「2022年」の記事一覧

読書:サマータイムレンダ / 田中靖規

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表紙を見た時、なんか地方に浮かぶ小さな島で美少女とドキドキな日常を送るヤツだと思うじゃないですか?

サマータイムレンダ1〜13巻 / 田中靖規

おい!!SIRENとひぐらしと屍鬼を足しっぱなしにしたみたいなSFオカルトホラーじゃねえかよ!!!!

ドッペルゲンガーじみた「自分にそっくりな影を見ると死ぬ」という伝承が伝わる小さな島を故郷に持つ主人公が、幼馴染の少女の葬式に出るために島へ帰ってきたことから始まるストーリー。そこで死んだはずの幼馴染、その影と出会った主人公だが、展開が進むにつれ、不可解な怪奇に巻き込まれて殺されてしまう。しかし、その死をトリガーとして、過去へタイムリープするループ能力に目覚めた主人公はーーーみたいな感じ。

殺傷シーンが死ぬほど多いので合う合わないがあるかもしれないが、エログロ系は控えめだし、あまりに適当な役割を振られたかませっぽい登場人物もいなかったので、そう言った意味では安心して見ることができた。登山漫画『孤高の人』で負ったトラウマ(主人公の男ライバルがクズ堕ち、ヒロイン枠が風俗落ち)がまだ消えてないんよ。

和物+SFっぽい雰囲気設定は好きだなあ。私自身、海が好きなので、その周りの設定もいい。
登場人物の一人が言っていた「ひだるい」という言葉が出てきた時、「ひもじいってやつだ!」と六道紳士の『デスレス』で学んだことを思い出した。この語彙生きることあるんだ!?

舞台の島には、漂着したものは神として祀るという漂着神文化があるらしく(島の浜辺に流れ着くワカメや鯨、タコ、流木、舟などの資材をありがたがる文化)、この辺りちゃんと『漂着神』でググれば色々出てきたので、気になる民話ではある。鯨とかが漂着すれば、肉は食えるし、脂やヒゲ、骨は使えるし、確かに神の恩恵の一種に見えるなあ。

寄り神(漂着神)
主に漂着したクジラを指して(古くは流れ鯨・寄り鯨(座礁鯨)を)「寄り神」と呼ぶことがある。「鯨 寄れば 七浦潤す」「鯨 寄れば 七浦賑わう」などというように、日本各地には地域がクジラの到来により思わぬ副収入を得たり飢饉から救われたりといった伝承が多いが、特に能登半島や佐渡島や三浦半島で信仰が残っている。海外からの漂着物(生き物の遺骸なども含む)のことを「えびす」と呼ぶ地域もあり、漁のときに漂着物を拾うと大漁になるという信仰もあるという。九州南部には、漁期の初めに海中からえびすの御神体とするための石を拾うという風習があるという。これらの民俗信仰は、えびすの本来の性格を示すと考えられる。

WIkipedia – えびす

終わりの方の展開には、う、ウーン!?そういうふうに纏めてしまうんだ!?と若干納得がいかないところがあったが、民話や伝承をうまくオカルトSFチックに繋げる設定力なんかは大変良かった。面白い漫画だった。

読書:作りたい女と食べたい女 1〜2巻 / ゆざきさかおみ

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たまにTwitterのタイムラインに流れてくるWEB漫画、『作りたい女と食べたい女』。その存在はなんとなく認知していたものの、突然LGBTのコーナーに積まれているのを見かけて驚愕の一言。この漫画、そんなテーマあった!?登場人物がワイワイ飯を作ったり食ったりする話だと思っていたが!?タイムラインで流れてくるエピソードしか知らなかったので、どうやら設定もよく分からんまま見ていたことが発覚。とりあえず気になったので、手に取ってみることに。

作りたい女と食べたい女 1〜2巻 / ゆざきさかおみ

作りたい女と食べたい女が、ずっとWin-Winしている漫画だった。
少食だけど大量の料理を作りたい女と、めちゃくちゃ食べてくれる女が、ひたすらにいろいろなご飯を作ったり食べたりしている感じで、出てくる料理がどれもめちゃくちゃおいしそう!この漫画、お料理する女と食べる女が見たいだけという目的なら十分に楽しめると思う。恋愛ものが好きだというのなら、プラスしてお得って感じかも。

難癖つけるとしたら、古からずっと、現実でも創作でも強調されている『女の呪い』がなんか最近受け付けなくて、そこだけ読み飛ばしてしまった。この漫画が悪いわけではなくて、この設定が目の前に出てくることがトリガーとなって、私の中のあらゆる嫌な実体験を思い出してしまうので、心を無にする方向に防御反応が働いてしまう。こういう呪いって、男の人が見ていて楽しいものなのか、いつも若干気になるのだが、まあ椎名林檎みたいに殿方に向けては描いとらんという話なのかもしれない。絵が綺麗だし、出てくるご飯がとても美味しそうだし、当て馬系の登場人物とか出てこないあたりは安心して見ることができた。

