読書:サマータイムレンダ / 田中靖規
表紙を見た時、なんか地方に浮かぶ小さな島で美少女とドキドキな日常を送るヤツだと思うじゃないですか?
おい!!SIRENとひぐらしと屍鬼を足しっぱなしにしたみたいなSFオカルトホラーじゃねえかよ!!!!
ドッペルゲンガーじみた「自分にそっくりな影を見ると死ぬ」という伝承が伝わる小さな島を故郷に持つ主人公が、幼馴染の少女の葬式に出るために島へ帰ってきたことから始まるストーリー。そこで死んだはずの幼馴染、その影と出会った主人公だが、展開が進むにつれ、不可解な怪奇に巻き込まれて殺されてしまう。しかし、その死をトリガーとして、過去へタイムリープするループ能力に目覚めた主人公はーーーみたいな感じ。
殺傷シーンが死ぬほど多いので合う合わないがあるかもしれないが、エログロ系は控えめだし、あまりに適当な役割を振られたかませっぽい登場人物もいなかったので、そう言った意味では安心して見ることができた。登山漫画『孤高の人』で負ったトラウマ(主人公の男ライバルがクズ堕ち、ヒロイン枠が風俗落ち)がまだ消えてないんよ。
和物+SFっぽい雰囲気設定は好きだなあ。私自身、海が好きなので、その周りの設定もいい。
登場人物の一人が言っていた「ひだるい」という言葉が出てきた時、「ひもじいってやつだ!」と六道紳士の『デスレス』で学んだことを思い出した。この語彙生きることあるんだ!?
舞台の島には、漂着したものは神として祀るという漂着神文化があるらしく(島の浜辺に流れ着くワカメや鯨、タコ、流木、舟などの資材をありがたがる文化)、この辺りちゃんと『漂着神』でググれば色々出てきたので、気になる民話ではある。鯨とかが漂着すれば、肉は食えるし、脂やヒゲ、骨は使えるし、確かに神の恩恵の一種に見えるなあ。
寄り神(漂着神)
WIkipedia – えびす
主に漂着したクジラを指して(古くは流れ鯨・寄り鯨(座礁鯨)を)「寄り神」と呼ぶことがある。「鯨 寄れば 七浦潤す」「鯨 寄れば 七浦賑わう」などというように、日本各地には地域がクジラの到来により思わぬ副収入を得たり飢饉から救われたりといった伝承が多いが、特に能登半島や佐渡島や三浦半島で信仰が残っている。海外からの漂着物(生き物の遺骸なども含む)のことを「えびす」と呼ぶ地域もあり、漁のときに漂着物を拾うと大漁になるという信仰もあるという。九州南部には、漁期の初めに海中からえびすの御神体とするための石を拾うという風習があるという。これらの民俗信仰は、えびすの本来の性格を示すと考えられる。
終わりの方の展開には、う、ウーン!?そういうふうに纏めてしまうんだ!?と若干納得がいかないところがあったが、民話や伝承をうまくオカルトSFチックに繋げる設定力なんかは大変良かった。面白い漫画だった。