「2022年9月」の記事一覧

読書:天冥の標Ⅰ メニー・メニー・シープ(下) / 小川一水

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前回、上巻を読んだので、その続きとして下巻を読んだ。なんか、確か資源に乏しい星から脱出したいお偉いさんたちがどうのこうのという話だった気がする。うろ覚え。

▼前回

ありったけの夢をかき集めありったけの夢をかき集め

天冥の標Ⅰ メニー・メニー・シープ(下) / 小川一水

う、ウーン!こんなところで発言することではないのだが、エロの趣味が合わねえ……!いや、大事なことだな。エロを含めた、この物語の展開から嗅ぎ取れる作者の性癖と私の性癖が合わない。SF小説に何を求めているんだ私は、と思わないでもないが、そのフェチから構成されたキャラクターがメインを張っていることが多いっぽいので、最終的にはメインの登場人物の性格や振る舞いが合う合わないみたいな話になってくる気がヒシヒシとしている。上下巻2冊も読めば、それなりに感情移入したくなるキャラクターや注目して追っていきたいキャラクターとか出来るもんだけど、今回はマジで特にそういう登場人物がいなかった。ということは、今後も望めないかもしれない。このSF小説は全17巻のシリーズっぽいので、これは致命的かもしれない……と思い、もうネタバレ覚悟でwikiを漁ってみたところ、お!?次の話は、未来ではなくて現代に戻るの?これは掌返しで読みたくなってきたな。とりあえず、ちょっと日を置いてから、改めて追いかけるか。

1回休憩

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「加速思考」症候群 心をバグらせる現代病 / アウグスト・クリ

老若男女問わず常にながらスマホ、映画やアニメ・解説動画を倍速で見る人も増えた、このご時世。私も常に「何かしらコンテンツを摂取しなければ…」みたいな悪い呪いに取り憑かれている自覚があるんだよな。耳でラジオを聴きながら家事をこなし、風呂の湯を溜めている間にYoutubeを見、散歩の時はKindle本をSiriに読み上げて貰い、寝る前にうとうとしながら本を読む。完全に頭の悪い奴のパターンだなこれ、ショーペンハウアー先生だって多分そういう判断を下すと思う。他人の考えを感心しながら聞いているだけでは自分で考えたことにはならんのよ。こういうのってやっぱ現代病に入るのかな?静かさ、孤独、思考、人間にはそれが必要なはずよ!あと1時間くらいは、家でじっとすることに耐えられるようにならないと…と反省する毎日を過ごしていた時に見つけた本。

本の内容としては『急速にデジタル化が進み、情報過多に追われ、落ち着きはなくなり、ストレスを抱え、脳は休まることなく、思考だけが加速し続ける現代。この加速思考症候群とも呼べる現代病の深刻さに、我々はどう対応したら良いのか?』的な、今の私にドンピシャな本だとは思うんだけど、思うんだが、やべえ。なんか内容が全く頭に入ってこないし、ピンともこない。こんなことある!?帯曰くブラジルで120万部売れた本が!?ま、まあでも、たくさん売れた本が読みやすいとは限らないもんな。ちょっと日を置いてみるか。一旦、今日の読書はここまでとします。

ぜんぜん関係ないけど、帯曰くブラジルで売れた本ってことは、原著はブラジルポルトガル語とやら?また出会ったな、ポルトガル。そこだけニッコリしてしまった。

読書:ポルトガル菓子図鑑 お菓子の由来と作り方

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Twitterでつぶやく時、「▼トピック、・」と打つのが面倒になってしまった。(諦念)

ポルトガル菓子図鑑 お菓子の由来と作り方:ルーツは修道院。知っておきたいポルトガル菓子101選 / ドゥアルテ智子

この間読んだ、ポルトガル滞在記に出てくるデザートが美味しそうだったので、なんとなく手に取った。あと、ポルトガルから長崎に伝来した菓子類って結構あったんちゃうかったかな、と興味が湧いた。ポルトガルからやってきた菓子で、パッと思いつくのはカステラかなあ。昔、お笑いコンビのロンドンブーツ1号2号が「ポルトガル人が〜長崎へ〜カステラカステラカステラカステラ…明月堂のカステラ〜」みたいなCMソングを口ずさんでいたのを覚えている。なんでそんなことばかりを覚えている?

