの!?」の文脈をちゃんと見たら、この台詞を言ったハルパゴス、あまりに悲惨な目に遭っていて可哀想の一言。
そしてこの漫画、もうとっくに完結している漫画だと思っていていたのだが、現在進行形で連載中なんだな。11巻まで一気に読み進めたものの、とてもいいところ、具体的には「お、オリュンピアス様(イスカンダルの母)超強ええ!」のところで止められてしまった。エー続きがめちゃくちゃ気になる〜〜〜。
読み終わった後に、この漫画についてもっと知りたくなったからネット検索をしていたら、この漫画を描いた先生は、『寄生獣』で有名な方だったことが判明。『寄生獣』、だいぶ昔に読んだ覚えがあるなあ、あの時も最後まで読み切った覚えがあるから、本当に面白い漫画を描く作家さんなんだと思う。12巻、早く新刊のコーナーに並んでほしいぜ。