「2022年11月」の記事一覧

漫画:セレブ漫画家一条さん 1 / garnet

水色チェックマークのあるタイトル作品のネタバレを含みます

元々はTwitterかPixivあたりで流行ったWEB漫画(セレブな女性が漫画家をするコメディ系の漫画)っぽい。Kindleのセールで爆安(98円)だったのがきっかけで目に留まったのだが、どうやらこのセール、百合漫画特集だったっぽいので、一抹の不安を感じる(百合ジャンルに対して合う合わないの差が激しい)のだが…!まあいい、見てみればわかるだろう。ということで、いざ鎌倉!

セレブ漫画家一条さん 1 / garnet

全然大丈夫な方の百合でした。百合要素はそんなになかったし、何より気軽に読めて面白かった。

漫画の設定としては、漫画家兼妙にリアルな経営者視点を持つ美人の社長(22歳)が、ビジネスでは百戦錬磨ではあるものの、漫画家としては連載を持つことができず苦戦している……みたいな、『一見バリバリのキャリアウーマンで近づきづらいが、女性としての可愛さもあり、それが全面に出てくるのが漫画で四苦八苦しているときか、世間からズレていることが発覚したとき』とギャップで殴ってくるタイプのアレ。

別の作品の話になるんだけど、昔『辣韮の皮』という、登場人物全員がオタク活動をする四コマ漫画にもこの手の金持ち創作キャラがいて、「大金持ちのお嬢様が、創作以外の苦しみを金で解決するところが見てえ〜!!」という感想を抱いたことを思い出した。私はこの手の設定が好きなので、それも相まって面白かったな。

例えば、セレブで漫画家の主人公・一条さんが編集者と打ち合わせの最中、編集が「一条さんの漫画に出てくる、この商品の名称は実在するやつなんで、出しちゃまずいやつです」というようなごく普通の指摘を、「(電話で確認したところ)A社の株式は私名義の比率が50%を超えているので、A社の経営権握っている状態です」「じゃあ問題ないですね……」と、ひたすらマネーパワーで捩じ伏せるといったような主人公のセレブ芸が面白かったし、己の金や経営手腕で解決できない創作分野(連載漫画を持つという野望)については、ひたすら苦しんでいるところも良かった。良かった?(大金持ちのお嬢様が、創作以外の苦しみを金で解決するところが見てえ〜!!という欲望が満たせたので)良かったです。

登場人物のメインはこの主人公と編集さん、そしてライバル視をしてきたものの、すぐに懐いてきた女子高生漫画家(天才肌)の女の子の3人。最後の方にアシスタントキャラが追加されたところで1巻が終わり、盛り上がってきたところで、続きの2巻を見るか〜!と勢いに乗ったところ、2巻は出てないことが発覚して泣いてしまった。エ!?2017年の漫画で続きが出ていない!?この漫画のタイトルにも「セレブ漫画家一条さん 1」と、いかにも続きがありそうなナンバリングしているじゃないですか!?なんだろう、何かトラブルがあったのか……!いささか残念だが、続きを期待したい。

漫画:チーズ・イン・ザ・トラップ 1〜10巻 / soonkki

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店の本棚を見てると、めちゃくちゃ分厚い漫画×10巻の幅の勢いがインパクトあって、気になってしまったので手に取ることにした。中身を見てみたところ、左から始まる漫画のスタイルで全ページカラー……これは絶対に韓国の漫画や……と感じて、とりあえず読むことにした。話は逸れるんだけど、韓国のフルカラー漫画文化なに?手間のかけ方が毎回凄まじいのよ。さすがカカオ・ピッコマの国だよ。

チーズ・イン・ザ・トラップ 1〜10巻 / soonkki

物語の内容としては、経営学部に通う大学生の主人公(女)と、その学部の先輩であるところの王子系イケメン、あと多分三角関係の相手として出てくるヤンチャ系のイケメンをメインに、その周辺でとにかく人間関係がグチャグチャになり、それを引き金とした事件もバンバン起きまくる、いい意味でも悪い意味でも常にハラハラさせてくれる、胃が痛むような恋愛漫画となる。

当初こそ「外国の登場人物の名前を覚えられるのか……」と心配していたのだが、舞台は日本、登場人物は全員日本人に置き換わっていた。い、いいのか?絶対、韓国の大学の話だったと思うが?こっちに合わせて貰ってすまんな。

主人公は良くも悪くも真面目で努力家な才女、王子系イケメンは家にも才にも恵まれているが根は陰湿、とまあそんなお互いを見て、お互いに嫌悪感を抱いていたが、表面上は少しずつ打ち解けるようになり……しかし互いに一筋縄では行かない性格で、周囲も放っては置かず……というようなストーリーの流れになると思う。