ともあれ、ポルトガルのお菓子の図鑑を開き、お菓子の写真・紹介・レシピが見開きに収まったページを1枚1枚捲っていった訳だが、素朴なお菓子が多い印象があるな。基本は卵と牛乳と大量の砂糖。ビスコット、トウモロコシ粉、ナッツ、メレンゲの何か、カスタード等々。甘さとコク。古き良き、伝統のお菓子文化こそがポルトガル菓子!という感じで派手な感じの菓子があまり見当たらなくて、修道院ゆかりのお菓子が多いっぽい。

図鑑の解説曰く、ポルトガルは9割がカトリック教徒で、キリスト教にまつわる菓子が多いとのこと。かのスペインの隣国だもんなあ、それはカトリック一強になるよな。だから修道女が開発した菓子レシピが多くて、素朴な印象のものが多いのか。まあカトリックが質素か〜?と言われるとちょっと違う気もするが、さほど材料や技術が発達していなかった時代のものを継承しとんのかなと。また、修道院は古くには王族貴族が国内旅行をする際の宿泊施設としての役割があり、高貴な人へのもてなしとして、貴重な砂糖を大量に使った菓子作りが発達したとのこと。時代が進むにつれて、修道院に権力が集中することを恐れた王が修道院廃止令を施行され、収入源を失った修道院は、市民にお菓子やレシピを売ったりして広まった、とあり、納得が行った。あと、スペイン統治下になったり、財政基盤が貧弱だったりのゴタゴタで、普通に工業化全般が遅れており、それが手作り菓子の文化を残すのに逆に良い環境になったっぽい記述がある。そんなことある?

気になっていた日本へ伝来された南蛮菓子のルーツだが、一六タルト、カステラ、カスドース、かせいた、鶏卵素麺、金平糖、丸ぼうろが紹介されていた。お!?さすがカステラを教えてくれた国、丸ぼうろ(ボーロ)もラインナップにある。言われてみれば、砂糖と小麦粉をバンバン使うのは日本古来の菓子ではないよなあ。そういう意味では、ポルトガルに影響を受けた、砂糖と小麦粉をバンバン使う菓子が多くなっていくきっかけとなったのは、ポルトガルなのかも。ポルトガルは植民地政策によるプランテーションで砂糖を多く交易商品として持っていたから、日本の貿易拠点の九州側では甘いものが流通して〜みたいな流れだとは思うが、もしかして九州で甘い醤油がメジャーになったのもそういう理由なのでは?「砂糖は高価なものだが、俺たちは…使える!」ってコト!?また、「コンフェイトシュ。来た!金平糖の原型!」と思っていたら、ご本家では白くてゴツゴツした砂糖菓子のようだった。我々の知っている半透明の金平糖は、どうやら日本人が魔改造したものらしい。いつもすみませんね、日本人が……。ちょっとびっくりしたのは、米系のスイーツが結構あること。カスタードで煮た米とか。米ケーキとか。

興味がある国のレシピ見るのって楽しいよなあ。そろそろちゃんとしたポルトガル史の本にも手をつけてみるか。

性の対象は季語に入りますか?

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大人になるまでに読みたい15歳の短歌・俳句・川柳(1)愛と恋

15歳の倍以上の歳を取っているが、ようやく短歌に興味を持ち始めたので手に取った。手に取った後に気づいたんだけど、サブタイが『愛と恋』だった。15歳の……愛と……恋!

鞦韆は漕ぐべし愛は奪ふべし

三橋 鷹女(みつはし たかじょ、1899年12月24日 – 1972年4月7日)、千葉県出身の俳人

鞦韆(しゅうせん)ってなんだ…!?いきなり困惑してしまったが、解説を見たらブランコのことで、春の季語とのこと。ブランコって季語になるんだ?それも鞦に秋ってあるのに春の季語とは一体?でも、「〜べし、〜べし」の勢いが良くていいな。愛は奪うべしのインパクトもよし。そしてよく見たらこの本の句、15歳以下の人が読んだものじゃないな。恋とか愛とかの句を並べるから、大人になるまでに一度読んでおいてくれということか。

こういった歌集は一気に読むものではないという偏見が私にあるため、少しずつ読んでいる。下句に「性の対象」とか「しめる友の首」とか、たまにアンブッシュが来るので、面白い。

サウダージってポルトガル語なんだ?

