「2022年8月」の記事一覧

山を舐めると死ぬ、それはそう

水色チェックマークのあるタイトル作品のネタバレを含みます

孤高の人1〜17巻 / 坂本眞一、新田次郎

かなり昔に、いつか読むぞリストに突っ込んでいた漫画。この本は、もともと実在の登山家をモチーフにした原作の小説があるっぽく、それをアレンジして漫画化になったっぽい。

確か登山家の主人公が一人山に挑む感じで、ヒロインが風俗落ちするみたいな事前情報は仕入れていたのだが、まあまあその通りの内容だった。途中まではなんだか爽やか青春部活ものっぽい雰囲気があったので、「おや?もしかして違う漫画読んでる?」と首を傾げたら、急に、マジで急に、地獄の道に行くじゃん。なにこの急展開の角度のエグさ…!?と思って読み終わって調べたら、やっぱ途中から原作変わっとんのよ!道理で!

恩師は死ぬし、出てくる連中の大半がクズだし(1巻で出できたヒロインは風俗落ちして、ライバルポジションの男は詐欺師オチ、命を預け合う仲間の裏切りも多々)、バトル漫画よりも多く人が死ぬし(登山仲間は大半が死んどるが!?)、も〜〜〜!!最後まで信じられるのは嫁と大学の先生だけ!!こういう人間関係のクソみたいなしがらみのある下界を振り切って、ただ一人命をかけて山を踏破する瞬間にすべてを賭けようとした主人公の気持ちは分からなくもない……と言いたいところだが、主人公も主人公でかなり極端な思想なので、まあ……山以外何もなくてよい、という思考の脆さは見ていて不安になったし、案の定社会でうまくやっていける気配もなくて、ずっと見ていて辛かったが、うん、うん……。でも、途中で「俺は不死身の森文太郎だ」みたいなの出てきた時、金カム思い出して笑ってしまったな(おそらくこの登山家の方が先)

Youtubeでもたまに登山家の遭難事件の動画とか見たりするんだけど、見たものの半分以上が登山家が死ぬ有様だったりするので、私は、絶対に山には登らねえぞ!という強い意志を育んだまま読了した。無理だよ山〜〜〜〜クマもいるんでしょ〜〜〜〜!?まあでも、この漫画はとても面白かった。絶対山には登らないが。

同行(アカンパニー)、オン!マサドラへ!じゃないのよ

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1日外出録ハンチョウ 113話『巨父』

ヤングジャンプと間違えて、うっかりヤングマガジンを手に取ってしまったので、ついでにハンチョウを読んだ。今回は、寝る前にイマジナリー息子の成長過程の妄想をしているといい睡眠導入になってよいと言う話でメチャクチャ笑ってしまったし、メチャクチャ身に覚えがあった(私も数年使いまわしているイマジナリー幼児がいる)。

そうなのよね、寝る前の妄想って、とりあえずなんでもいいから適当にスタートして、そのまま気がつけば入眠時特有の胡乱な方向に入ってゆき(妄想中の班長が急に「同行(アカンパニー)、オン!マサドラへ!」とか言い出したのオモロかったし、あれ?これヤンマガじゃなくてやっぱりヤンジャンか?ともう一度雑誌のタイトルを見直してしまった)、そっから夢に睡眠に……というのは、確かにみんなやってるライフハックなのかも。作中では、幕末にタイムスリップして歴史人物に訴えかける入眠妄想から始めるもの、異世界で無双するもの、麻雀で無双するもの等とバリエーションが豊かである。

班長も、別に家族や息子が欲しいわけではないのだが、よく眠られるからって理由でイマジナリー使うの面白いな。イマジナリーが家族なのも、寝る前にイチイチ新しい設定を考えるよりかは安定したいつものシチュエーションを使い回すという感じで使っているようだった。息子に限らず、娘、犬、対象は家族であればなんでもよさそうで、大体20日間で個体の主要イベント(授業参観、パパ大好き期、反抗期、大学、就職)をこなし、ゴールの自立まで見届けると、新しい家族を拾い直す(お陰で今は100を超えるイマジナリー家族の残骸がある)と言うオチも良かった。いやー、途中で単行本買わなくなってしまっていたけど、久々に読むとやっぱ面白い漫画だよな。続きも買い足すか。

推すなら七海がいいって言ったじゃないですか?先生ェ!

