漫画:チーズ・イン・ザ・トラップ 1〜10巻 / soonkki
店の本棚を見てると、めちゃくちゃ分厚い漫画×10巻の幅の勢いがインパクトあって、気になってしまったので手に取ることにした。中身を見てみたところ、左から始まる漫画のスタイルで全ページカラー……これは絶対に韓国の漫画や……と感じて、とりあえず読むことにした。話は逸れるんだけど、韓国のフルカラー漫画文化なに?手間のかけ方が毎回凄まじいのよ。さすがカカオ・ピッコマの国だよ。
物語の内容としては、経営学部に通う大学生の主人公(女)と、その学部の先輩であるところの王子系イケメン、あと多分三角関係の相手として出てくるヤンチャ系のイケメンをメインに、その周辺でとにかく人間関係がグチャグチャになり、それを引き金とした事件もバンバン起きまくる、いい意味でも悪い意味でも常にハラハラさせてくれる、胃が痛むような恋愛漫画となる。
当初こそ「外国の登場人物の名前を覚えられるのか……」と心配していたのだが、舞台は日本、登場人物は全員日本人に置き換わっていた。い、いいのか?絶対、韓国の大学の話だったと思うが?こっちに合わせて貰ってすまんな。
主人公は良くも悪くも真面目で努力家な才女、王子系イケメンは家にも才にも恵まれているが根は陰湿、とまあそんなお互いを見て、お互いに嫌悪感を抱いていたが、表面上は少しずつ打ち解けるようになり……しかし互いに一筋縄では行かない性格で、周囲も放っては置かず……というようなストーリーの流れになると思う。
しかし、そのことよりも、『元々は韓国が舞台の漫画だったが、それを日本に置き換えたことで感じる違和感』みたいなのを作中に見出すことが楽しかった。
例えば、登場する大学生たちの勉強への執念が、明らかに違うんだよな。日本で大学ものだと、レポートに追われつつもキラキラしたスクールライフを送っているような展開が多いような気がするのだが(偏見)、大学生たちは、誰も彼も大学の成績のことに必死になり、大体ギスギスしている。大学受験終わった後も死ぬほど勉強していた。
かと思えば、その割には登場人物たちは休学を選ぶことが多い感じがして、ちょっと不思議に思った。主人公も休学からの復帰というスタートだったし……ということは、おそらく韓国は兵役制度があるから、その関係で休学せざるを得ないため制度が充実しているのかも?ということに気づいたとき、「なるほど!道理で日本とちげえ!」と膝を打った。
そうこうしていると、主人公の親が蕎麦屋を始めた件も「絶対原作じゃ蕎麦屋じゃなかっただろ!原作の韓国版はなんの店だったんだ!?チキンハウスか!?」と気になって仕方がないし、読み終わった後に「しまった、車が左ハンドルだったかチェックするのを忘れた!」ともう一度ページを開くなどして、日本の漫画にはない楽しみ方ができたことが良かったと思う。
もちろんメインのストーリーも良かった。最初のうちは、全然状況が飲み込めないことと(無理やり日本版にした弊害が出ている気がする)、登場人物たちの性根の悪さ、1冊あたり1,000円を超えるという価格が多少こたえたが、後半になるに連れてこれまでの伏線が回収されていく気持ちよさは「さすが、海外に輸出しただけのことはある恋愛漫画」という感想に収まり、よい読後感だった。人間関係がめちゃくちゃになる漫画に耐性がある人ならオススメできる。