「2022年」の記事一覧

気がつけば22時

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ウーン今日は本を読みたいと思える気力が残っていない。とりあえずその場凌ぎに家事をしながら、Kindle+Siriで『独学大全』を読み上げてもらい、全体の40%あたりをボンヤリしながら聞いていたところ、「書物は待ってくれる」という章で急に思い至ったことがある。そうか、私は対人には積極的にはならないが、人が作成した本や創作物になら積極的になれる。これを今まで、私の中でどう結論づけたものかと思っていたけれど(極論で言うと、人間嫌いだが人間の作った芸術は好き、みたいな区別しにくい状況をどう説明したものかと)、私は対人に関しては、私と他人との間に一つ本を挟む、この距離での付き合いなら人と付き合うこともが好きなのかもしれないな。距離感の問題だったのかもしれん。というところまで思い至って、本日の皿洗いが終了した。ネタがないともうただの日記よ。

読書:ナナマルサンバツ1〜20巻 / 杉基イクラ

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クイズ王・伊沢拓司率いる、QuizKnock(クイズノック)というYoutubeチャンネルをたまにみるのだが、たぶんそれ経由で知った、競技クイズを取り扱った漫画。以下ネタバレ。

ナナマルサンバツ1〜20巻(完結) / 杉基イクラ

競技クイズとはなんのこっちゃと思いながら手に取ったのだが、どうやら、クイズ番組でやるような知的競技の類らしい。最初のうちは「へ〜そういうのもあるんだ、クイズ番組的なやつかな?」くらいの感覚で見ていたが、学校内にあるクイズ研究会の活動の域を超えて、全国の強豪校相手に鎬を削り始める熱い展開とその見応えに一気に読み切ってしまった。

クイズ競技としては初心者なのだが豊富な文系の知識を持つ主人公、競技クイズ好きのヒロイン、サブカルに強い同級生、やたら強い謎の部長と、電子工作が得意な部長の妹、理数系に強いライバルや多種多様の因縁キャラクターといった、まあ誰か一人は推しメンができそうな豊富な全国各地のメンバーたちが、全日本U-18のクイズ大会、『スクエア』のクイズ王の座をかけて闘うという、なかなか普段見ることのないジャンルの漫画で面白かったな。私は文系の主人公が、最終的に推しになったかも。

途中気になったのは、段々と女性キャラクター周りから感じる謎の配慮というか、なんかポリコレ対策しなくちゃダメだったのか?みたいなオブラートみを勝手に感じてしまい、その周りに言い難い微妙なモヤモヤを感じてしまった。作者の方は女性のようだし、これはマジでなんだったんだんだ。

とはいえ、登場するキャラクターたち自分だけの強みを活かし、切磋琢磨し合いながら、知的に熱くなれる漫画で面白かったのは間違いない。オススメ。

若緑勢曾我:外郎売

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なにげなくTwitterを見ていたところ、「ういろう(透頂香)」の写真を上げている方が見えて、驚愕してしまった。演者や落語や滑舌訓練でお馴染みの『外郎売』で出てくる「透頂香」、この世に実在するんだ!?!?!?!??

この現代にまだ実在しているアイテムだとは思っていなかったので、もしかして私も買えるのでは……!と虎谷藤右衛門さんのサイトを探したところ、以下の通りの案内があった。

薬のういろう「透頂香」は、昨今の環境破壊のため、減量の生産が非常に少なくなってしまいました。六百数十年前の製法を今も守っておりますので、充分に作ることができません。症状が会う方にだけ対面販売させて頂いております。通信販売は致しておりません。

商品のご案内|ういろう

ああ……!なんてことだ、ミーハーですまない……。すこぶる健康体の身ゆえ、いきなり夢が潰えてしまった。

しかし、今月いちばんにワクワクした出来事だった。
相州小田原は、今の神奈川県小田原市なのね。明日『外郎売』の滑舌訓練やってみるかなあ。

読書:ポルトガル史[増補新版](1) / 金七紀男

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今回手に取った本は、以前、黒田龍之介先生の『世界の言語入門』で見かけた「ポルトガル語はブラジル音楽のボサノバにも使われ〜」の一文から興味を持ち始めたポルトガルの、通史本。
本が結構厚くて、本を開いて10分後くらいに「待てよ、まずWikipediaでざっくり読んでしまえばよかったのでは?この本をちゃんと読み切ることできるのか?」と気づいてしまい、一瞬にして心が折れかけてしまった。
だ……大丈夫か?私のポルトガルへの認識は、スペインの隣国、十字軍、カトリック教徒が9割、修道院が王族貴族と癒着を起こしてなんか権利を廃止された、修道院由来の古きよき伝統のお菓子がいっぱい残ってる、スペインとブイブイ言わせた航海時代、アフリカに植民地がいっぱいあったやつ、ポートの語源になった港がある、日本の南蛮貿易、シュガーロードとカステラ・鶏卵素麺・ぼうろ等の菓子、ブラジル音楽のボサノヴァはブラジルポルトガル語、くらいの知識しかないが……いや結構あるな。ポルトガルの菓子図鑑を読んだことが思ったより功を奏していた。これだけ知識あるならこの本も余裕で行けるんちゃうか?ガハハ!気を取り直して、いざ鎌倉!


