「2022年9月」の記事一覧

読書:面白くて眠れなくなる地学 / 左巻健男

水色チェックマークのあるタイトル作品のネタバレを含みます

最近、地理に興味が出てきたので手に取った本。
人生で地理に興味が出てくることなんてあるんだ…世界史がなんとなくわかってきた結果、世界地図を見ることも面白くなるなんていう日が来るという想定は今までなかったのだが、まあ興味があるうちに初心者向けのものから見て勢いをつけようという魂胆である。

面白くて眠れなくなる地学 / 左巻健男

・アトランティスの存在について言い出したのはプラトン。そのアトランティスを発見したと主張したのは、かのトロイアの遺跡を発見したシュリーマンの孫であるらしい。シュリーマンの名前は聴き終えあるな〜と思っていたら、確か日本にも来たことがある人で、アジア旅行記みたいなの残してなかった?孫も似たようなことやってんだな、と思ったら、シュリーマンと違って孫はだいぶアレだったらしい。とりあえず、地質学的には、大西洋にアトランティスが存在したと言える痕跡はないとのこと。

・超大陸パンゲア。元々大陸は一つだった。プレートテクトニクス論で補強されたのね。この本を見ながらGoogle Earthで日本のプレートも見てみたんだけど、こんなの怖すぎんか?こんなズレの隙間にぎゅうぎゅうにプレートを詰められたら、地震なんて起きるに決まってるんだよな。

・山の出来かたは大まかに2種。火山の噴火でできるタイプ(例:富士山)、地面にしわがよってできるタイプ(例:日本で2番目に高い山、北岳)。なんとなくなんだけど、地面にしわが寄ってできるタイプは、崖があったり、上下の高低差が激しい地形が多そうで、登山家の漫画『孤高の人』の主人公が、日本一高い富士山より2番目に高い北岳を攻めていたのはこういう理由なのかも!と今になって納得してしまった。

・磁石のS極、N極の話。地球を大きな磁石として捉えたとき、北(North)がN極、南(South)がS極であろうと思い込んで疑っていなかったのだが、実際のところ現在は、「N極が南」「S極は北」とのこと。そんなことある!?!?じゃあSとNはなんの略だよ!?紛らわしいなあ!と思っていたら、そもそも地球の磁極は反転することがあるらしい。77万年前にひっくり返ったり、258万年くらいに更にひっくり返ったりしていたというのが地層の状況で分かったとのこと。これが一番びっくりした話かもしれない。

・スノーボールアース仮説。これは有名なやつだ!解説動画で見たことがある。過去に地球の平均温度が−40度になったことがあるってやつね。なぜ地球が全て凍りついたのかは原因が特定できないようだけど、その地球が凍りついた状態から温暖な気候に戻るまでに発揮した温室効果ガスの効力というか、そういうものが少しは理解できるようになる話だった。あとは、やっぱ極端に寒くなると生物は絶滅期に入るが、同時に環境の変化は強力なターニングポイントにもなる傾向にある、というのも面白かった。これはこの本の話にはないのだが、恐竜は人間史よりも長く種として生きていたが、人間ほどの知能を持たなかった。温暖な気候だと植物が繁栄し、食糧に困らなくなるので、知能をあげずとも生きていける。しかし、寒くなると食糧の取得が困難になってゆき、生きるための工夫や、食い扶持を減らすための同種の間引きが必要になっていき、それが人間が知恵をつける要因の一つになったのではないかという話もあったような気もする。面白い。

・最後の方に、火星のテラフォーミングについての話も出てきた。「Surviving Mars」という火星テラフォーミングゲームに熱中していた時期があり、楽しく読めたのだが、やっぱ色々現実的ではなさそうだなあ。火星をテラフォーミングして移住してみよっか!みたいなのは、大体地球の資源が枯渇するとか環境が悪化するとか、そういうのが主な要因となると思うのだが(人口爆発の可能性はもう無くなってきたしな)、その上でどえらい量の地球資源を使って火星を開発する前に、まだやることがあるのでは…‥火星調査の人間がいくのはいいが……みたいな空想に時間を使ってしまった。やっぱ人間こういうのが好きなんだろうな。

以上!