しかし、そのことよりも、『元々は韓国が舞台の漫画だったが、それを日本に置き換えたことで感じる違和感』みたいなのを作中に見出すことが楽しかった。

例えば、登場する大学生たちの勉強への執念が、明らかに違うんだよな。日本で大学ものだと、レポートに追われつつもキラキラしたスクールライフを送っているような展開が多いような気がするのだが(偏見)、大学生たちは、誰も彼も大学の成績のことに必死になり、大体ギスギスしている。大学受験終わった後も死ぬほど勉強していた。

かと思えば、その割には登場人物たちは休学を選ぶことが多い感じがして、ちょっと不思議に思った。主人公も休学からの復帰というスタートだったし……ということは、おそらく韓国は兵役制度があるから、その関係で休学せざるを得ないため制度が充実しているのかも?ということに気づいたとき、「なるほど!道理で日本とちげえ!」と膝を打った。
そうこうしていると、主人公の親が蕎麦屋を始めた件も「絶対原作じゃ蕎麦屋じゃなかっただろ!原作の韓国版はなんの店だったんだ!?チキンハウスか!?」と気になって仕方がないし、読み終わった後に「しまった、車が左ハンドルだったかチェックするのを忘れた!」ともう一度ページを開くなどして、日本の漫画にはない楽しみ方ができたことが良かったと思う。

もちろんメインのストーリーも良かった。最初のうちは、全然状況が飲み込めないことと(無理やり日本版にした弊害が出ている気がする)、登場人物たちの性根の悪さ、1冊あたり1,000円を超えるという価格が多少こたえたが、後半になるに連れてこれまでの伏線が回収されていく気持ちよさは「さすが、海外に輸出しただけのことはある恋愛漫画」という感想に収まり、よい読後感だった。人間関係がめちゃくちゃになる漫画に耐性がある人ならオススメできる。

漫画:恋する名画 1〜2巻 / みもと

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「恋する名画?恋するワンピース的なやつかな?」などと抜かしながら深く考えずに購入して中身を見たところ、ピカソ『泣く女』、レオナルド・ダ・ヴィンチ『モナ・リザ』などの印象的な名画に因んだシーンが出てくる百合漫画の短編集だった。しまった、私にとって百合は、合う合わないの差が激しいように思えるジャンルなので、試し読みすべきだったか……!とは思ったものの、もう2巻買ったので読むしかないのだ。いざ鎌倉!

恋する名画 1〜2巻 / みもと

最初はほのぼのした短編漫画が多かったので、途中から無警戒でニコニコしながら読んでいたのだが、突然急にR18同人誌見たいなキツいやつとか、古のポンキッキの『学校のコワイうわさ 花子さんがきた!!』に出てきそうなホラー展開とかが出てきて、やや心が折れかけた。綺麗な絵柄とは裏腹に、出てくるキャラクターが性欲と欲望に忠実なの怖すぎるんだが〜〜〜!一瞬心が中学生に戻って「警告なしの強制レや児童殺害は地雷です!」と騒いでしまった。Pixivに群がるベイビーか?ともあれ、私が中学生(未成年)でなくて本当に良かった。

しかしこうやって読んでみると、全体通して「この話に名画のシーンの表現が必要か……?」という不可解さを最後まで解消できなかったのが、返って面白かったかも。私は名画を見るとき、その絵のモチーフであるところの女性に対して、特に性欲とか美しいというような感想を抱かないのだが(画家の時代背景や、その絵に対して後世で見出された価値はなんなのかとかのストーリー性が気になるタイプで、技巧や姿形そのもののには「すごいな〜」くらいしか思わない、美術に関する素養の貧しさが露わなタイプ)、この作者さんの感性はそうではないということだもんな。女性体にエロスを見出せる。絵画などの芸術は、それ自体と、観察するものの対面あって完成するとは聞くが、やっぱり解釈は個々人によって異なるのだろう。誰しも同じ感性ではない、少なくとも私は違う、というのが、この漫画の(異性愛ではないという後ろめたさを持つ登場人物たちの)恋愛にもなんとなく結びついて、そういった意味で結果的には面白がることのできた漫画だったかもしれない。

読んでいくうちに「そういや私が好きな絵画って、風景がメインで、人間を主題にしている絵画が好きってことはそんなに無いかもしれない」と気付けたりしたしな。と思ったが、オタクならみんな大好きなゴーギャンの『我々は〜』と、モネの『散歩、日傘をさす女』は好きかもしれない。どっちだよ。