Google Earthでポルトガルの地域を逐一確認しながら読み進める。とりあえず、1回目はざっくり読んで気になるところだけメモし、細かいところ等は2回目を読むであろう未来の自分に期待するという戦法で挑む。

・北部と南部は、地理的にも大きく違い、地理が違うので気象も違い、文化も違い、と結構別れてる。そんなに別れる?ってくらい別れてて、逆になぜ国として別れていないかの方が気になってきた。

・ピレネー山脈を超えてイベリア半島にやってきたケルト人!ケルト人ガッツありすぎじゃない?

・ピレネー山脈を超えてイベリア半島にやってきたローマ人!ローマ人もガッツあるよな、あのピレネー山脈を越えるなんて……ん?と、ポエニ戦争時、カルタゴのハンニバルがアルプス越えをしてローマに攻め入ったという歴史知識とうっすら混じってしまい、一瞬混乱してしまった。アルプス山脈とピレネー山脈への認識が混じっとるし、ハンニバルはカルタゴ人であってローマ人ではない(ローマへ攻め入った側だよ)。ピレネー山脈ってもしかして、意外と超えやすい?いや、そもそもアルプス山脈はどこだ。アルプスの少女ハイジは、確かスイスの話だったと思うから、ええっとGoogle Earthで調べて……いや、カルタゴもどこだよ……ちょっとここでアルプス越えの認識を正そう……と脱線してしまうこともしばしば。最終的に、ハンニバルはアルプス山脈とピレネー山脈の両方を超えてアルプス越えを達成していたことがわかり、混乱の元凶に憤りを覚えてしまった。この!こいつ!こういうのが世界史を追う醍醐味だとは思うが、ポルトガル史が一向に進まなくて泣いちゃった。

そういえばドリフターズに出てきたので覚えているのだが、ハンニバルを打ち破ったスキピオ、ググってみたらフルネーム「スキピオ・アフリカヌス」じゃん。もしかして、カルタゴがアフリカ大陸側にあったことと何か関係がある?ん?でもスキピオは確かローマ人だよな……と急に疑問が湧いてしまい、軽くググることに。この本、まだ24Pしか進んでないんだが?本筋に戻りてえ〜〜!(アフリカヌス=アフリカを制したもの、アフリカ大陸サイドにあったカルタゴを打ち破ったことから付けられた第三の名前、たぶん覚えた)
あとついでに、ドリフターズの最新話がどこまで進んでるのかを確認しました。2002年は今の所、掲載したのは2回?そう……(諦念)

とりあえず、本の1/10のにあたるところまで読み進めたところで、今日はここまで。

  • 第一章 環境(北と南、農村の生活様式、石の文化と粘土の文化)
  • 第二章 建国前のポルトガル(先史時代、ローマ文明の伝播、ゲルマンの支配)
  • 第三章 イスラムの半島支配とレコンキスタ(イスラム文明の開花、レコンキスタの展開)

わかるようなわからないような歴史のカタカナが沢山出てくるが、とりあえず分からないまま飛ばすしかない……!2回目以降の私に期待しよう!

でもやっぱり、分からないなりに、この手の本を楽しく読めるようになってきているのは成長だと思う。何とか読み切り、歴史関係の語彙?用語のレパートリー?を肥やしていきたい。

読書:何のための「教養」か / 桑子敏雄

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ちくまプリマー新書!今年はちくま系のブランド買いをしてしまっている。
タイトルだけ見ると固い内容だと敬遠されてしまいそうなテーマでも、なんとか厚みの薄い新書にすることによって多くの人に読んでもらおうと工夫しているところが好きなのかもしれん。

何のための「教養」か / 桑子敏雄

哲学の先生が書いた本。著者は東大の哲学科を出て教養を教えてたっぽいので期待が高まるのだが、どうみても権威に阿る人間です。ありがとうございました。ともあれ、本のタイトル通りテーマは「教養は何のためにあるのか?」である。私は基本的に、他者からの影響を受けやすい上に権威に弱い人間なので、その影響を受ける前、つまりこの本を読む前に、「教養とは何か?」について、自分なりにちょっと考えてみることにした。