めちゃくちゃ個人的な感想なんだけど、今やこのご時世、普通の恋愛も難易度が高くないか?日本の婚姻率が毎年下がっているし、もうそういう世の中なのでは、と穿った目で見てしまう。シンプルなラブアンドピースは殆どシャングリラなのよ。個人の感想です。

来月に3巻が出るっぽいので、その新刊が出たら、また読んでみようと思う。

読書:読むだけですっきりわかる「やり直しの日本地理」/ 後藤武士

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このようなかなしい事件が起きたため、とりあえず九州を中心に県の位置関係を確認するべく、日本地理系の本を手に取った。地図だけでも十分っちゃ十分なのだが、そもそも日本の地理を覚えたいなんて動機は、私の場合、その周りの歴史とか文化とか興味があるな〜って時にふと思い出して紐づけて喜ぶ要素を増やしたいということなので、地図と本の両方で学習することにした。

読むだけですっきりわかる「やり直しの日本地理」 / 後藤武士

ほぼほぼタイトル通りの内容の本。日本都道府県の大まかな地形、産業、観光資源、山脈・平野等を適度な隙間で教えてくれるので、興味がある場合は、ちゃんと頭に入る良い本でした。さすが、すっきりわかるシリーズで累計360万部売れたと帯に書くだけはある。(権威に弱い)

この本、時代に合わせて改訂を重ねているらしく、現時点で「読むだけですっきりわかる日本地理 令和版」が最新であることに気づいてしまった。まあ……いいか!

本のつくりとしては、北海道から順に南下してみていく構成になっているのだが、鉄は熱いうちに打てともいうので、今一番関心のある九州のページを真っ先に開いた。九州、食べ物が美味しいイメージなんだよな。
そして、名前はよく聞くけれど、地形として把握していない島が九州にはいっぱいある……。壱岐(邪馬台国かもしれないところだっけ?)、屋久島(仮面ライダー響鬼)、種子島(鉄砲伝来)、天草諸島(諸島なのは分からないが、天草四郎時貞・島原の乱あたりだろうと見当がつく)、対馬、五島列島など。

解説を読んでいて気づいたのだが、言われてみれば九州なのに七県しかない。もしかして心の綺麗な人間にしか見えない県が2つもある?この辺り学校で習った時も思ったはずだが、すっかり忘れていたあたり、己の九州に対する興味の無さを自覚させられた。九州なのは旧国名が9つあったなのね、心の綺麗な人間にしか見えない県ではなくて、知識を持っている人にしか見えない県だった。

▼とりあえず、ざっと見てちゃんと位置を覚えた!と思えた3県
・長崎県:ポルトガルと関係があるし、ここは元々覚えていた。対外貿易。南蛮貿易。出島。砂糖がいっぱい入ってきたので甘いもののメッカとなる(九州醤油は甘いというアレには業を感じる)。ポルトガルから入ってきた長崎のカステラ、金平糖。修学旅行先であったが、カステラを買って帰った以外の思い出は特にない。
・熊本県:九州の真ん中にくまモンが鎮座するイメージ、天草諸島がある。
・鹿児島県:薩摩藩はさつまいもの語源、さつまいもの別名は唐芋、唐は中国、だから中国の海側。桜島、種子島、屋久島を抱える。この覚え方だと、薩摩の場所はわかるけど、薩摩=鹿児島と結びつかないかもしれない…。鹿児島は桜島の古地名。ちょっと苦しいか。さつま・かごしま。最後の「ま」揃えで暗記できそう。

▼長崎の関係性で覚えている県
・佐賀県:よく分からんけど、シュガーロードで長崎と繋がりがあるという話だし(サガだけにシュガーなんてなガハハ)、長崎の隣にあるはずでは?

▼位置も名前もはっきりしない県
・福岡県:?
・宮崎県:??
・?:あと1県なんだ?咄嗟に出てこないので考えてしまったが、そうだよ大分県。

改めて地図をみる。そのあと本を読み進める。

・福岡県:本州の山口と若干接触しているのね。北九州。博多。シュガーロードに含まれる県(南蛮貿易の長崎街道は、長崎→佐賀→福岡→本州なのかな?)。かろうじて覚えられる。
・大分県:別府温泉の別府なんだ。四国寄りの方。
・宮崎県:上記6県のどこでもないところ(地図の右側)

興味がないと覚え方が雑で根拠も薄い……!!大丈夫か!?ちょっと自分が心配だが、九州の県の場所はフンワリ覚えることができたので、今日のところはよしとしよう。いずれ興味が湧けばちゃんと覚えるようになるだろうし、その日まで寝かせておくか。

読書:行動を起こし、持続する力-モチベーションの心理学 / 外山美樹

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昨日、行動を起こさず、持続する力を失いつつある自分と戦っていたので、とりあえず読むことにした。タイトル通り、モチベーションの心理学についてあれこれ見解を述べている本なのだが、この手の本は散々読んできた覚えがあるからか、そんなに期待しないで読んでいたんだけど、これは結構面白かったな。