雑談:漢字を書くって思ったより大事だった、という話

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中学生の時からPCのキーボードをカチャカチャ言わせて文章を作ることを覚え、手書きでメモやノートに考えをまとめるという習慣がないまま大人になってしまい、見本なしではろくに漢字を捻り出すことができないという悲しいモンスターとして育ってしまった我が身を反省して、漢字の書き取りアプリ『毎日漢字』を1年くらいコツコツ続けていたのだが、ついに本日、運良く満点が取れた。(ちなみにこの『毎日漢字』はWEB版もある)

小中学生が書けるような漢字問題ばかりなのに、大の大人が満点を取るまでに1年かかるとか、そんなことあるか……?と本当に恥入るばかりなのだが、開き直って記念として書いておくことにした。

また、この手の学習をやっていて良かったことを以下にメモしておく。

・毎日継続できる学習習慣が一つ増えた。

・字を綺麗に書けるようになった。

・今まで視界に入らなかった小学生向けの国語の本、例えば「漢字のなりたちブック」をなんかを真面目に楽しめるようになった。部首の意味合いを知っておくと格段に書ける幅が広がるし、文脈から部首が推測が可能になり、残りの部分は音の響きで書く等のパズルのような面白さを感じ始めた。

・知っている漢字・読める漢字なのに、なぜか自分からは書けない、という問題に日々直面する。その時はめちゃくちゃ必死に思い出そうとすることでその後の記憶の定着をよくする「検索学習」のことを思い出すし、知っているだけでは知識は生かせない、だからアウトプットは大事なんだ、という当たり前のことに打ちのめされる。

・大人になってから「紙とペンを使って考えを書き出し、整理する」という習慣が身についたのだが、漢字が書けるようになったことで、紙に何かを書くことに躓かなくなった。いつも途中で「えっと、この単語の漢字ってなんだ…?」という一瞬でも指が止まるタイムラグと、「まあいいか、ひらがなで書いちゃえ」という教養のない自分を恥じる気持ちが若干湧いて、これが思考の棚卸し中のノイズになっていた(後から気づいた)。今はこのタイムラグが減ったおかげで、思考を紙に書き出す作業が楽になり、習慣化したし、前より苦手意識が薄れた。(前はPCで打った方が圧倒的に早いし、紙の管理が面倒なので、PCのメモ帳を使っていた)

・正直紙にペンで一文字一文字書くということは、めちゃくちゃ時間がかかるし、現実に反映されるまでのタイムラグにイライラすることもある。でも、記憶やスキルの定着をさせたり、考えを深めようとする際には、私の場合どうしてもアウトプットの時間が必要だということが身に沁みた。このあたりのアウトプットを省略したり、スピードを早く、楽に、軽くできるようにすると、結果的に降りてくる思考も軽し、すぐ忘れてしまう。私が天才だったのなら……!アウトプットは時間の無駄です、と言えたのに……!(真賀田四季か?)

・何事も子供ができるような易しい学習から始めたっていい、大人としての見栄のために虚勢を張らなくてもいいという大事な学びになった。

以上かな。これは別に漢字の書き取りのおかげというよりも、継続して学習したことで得られた何か、という大まかな括りになるとは思うけど、とりあえずは引き続き、漢字の書き取りと英語学習とを頑張っていきたい。

読書:今と未来がわかる 脳と心 / 毛内拡

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表紙を見た時に、「ちくまQブックスっぽいデザインだな〜?」と思って手に取ったら、意外とずっしり重くて「ちくまQブックスじゃない……!」と騙された感を覚えた。誰も騙してないし、この後ちくまQブックスを見たら全然似ていなかったので、ボケが始まったのかもしれない。とてもかなしい。

今と未来がわかる 脳と心 / 毛内拡

ということで、早速読んでみた。脳と心の関係について面白い雑学ブックスだと思っていたら、脳の断面図とか脳の部位の解説とか、めちゃくちゃ人体の画像が出てくるので二重にビックリしてしまった。

この本の章立てと大まかな内容は以下の通り。

はじめに

一番示唆に富んだページ。脳が働く上で最も重要なことは省エネ、従って脳はなるべく物事をパターン化・カテゴリー化して処理を早めようとする。狩りをするときに重要なのは、勝率の高そうなことを反射的に出すことであって、腹を空かせたライオンの前で深い思考をしていては生存率が下がる。ただ、省エネにこだわるが故に、常識や先入観、偏見といった思い込みが助長されて、柔軟さを失うことになる(意訳)というくだりには、そうだよなあ……と思わされた。