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ジャンケットバンク 第1話〜第86話 / 田中一行

最近、私のTwitterのタイムラインでよく見かけるジャンル……と言うオタクありがちな理由で原作に手を出した。単行本で追い切れる箇所は一通り追って、残りの話も気になったのでヤンジャンアプリを入れて最新話まで一通り見た。まだギリギリ一気に追い切れる範囲でよかったよ、100話超えてたら流石に追いかけるのを諦めただろうからな。

そして読んだ感想なんだけど、全く知らん銀行員のボーイが主人公であったことに驚愕の一言〜〜〜〜(!?)。エッ!?ジャンケットバンクが好きなオタクのタイムラインからは一切情報が出てこなかった人物がまさかの主人公…ッッ!!二次創作がきっかけだとこう言うことあるよな、ある…!とはいえ、久しぶりのオタクあるあるだったので笑ってしまった。

物語はというと、裏でギャンブルやってるヤベー銀行に就職してしまった主人公が、もう一人の主人公であるところのヤベーギャンブラーのジャンケット(ギャンブラーの担当員)になり、デッドオアライブの世界に足を踏み入れてしまった話。そこそこに人が死ぬので、「これは下手に推しを作ると死を見る感じだな……呪術廻戦で同じ目にあった人間死ぬほど見てきたやつぞ……」とは思いつつ、獅子神と言う序盤に出てくる噛ませポジションの、しかしプライドと向上心が高いギャンブラー(投資家)が気に入ってしまった。

このキャラクター、主人公たちとの対決後も、ちょこちょこ日常回やらなんやらで出てくる。直近では第85話、彼がお手製のカレーを作っている等家庭的なところを見て、これまたニコニコしていたのだが、その次の話、最新話の第86話、86話で、エ!!!?どういうこと!?どうして急にこんな地獄が現界した!?!?やだあ〜〜〜〜!!死なないで城之内くん〜!!!!!

続きが気になるので、しばらく追いかけていきたい。

そういや合歓の花ってちゃんと見たことないかも

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歌集 合歓の花 / 阿形志津

図書館で借りた、個人の短歌をまとめた本。本屋では買えないタイプの個人が発行している同人誌(印刷所と著者の住所が奥付にあるやつ)だったので、とても懐かしく思い、借りてしまった。いやー、地元の情景を短歌にしているってすごくグッと来るものがあるな。明らかに見たことがある場所の写真とともに、ここで生まれ育った人生と情景で短歌作りました!と言われると、なんだか気持ちリアルに思い浮かぶんだよなあ。最近、地元の民話を聞いたりと、地元由来のあれこれに興味を持ちだしているんだけど、この行動は当たりだったと思う。メチャ楽しい。気に入った短歌は以下の通り。

葉を閉ざし夕べをひそと咲いている合歓咲く七月わが生まれ月

さざ波に 映る夕日の影ありて夢にたつ旅の海は恋しき

芽吹くもの紅も緑もみな淡く春の光を彩りてゆく

歌集 合歓の花 / 阿形志津

シンプルに、私も植物とこの辺りの海と夕日が好きだなーと言う趣向の一致と、この方、孫のことや福祉のこと、戦争、亡き夫、旅路の思い出を短歌にしているページもあったりで、短歌で人生を綴っているのすごくいいな〜とても好き〜と思ったりした。芋蔓についての話を見た時は「ああ〜!静岡の民話で見たやつ!この辺り、芋関係の話があったよね!」と、以前読んだ地元の本から得た伏線がちゃんと回収され、なお楽しい。終始しみじみと読むことができた。

この本とは全く関係ない話をするんだけど、合歓といえばeuphoriaだなあ。以前、ペルソナでも、同じように「眠る少女が見る幸せの夢が、あまねく全てに伝播する。その少女が夢を見ている楽園への扉がどこかにある」みたいな設定があったことで、このゲーム共通の元ネタ絶対にあるはずやん、なんだろう?イギリス小説っぽい……と思ったまま、それから先一向に情報を集められず保留になっていたんだけど、案外日本の小説とか民話なのかもしれないな。