行動を起こし、持続する力-モチベーションの心理学 / 外山美樹

20世紀の半、動物はなぜそれを成そうとするのか?という問いに対し、生きるため・繁殖するためというのがそれまでの定説だったんだけど、アカゲザルでもパズルを知的に楽しむことが分かって以来、それがひっくり返ったことがあったらしい。アカゲザルがパズルを解いても、特に繁殖に有利になるわけでもないし、生きることとはあまり関係がない(飼われている環境だし、人間より知的レベルが生存に直結しない)。だから、生存欲求に基づく動機ではない。外界からの罰や報酬があって、それと紐づいているわけでもない。なら、なぜアカゲザルはこんなにも熱心にパズルを解いているのか?課題に取り組むこと自体が、彼らの内発的報酬、つまり内的なモチベーションになっているのでは?というような説明から始まる。

これだけでも面白いんだけど、うまくパズルが解けたら報酬を与える等をしてみれば、もしかしたらもっとパズルの成績が上がるのでは?と試した結果、モチベーションやパズルの成功率が下がったりしたらしい。古来からの定説である、飴と鞭は効果があるのか?ということに関しては、「飴と鞭は、特に効果が無い(それどころかモチベーションを下げることもある)」ということになる様子。

これは、パズルに取り組むこと自体が、彼らの内発的報酬だったのに、結果に紐付けた「ご褒美」という報酬行為が、内的モチベーション(課題自体が「目的」であり報酬だった)を外的モチベーションに変えてしまった(課題はご褒美という報酬を得るための「手段」に成り下がった)ことが原因と思われる。この飴と鞭は、人間に対しての「褒めて伸ばす」や「叱ってやらせる」のパターンとなることもある。ここで肝となるのが、人間のモチベーションの根底にあると思われる「自律性(自己決定権)への欲求」「自らの有能さへの欲求」の二つ。
誰かを褒めて伸ばそうとした場合は、その誰かの「有能さへの欲求」を刺激することで能力を伸ばそうとする、ということになるのだが、褒める相手に対する信用度がそもそもなかったすると「こいつは褒めることで自分をコントロールしようとしているな」と勘繰って「自律性(自己決定権)への欲求」にダメージが入るので、モチベーションが下がる、みたいなことらしい。メチャクチャ分かる……。

大人が子供を褒めたり叱ったりして伸ばすというのも、確かに手段の一つではあるのだが、モチベーションを外から操作しようとするのは基本的に諦めたほうが良く、当人の自発的なモチベーションに任せ(セルフコントロールが損なわれない状態)、自分はただサポートに徹すると良いということなのかな。
大人になると、子供を簡単にコントロールする方法はいくらでも思いつくので(褒める、叱る、プレッシャーをかける、罰を与える、恥をかかせる)、楽な手段を使ってしまいがちだが、この手の手段は考えて行わないと子供から自律感を奪う。自分がコントロールできないことについては、(アドラーでいう外を変えることは諦める、という意味合いで)「自分ではコントロールできない」という無気力感を学習して、モチベーションが著しく下がってしまう。うまくサポートするには、まず子供から信用される人間であること、その上で自律感を奪わないことが前提となり、ほどよく「有能であることへの欲求」を満たす(「前より成績が上がっているね、勉強時間も増やしたもんね」など、比較を当人の過去と現在に、具体的な方法や努力を褒めて、的確なフィードバックを与える)、と。

私も人生において結構「自律性(自己決定権)への欲求」を重んじるほうなので、めちゃめちゃ納得してしまった。「自らの有能さへの欲求」についても、言われてみればなんとなく分かる。本の中の例えで出てきたように、レベルの低い学校で上位存在でいることについては有能感があるだろうし、レベルの高い学校で下位存在であることは有能感は損なわれる。有能感の有無はモチベーションに結構影響を与える(もちろん、その劣等感をバネにして頑張るという人もいるだろうが、イメージ的には少なさそう)。4月生まれのスポーツ選手が多いのは、小さい頃から体が育ち、スポーツや勉強もでき、他の子と比べても有能感がキープできたから、そのスポーツに対する興味や技能の習得を持ち続けるモチベーションが維持できていたのでは、みたいな話も面白かった。

よし、私も今までの「自律性(自己決定権)への欲求」をキープしつつ、ネットで有能な人を見て己の比較しすぎないよう、「自らの有能さへの欲求」を傷つけないように生きていこう!
発想がもうルサンチマンなのよ。

まずうしをキューにします

水色チェックマークのあるタイトル作品のネタバレを含みます

今日は時間がないなあ……と早々に読書を諦め、ボンヤリしながらツイッターを見ていたところ、以下のようなツイートが見つかる。

確かに……。忙しくても、必ず読書時間は30分取るって人もいるもんな。Twitterを見ている暇があったら読書しろとは言わないが(Twitterは読書と同じくらい高尚なものだが!?たぶん!)、かといって本の1ページを捲ることを諦めてはいかん。とりあえず、新鋭のSF作家・柞刈湯葉先生の新刊『まず牛を球とします』を読んだ。た、短編小説だこれ〜!!!短編小説集で助かった〜〜!!!!(きりよく読み切って、しかも面白かったため、読書欲が回復した)