この戦、非はそちらにあるのでは…

水色チェックマークのあるタイトル作品のネタバレを含みます

FGOのガチャに千利休(星5バーサーカー)が?
へうげものを履修していれば、やっぱり茶人は狂人ってことが、はっきりわかんだね。

最近は『面白くて眠れなくなる地学』という本を読んでいる。

読書:よだかの星 / 宮沢賢治

水色チェックマークのあるタイトル作品のネタバレを含みます

子供向けのコーナーで見つけた本。よだかの星は今までちゃんと読んだことはないのだが、昔、岩手県花巻市にある『宮沢賢治童話村』へ行ったことがあり、なんとなくうっすらよだかの話を覚えていた。そのため、この本の表紙を見た瞬間、よだかの星って人間の話だっけ!?と思わず手に取ってしまった。もちろん違う。

よだかは、実にみにくい鳥です。
その見てくれから周りの鳥たちからも疎まれ、特に鷹からは「おまえが俺と同じ「たか」だなんて」と嫌われており、改名か死かを迫られる。よだかは、泣きながら生き足掻こうとして必死に羽ばたき続け、という子供向けの絵本の内容でサクッと読めてはしまうのだが、本全体から「そういえば宮沢賢治はこういう世界観だし、死生観だったな」と思い出させる雰囲気がすごい。とにかく字を目で追い続ける小説に没入する感覚もいいが、たまには、絵本の行間を読み、想像力を膨らませながらゆっくり目で追う絵本もいいなと思えた。

読書:知的思考力の本質

水色チェックマークのあるタイトル作品のネタバレを含みます

おじいちゃんたちが、おじいちゃんが好きそうな教育や教養についての話をしている……みたいな対談本をパラパラ読んでいたところ、急に「小説の『リング』が賞に落ちたおかげで、賞金1000万円で著作権ごと買い取られずに済み、ドラマ化、映画化、ハリウッド化の権利で今ウハウハ」みたいな話が出てきて盛り上がってきた。エー!?リング・らせんの小説を書いた鈴木光司先生と、ベストセラー翻訳者の竹内薫先生でしたか〜〜!『超圧縮 地球生物全史』、気になってたんですよね〜〜!(媚を売る)(権威に屈するな)

知的思考力の本質 / 鈴木光司・竹内薫

そういうわけで、そういうお二人が「知的思考思考力について考えていこうぜ」というテーマで対談した本。「ウーン?正直言って首肯しかねるな……」みたいな感想と「なるほど!」みたいな相反する感想が行き交う反復幅跳びした。以下、メモ。

・西洋思想は、真善美というような哲学的な問いに始まり、突き止めてゆくと最終的には科学に行き着く傾向にある。これは一神教のエリアであることが関係しているのでは?突き止めれば、必ずそこには一つの真理がある、という前提がある。東洋はというとアニミズム、すべてに霊魂が宿り、それをあるがままに物事を受け入れる。事象に対して「こういうものだ」とただ受け入れ、観察し、外の現象の理由については掘り下げずに終わる。西洋的な価値観に見る理論性と、東洋的な価値観から生じる情緒性、その両極端の狭間にある中道を目指してブランコのように揺らぐことが本懐なのでは?