(1)脳の構造
・基本的な脳構造の知識。脳の外観や、右脳や左脳、ニューロンやシナプス、領域の役割などについて

この章だけ、ほぼすっ飛ばしてしまった。既存の知識だから飛ばしたとかではなくて、具体的な構造については、素直に興味がない……!まだ1章目なのに大丈夫か?と自分を心配してしまったが、結論から言えば、これ以降の章は大丈夫だった(面白い)。

(2)脳と体
・五感や脊髄反射、満腹中枢や平衡感覚といった身体に影響するメカニズム

舌の味蕾で感じた情報は脳で処理されて感じる(舌の部位の解説イラストあり)、という、いかにもつまらなさそうな解説ページが、私にはとても面白かったのが驚きだった。喉の奥側の舌には、確かにイボイボある!そして舌先の方は味蕾の数が少なくて、喉に近い方の味蕾は数が多いのかー。そうすると、美味しいものを咀嚼していても、「美味しい!」と感じている状態をすぐに破棄する(口にものが無くなれば快楽は感じなくなるのに、なぜ人はこんなにも簡単に飲み込み、また次へ次へと食べようとするのか?という理屈がいまいちわかってなかった)のは、もっと美味しく感じる部位が、飲み込もうとしないと届かない位置にあるからなのかな?そして、咀嚼すればするほど噛みごたえなどの感覚の鮮度が失われていくからという事情もある?と自分なりの仮説を立てられたりして、一人はしゃいでしまった。

(3)脳と言語・記憶
・言語の獲得と発達について、記憶の残り方、記憶力の容量と減退する仕組みについて

長期記憶・短期記憶、ワーキングメモリなどは1000万回くらい本で見たことがある知識なのだが、この辺りについての話は不思議と飽きない。多分、日課の漢字の書き取りなどで自問自答することがあるから、より強く興味を感じているのかも。どうやればこの記憶に深く刻むことができるのかについて、「言語化せずとも体で覚える『手続き記憶』が、他のものと比べて比較的長期に渡って記憶に残ることを考えれば、やっぱ学習する際にはアウトプット戦略を取るしかないか、でも面倒だなあ〜!」など、歯噛みしながら面白く読んだ。

(4)脳と生命機能調整
・ストレスが脳へ与えるダメージやその影響について、交感神経・副交感神経、活動に関するパターンについて

全体的にうっすらした知識があり、そこまで興味が湧かないため、読みよばしをしてしまった章。

(5)脳と情動
・感情やドーパミン、性欲や報酬系など、情動を司どる機能についての話

読みよばしをしてしまった章その2。これも多分、既存の知識ではドーパミンが放出されないとかそういう話なんだろうな。

(6)脳の一生
・脳の育ち方・スキルの習得の仕方から、それぞれの脳機能のピーク、そして衰えることで何ができなくなるかなど

右脳左脳や男脳女脳って、小さい頃は、なんでか信じられなかったなあ。多分、娯楽本を見て覚えて、しかし出典が出典だから「本当にそんなに性能に差なんてあるのか〜?」と疑っている状態のまま、正しい知識を見たことがなったからだと思う、と考えながら読んだら、「右脳左脳は、確かに各々の役割がある(これは知っていた)」「男脳・女脳という明確な区分はない。最初は誰しも女脳が作られ、その後男性ホルモンの濃度によって、グラデーションの濃淡ができる」らしい。母体にストレスがかかると、この男性ホルモンの分泌が悪くなって、胎児の男性化に支障をきたす可能性があるとのこと。へえ〜。一夫多妻制の第二夫人以降は女児を産む傾向があるって、こういうのが関係するのかも。(ノー根拠)

(7)脳と心の病
・アルツハイマー、脳卒中、AHDH、薬物依存その他諸々の、脳と心が関わる病について

現在時点では、特に該当する病にかかっている自覚がないので、流し読みした。でも、何かしらの快楽を与える物質や現象に人間が依存してしまう傾向は、美味しい食事やガチャでなんとなく自分自身も身に覚えがあるので、セーブかけなきゃな……と感じた。

(8)脳研究の歴史と未来
・脳研究の始まり、AIへの応用、人工脳の誕生、冬眠技術など

SF小説でよく見るやつだな〜と思いながら見ていたら、人工脳の誕生!?SFならともかく、現実社会では初めて聞いたが!?倫理的な承認の得ている分野だっけ?と今日イチ困惑しながら読んでいたら、「人工脳が次々と誕生!」みたいな言葉が出てくるので二度見した。倫理観とのバランスは図らなくてはならないけれど、一応、その研究の重要さで進んではいる分野なのね。

以上。読み応えのあるビジュアル図鑑でした。