  • 割と何でも面白がれるようになる(状況がトリガーになって、頭のネットワークで活性化する知識がたくさん出てくるようになる、私はそういう閃きの感覚が好き)、特に本が楽しく読めるようになる
  • 他者・外界の状況には何かしらの背景がある、という認識になり、考えるという工程の道筋を作る
  • 背景を知り、バイアスの自認を前提に置けるようになる
  • アウトプットの質を高められそう
  • 外界を自分の演算装置にすることができそう
  • 自分だけの世界を、人間固有のストーリーという虚構で広くし、壮大さを感じられるようになる?(畏敬の念は心身に良い)
  • なんか頭良い人っぽくみられそう
  • 人との会話で話題は尽きなさそう

こんなところかな。じゃあ読むか、いざ鎌倉!


「何のための教養か?」という問いに対して、著者は「教養とは、人間の根っこを持つこと」にあるという。

昨今、とんがった専門性ばかりが評価されがちだが(金にもなるし)、人間の基礎となる部分、その土台をしっかりさせなければ、選択や方向性の軸もぶれがちになる。

大学で教養を学ぶことについては、かつて縮小傾向にあったのだが、それをよしとしていた文部省が考えを改めたのは、地下鉄オウムサリン事件が起こってからである。この事件は、高学歴で化学における高い専門性を持った人間が犯行に及んだ。高い専門性は社会に影響を与えるものの、それが良いか悪いかは、本当にその人の人間性次第になってしまう。それは良くないよね、教養ってそういうのも含めた人間力の基礎を作る部分だよね(宗教の本質や、人間社会への深い理解を学ぶ一つの手段が教養である)、専門性も大事ではあるが、それだけだと視野狭窄になって人間社会という基盤が疎かになってしまう。教養によって視野を広めよというのが、まず主張の前提にあるっぽい。
その上で、人間の根っこを持つこと、これが「何のための教養か」に対する答えであるという。その木の幹の太さ、枝の方向性、枝の数、葉の付け方、なる花の鮮やかさ、これを左右するのは、根っこがびっしり地面に根を生やしていること、そして強度を持つことにある。花を鮮やかにするためだけに、自身が得た栄養を回してしまっては、その木はすぐに枯れる。しっかりとした根があれば、自ずと全体に栄養が周り、枝が伸び、花が咲き、やがて外界に良い実を残す。そういうことを教えてくれる本だった。

以下メモ。

・著者曰く、アリストテレスは「教養は幸運な時には飾りであるが、不運な時は命綱にある」と言ったと訳することができるという。教養のある人は、よりよい選択をすることによって身を守ることができ、よりよい人生を実現することができる。よい選択をするためには、まず複数の事象からなる選択肢を「これらは選択肢である」として認識できる力が必要であるし、そのうちから思慮深く最善の選択をする、これを支えるのが教養である(ついでに言えば、多分よい目標も持つことができそう)。人類も、個人も、すべて何かしらの選択によってできているから、それらをよい方向に向かわせたければ、思慮深さを身につけるとよい。科学技術の発達は誰しもが望むものであるとされるが、それを扱うのは人間であり、最終的には人類全体の人間性がものをいう。地震大国なのにも関わらず、利益を優先した結果、原発対策を甘くみたしっぺ返しが来たことを忘れてはならない。

・心象風景について。人間は、空間に肉体を配置される、空間的配置にある。そしてその位置を取り囲むものとして風景がある。人間は、その感覚器官によって取り込んだ情報により、自分自身が置かれた環境を認識する(肉体の目で見て、心の眼でも見ている)が、その認識の咀嚼の仕方についても、教養は影響を及ぼす。よい風景を認識し、よい選択ができるようになる。自分の周りの風景がどのようなものであるか、見えるものを変えることができるのである。

・一般教養はリベラルアーツと訳されることが多い。リベラルは自由を意味し、人間を拘束するものからの自由を意味するが、ビジネス系だと、リベラルアーツは経済的自由を得ることというニュアンスで使われがちじゃない?(金持ちの一般常識みたいなこと?)

・「どうも日本人は、思想をファッションのように着替えることが得意なのではないか?(戦中と戦後でコロっと思想を変えたりできる)」とのご指摘。これは完全に私だ……(ストイックという思想のファッション性が好きだし、キリスト教徒ではないのだが、教会での結婚式やお葬式ってかっこいいな〜!ってファッション性を感じがちだし、流行っているビジネス書は読みたくなるし、かと思えば飽きっぽくて見切りをつけるのも早いし)

後半は、教養の実践として、著者が国関係のプロジェクトに携わった話など纏めてあった。新書なのでP180Pくらいの本なのに、色々考えさせられるところのある、良本でした。