水色チェックマークのあるタイトル作品のネタバレを含みます
タイトルを見た時に、要するにブログのタイトルは何っていうような話かな?と面白く感じて手に取った。何気なく帯やカバーのテキストを見ていたら、『「言葉にできる」は武器になる』の著者さんの新刊だと知り、なるほど言語化の本かと気軽に読み始めてみたのだが、これまた読み終わるのに3週間かかった。ワークショップ的なアレが挟まると、私はページをめくる手を止めがち……!ワークショップ的な本を読むのが本当に苦手で、大体志なかばで終わる中、今回はちゃんと読み終えられたことに自分でもホッとしとる。
きみの人生に作戦名を。/ 梅田悟司
梅田悟司 日経BP 日本経済新聞出版 2022年10月26日頃
私は個人事業主なので屋号があり、またブログサイトをやっているのでサイト名があり、と、自分が展開しているものに何らかの名称をつけることには慣れているのだが、その対象を自分自身の人生にスケールアップした提案なのだと思う。
世の中、自分自身やりたいことを最初から明確にし、行動をもって貫き通している人は稀で、他人からみた客観的な「あなた」の人生は、一貫性がないものなのかもしれない。しかし、自分自身からみた主観的に「あなた」の信念は、一貫性があるものなのではないか?という提起から始まり、その内面を掘り下げて価値観を言語化・明確にして、過去から未来までに至る点と点を「きっかけ」「経験」「学び」でつなぎ、コネクティング・ザ・ドッツであることを明示してみよう。そして、見つけた自分の信念や価値観を、自分の行動指針として作戦名として言葉にし、その指針と共に人生を活きることを決意しよう……みたいなことかな?(曖昧な理解)
提案された『9マス思考法』というのは正直半分くらい読み飛ばしてしまったのだが、コピーライターさんならではの視点で、「何をしたいのか分からないということは、解像度の高い言語化ができていない。言葉だけが足りていない」という話が一番面白かった。内なる思いはあるが、それを外に出すため、または明確にするためには、繰り返し言語化する必要がある。そうでないと、他人からの「あなたが大事にしている価値観って何ですか?」というような問いにも、自分からの同様の問いにも、うまく答えられないからだ。そして、うまく答えられない=自分にはそのような考えがない、という判定を下してしまうことが多い。咄嗟に言語化できるほど明確になっていないだけで、たとえば友人との飲みでの会話が弾んで「今咄嗟にこんなふうに考えを答えたけど、こんな価値観が自分の中にあったんだ」と言ったように腑に落ちることもあるだろう。未加工のままの価値観を内包し続けることもできるが、それらを言葉として磨き、加工された言葉は、人の認識そのものなのである。より明確に認識できるようになった価値観は、行動を生む。そして言葉が行動を先鋭化し、行動が言葉を先鋭化する。このサイクルを加速させるのが「作戦名」なのだ、みたいなことだと思う。
これを読んで思ったことは、大まかに以下の通り。
・森博嗣先生の「本のタイトルを考えるに多くの時間を費やすが、決まってしまえばあとは書ける」みたいなもんか……。
・本の中にあった「誰もが事業を言い当てる言葉を探している」という文章、これは「誰もが人生の意味を探している」に似ているなと思った。これが人生の『意味』だとするには、その意味について、価値観を明確にし、言語化する必要があるなという意味で。
・私は考えをまとめたいとき、紙とペンを使って思考を三次元に棚卸しする癖があるので、この手の本の主張は大体賛同できるなあと思った。ただ、著者の方が社会人をやっていた時の経験ベースの主張だったので、全然しっくり来ない時もあった。自分の経験ベースで書く本の良し悪しはここかもしれない。
・基本的に、経済と人生は移動が本質だと思っている口なのだが、移動をするには「何らかの目的がそこにあると思われること」が前提だと思うが、移動するためには余白がないとできないよなあ、ということを改めて考えるなどした。
・情報過多と言われる世の中で、何でも手広く手をつけてしまいたくなるけれど、まずは自分が持っているものの整理から終わらせることを始めるということは、いいかもしれない。自分のやっていること一つ一つを掘り下げてないから、よく分からんまま次へ次へと外の無限の領域に身を投じてしまうことは、よくある。
・紙に思考を書き下ろしているとき、内部から外部へアウトプットしているつもりになっているが、それはもしかしたら逆で、外部から内部へ、整理した情報を自分に刻みつけるための作業なのかも。
・頭だけで大事なことを覚えておくことは難しい。覚えられないのはそこまで大事なことではないから、というわけではない。大事なことでも、人は忘れていく。だから、大事なことを覚えておきたいのであれば、より言語化し、明確化し、何かに残すことなのかもしれない。
以上。面白い本でした。
梅田悟司 日経BP 日本経済新聞出版 2022年10月26日頃