サウダージってポルトガル語なんだ?
水色チェックマークのあるタイトル作品のネタバレを含みます
ポルトガル 朝、昼、晩。 / ムラマツ エリコ、なかがわ みどり
いい感じのポルトガル関連の本ないかな〜と思って探したところ、Kindle Unlimitedでポルトガル旅行記を見つけた。Kindle Unlimitedは色んな意味でコスパ良すぎるんだよな。いつも大変お世話になっております。
ポルトガルの首都リスボンや、ポートワインで有名なポルトはそこそこに、聞いたこともないようなポルトガルのマイナー地方で2週間滞在した著者の二人(イラストレーター)の旅行記なのだが、やっぱこの時代(2002年)の旅行記特有のノリがあるな。昔、女優の中谷美紀の旅行記を見た時も思ったのだが、日本に住む私から見ると「海外ってよくわからんアクシンデント多すぎでは?」「現地の人に態度の悪い対応をされて反射的に性格が悪くなる負のスパイラルだ……」「しかしたくましさは身に付いていく」「日本人蔑視してくるタイプに鉢合せすぎじゃない?ヨーロッパ圏は内心見下すのがデフォルトなのか?」となる。やっぱこの手の旅行記って、万事が万事ハッピー旅行記とはならんのだよなあ。しかしそれを含めても文化や景観、何かしらの大きな魅力が、旅行にはあるのだろうな。この本はイラストレーターの二人組が描いた本だけあって、可愛らしいイラストで、しかし現地であったことはシビアに描かれていく。朝、昼、晩と極力ポルトガルの生活を取り入れることで(現地のスーパーで買い物して料理してみたりとか)見えてくる生活を知るのは楽しい。大きなバルコニーで一望する街と夕暮れの眺めとか羨ましいなあ。ポルトガルの歴史みたいなものは全く分からなかったが、サクッと読めた本だった。
k.m.p./なかがわみどり メディアファクトリー 2002年07月
生き物が老いるということ – 死と長寿の進化論 / 稲垣栄洋
静岡大学の教授の方の本。植物学専攻だったかな。サブタイに進化論という単語があったので、学術的な話かなと思いきや著者の思想が見えるエッセイ調の本だった。内容自体はまあ、知っていることが大半だな、と思いはしたものの、改めて言語化されたものを読むと「そうかも!」と思えるような話もあり、概ね面白かった。たまに「先生との価値観が合わねえ!」となる箇所もあったりはしたのだが。以下メモ。
・大体の生物は、老いる前に死ぬ。老いて寿命で死ぬということは、現代の人間が獲得した技術とも言える。(人間と共存する生物にも老いは与えられる)
・人間は「おばあちゃん」という戦略を取った。閉経して繁殖を行えなくなった生物を生かしておくリソースを獲得した人間は、その戦略で子孫の子育てを支援することで生存率を上げることができるようになった。
・王子が乗るような白馬の馬は、大体葦毛の馬の毛が白髪になったものである(純粋な馬のアルビノは珍しい)。高貴な王子は老いた経験豊かな馬に乗っているのだ。へえ〜!白馬の王子様の馬に着目したことはなかったので、面白い。
以上かな。
やっぱ、人間が日々新陳代謝を繰り返して、古くなった皮膚は剥がれ、新しい皮膚が下から生まれてくるように、個人個人の死というものは、人間という種族の新陳代謝の一環とも言えるんだろうな。古い細胞が生き続けることは、それだけ突然変異を起こしやすくなって癌を誘発したり、単純にエラーが蓄積したりする。その古い状態になったものが繁殖で自分のコピーを作ると、古い状態ごとコピーされる。それは後々のためにも好ましくないから(秘伝のタレみたいなのにずっと継ぎ足ししていくので)、閉経で繁殖ができないようにするのだろうし、若い状態を繁殖の時期の基準とするのも分かる。そういうシステムが生物のベースだとした上で、しかし、老いることを獲得できた人間は、それすらも何とか正しく使おうと理由を考えてしまう。著者が例えに挙げたのは稲穂だった。稲は、中の米がみっしりと実ってこそうまい食物となる。熟してこそ食い甲斐があるものになる果実もそう。「実ほど頭を垂れる稲穂かな」という諺ではないが、まあ、人間が独自に習得できた進化の一つが老いであるのならば、そこまで老いを悪いように考えないようにはしていきたい。自分の死生観について改めて認識させてくれる本でした。
稲垣 栄洋 中央公論新社 2022年06月09日頃