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ポルトガル 朝、昼、晩。 / ムラマツ エリコ、なかがわ みどり

いい感じのポルトガル関連の本ないかな〜と思って探したところ、Kindle Unlimitedでポルトガル旅行記を見つけた。Kindle Unlimitedは色んな意味でコスパ良すぎるんだよな。いつも大変お世話になっております。

ポルトガルの首都リスボンや、ポートワインで有名なポルトはそこそこに、聞いたこともないようなポルトガルのマイナー地方で2週間滞在した著者の二人(イラストレーター)の旅行記なのだが、やっぱこの時代(2002年)の旅行記特有のノリがあるな。昔、女優の中谷美紀の旅行記を見た時も思ったのだが、日本に住む私から見ると「海外ってよくわからんアクシンデント多すぎでは?」「現地の人に態度の悪い対応をされて反射的に性格が悪くなる負のスパイラルだ……」「しかしたくましさは身に付いていく」「日本人蔑視してくるタイプに鉢合せすぎじゃない?ヨーロッパ圏は内心見下すのがデフォルトなのか?」となる。やっぱこの手の旅行記って、万事が万事ハッピー旅行記とはならんのだよなあ。しかしそれを含めても文化や景観、何かしらの大きな魅力が、旅行にはあるのだろうな。この本はイラストレーターの二人組が描いた本だけあって、可愛らしいイラストで、しかし現地であったことはシビアに描かれていく。朝、昼、晩と極力ポルトガルの生活を取り入れることで(現地のスーパーで買い物して料理してみたりとか)見えてくる生活を知るのは楽しい。大きなバルコニーで一望する街と夕暮れの眺めとか羨ましいなあ。ポルトガルの歴史みたいなものは全く分からなかったが、サクッと読めた本だった。

生き物が老いるということ – 死と長寿の進化論 / 稲垣栄洋

静岡大学の教授の方の本。植物学専攻だったかな。サブタイに進化論という単語があったので、学術的な話かなと思いきや著者の思想が見えるエッセイ調の本だった。内容自体はまあ、知っていることが大半だな、と思いはしたものの、改めて言語化されたものを読むと「そうかも!」と思えるような話もあり、概ね面白かった。たまに「先生との価値観が合わねえ!」となる箇所もあったりはしたのだが。以下メモ。

・大体の生物は、老いる前に死ぬ。老いて寿命で死ぬということは、現代の人間が獲得した技術とも言える。(人間と共存する生物にも老いは与えられる)

・人間は「おばあちゃん」という戦略を取った。閉経して繁殖を行えなくなった生物を生かしておくリソースを獲得した人間は、その戦略で子孫の子育てを支援することで生存率を上げることができるようになった。

・王子が乗るような白馬の馬は、大体葦毛の馬の毛が白髪になったものである(純粋な馬のアルビノは珍しい)。高貴な王子は老いた経験豊かな馬に乗っているのだ。へえ〜!白馬の王子様の馬に着目したことはなかったので、面白い。

以上かな。

やっぱ、人間が日々新陳代謝を繰り返して、古くなった皮膚は剥がれ、新しい皮膚が下から生まれてくるように、個人個人の死というものは、人間という種族の新陳代謝の一環とも言えるんだろうな。古い細胞が生き続けることは、それだけ突然変異を起こしやすくなって癌を誘発したり、単純にエラーが蓄積したりする。その古い状態になったものが繁殖で自分のコピーを作ると、古い状態ごとコピーされる。それは後々のためにも好ましくないから(秘伝のタレみたいなのにずっと継ぎ足ししていくので)、閉経で繁殖ができないようにするのだろうし、若い状態を繁殖の時期の基準とするのも分かる。そういうシステムが生物のベースだとした上で、しかし、老いることを獲得できた人間は、それすらも何とか正しく使おうと理由を考えてしまう。著者が例えに挙げたのは稲穂だった。稲は、中の米がみっしりと実ってこそうまい食物となる。熟してこそ食い甲斐があるものになる果実もそう。「実ほど頭を垂れる稲穂かな」という諺ではないが、まあ、人間が独自に習得できた進化の一つが老いであるのならば、そこまで老いを悪いように考えないようにはしていきたい。自分の死生観について改めて認識させてくれる本でした。