読書:レンタルなんもしない人のなんもしなかった話 / レンタルなんもしない人
その辺に積まれていたのを見かけ、「そういえば昔、このレンタルなんもしない人、Twitterとかで流行っていたような……?」とうろ覚えの知識のまま手に取った。そしてしばらくの日が過ぎた。(あるある)
交通費実費を条件に、何もしないが、その場に在ることはできる人をレンタルできるらしい。これを聞いた時、思わず「人間は一番安くすむ機械ですものね」と漏らしてしまった(真賀田四季風)。この本は、そのレンタルなんもしない人の仕事を綴ったエッセイ的な本である。この「何もしない」という縛りでどんな依頼をされるのか興味本位で見てみた。
よくある依頼としては、「ラーメン屋に並んでほしい」「男一人or女一人で入りづらいところに一緒に来てほしい」「喫茶店に一緒に行って愚痴を聞いてほしい」「一人だと無限にTwitterしちゃうので勉強する僕の隣に居ててください」「ライブに空席作りたくないので一緒に来てくれませんか?」「コラボカフェの数合わせに来てほしい」「僕の裁判の傍聴席に来てください」など、そういうものだったのだが、次第に「出たくない結婚式があるので、レンタルなんもしない人との約束があるってことにしてください、そして当日ドタキャンしてください」など、途中からレンタルする側も使い方が分かってきたのか、レンタルする側の一方的な創意工夫が見られていくようになる。これが面白い。
たとえば、人を殺して少年院に入っていたことがある・オウム真理教に入っていたがいい思い出ばかりだった等、知人友人に話せないことを誰かに話すと言った懺悔室としての使われ方や、薬物の大量摂取による自殺未遂で入院した閉鎖病棟への見舞い(コード類が持ち込めず電化製品が使えないのでヒマらしい)などなど。こういう需要は結構あるようで、1日に数件は途切れることなく依頼が来ている感じである。特に、人に言いづらい話の相手になってほしい(人間関係や金銭を介して相談すると「よし私がなんとかしてやろう」的に何かしらの爪痕を残そうと余計なことをされ、それが相談する側・される側の上下関係を産み、居た堪れなくなるから)というのは、なるほどなあ、なるほどなあ……としみじみ頷いてしまった。(私がよしなんとかしてやろうタイプの人間なので反省もした)
最後の方は「誰かに奢りたいが、家族となると全員が対象になって出費が嵩むし」みたいな悩みへのアンサーとして『アマギフ5000円を送りつけられる人』としてのポジションを獲得したり、テレビ番組の「アウト×デラックス」や「スッキリ!!」に出演を打診されたり等、何もしないってすごい立ち位置見つけたなと感じた。なんかこの本の続編が出てるっぽいので、また機会があったら手に取りたい。
今もこんな感じでやっているらしい。ソウルにまで飛んでくれるの!?!?!?