・また、西洋・東洋に限らず、陰陽(インヤン)的な対は多々ある。男性・女性、右脳・左脳、コト・モノ、肉体・精神。どちらか一つが優れているのではなく、互いに影響し、動かしあい、相互関係の中にある。どちらかが偏ることは、よい状態だと言い難い。

・脳のニューロンとニューロンを繋ぐハブの下り、使われないニューロンは萎む、この辺りは前読んだ『脳の血雨を書き換える』と通じるものがあるな。知識Aと違うジャンルの知識Bがハブで繋がって、ひらめいた!っていう瞬間が私は好きだな。

・フィードバックは学習の本質。間違いの方にこそ、気づきがある。

鈴木「視神経というのは、脳が頭蓋の外に向かって延びていったようなものです。言ってみれば、「外部に飛び出した脳」、恐るべき情報収集器官です。視力を獲得するために、肉体内部の自己組織化に外部からの光が強く作用した。 要するに、内部と外部、 両者の共同作業が必要であったと感じてならないのです。」

知的思考力の本質 P178

以上。

鈴木先生の小説『エッジ』が読みたくなったし、竹内先生翻訳のサイエンス書『超圧縮 地球生物全史』も読まねばなるまい。

読書:脳の地図を書き換える / デイヴィッド・イーグルマン

水色チェックマークのあるタイトル作品のネタバレを含みます

脳の本を何冊読んでも、自分の脳がより高度になる訳ではない(戒め)

脳の地図を書き換える / デイヴィッド・イーグルマン

スタンフォード大学の神経科学者が脳について語っている本。まだ若く脳の可塑性が保たれている状態なら、人は脳の半分が除去されても、十分に生活することが可能である。盲目になった人間は、肌で音を感じるし、視野情報を扱う脳の領域は点字を読む際にも活性化するようになる。そのように、「脳は絶えず自らを改造する汎用的パターン認識器」として捉え直すことを著者は提唱している。

以下メモ。

・当初学者は、人間の遺伝子は複雑で、数にするとおよそ数十万個はいると決めてかかっていたが、実際には二万個だった。人間が生まれた時、脳の台本を前もってすべて書いてはならず、基本構造だけの状態で世に出る。その基本構造だけを持ち、精緻にして行くことは外の世界に任せるのだ。このため、出産時の人間の脳は著しく未完成であり、完成させるには世界その相互作用が欠かせない。

・脳は課題解決装置だとする仮説がある。つまり、脳が気にかけているのは、何かしらの課題を解決することであり、その解決のために用いられる情報が、どの感覚経路を通って届けられるかは関係がない。目が見えなければ、肌で見ても良いし、音で見ても良い。脳の可塑性が保持されている限り、問題解決に適した状態に作り替えようとする。

・しかし、世間の定説では、歳をとると頭が固くなるとされる。脳は、既存の内部モデルと現実との差異があればあるほどそのギャップを埋めようとして改造をする傾向にあるのだが、歳を取ると、物事の予測を立てたり、スルーしたり、自分の解釈の応用で現実の出来事を収めてしまうことが上手くなるため、若い頃ほど脳を書き換えなくても(頑固なままでも)問題は解決できることになる。

・ネルソン提督は、右腕をなくし、幻肢感覚(存在しない腕がまだあるように感じること)から、「これは死後の生を議論の余地なく証明するもの」だとした。つまり、実際の肉体がなくても、肉体があるように感じられたことから、死後の霊体を信じられた。しかし、幻肢感覚は、まだ、右腕の感覚の入出力を受け付ける脳の領域が残っていることに起因すると思われる。

・使われない脳の領域は、徐々に他の用途に使用するために乗っ取られる。この脳の土地をめぐる領土の競争問題に関連する話として、一つ、夢についての仮説がある。地球は自転しているため、大体12時間サイクルで、生物は闇に放り込まれることになる。この間、脳は視覚視野を満足に使えなくなる。脳は数十分でも変わってしまうため、視覚を重要なセンサーとするならば、常に視覚視野を刺激することが望ましい。夢を見るのは、視野の脳領域のシェアを奪われないためのものでは?(これが面白かった)

・「あなた」と呼ばれている存在は、経験を入れる器であり、時間と空間から小さなサンプルが切り取られて、その中に注がれる。

面白〜!!