ジェンダーの10フィート棒
著者が常々「女性に限らず、性というのはデリケートなテーマであり、炎上の可能性があるので避けたい」と思っている『女』テーマについて、毎回地獄のような直球なお題(キラキラ女子、ゆるふわ女子、干物女、オタサーの姫、スピリチュアル系、お局様、女友達の作り方、ババアとの付き合い方など)を出してくる担当に四苦八苦しながら、なんとかそれらしいエッセイを書きましたみたいなコメディタッチのまとめ本。たぶん、担当はあらゆる女に親を殺されたんだと思う。妙に殺意の高い担当の微笑みに対して、著者は引きながらも「ゆるふわ女子みたいな、コミュ障に対しても人当たりが良さそうな女に、いつも助けられてるのは俺たちの方なのでは?」「担当のこの一定のテンプレート女に対する憎悪はどこから来ている?」「そもそも○○系女子というのは頭の中以外に実在するのか?私は見たことがない」など、踏みとどまって述べているのが面白い。片方がブレーキをまともに踏まないやつだと、もう片方は補助ブレーキを横から踏まざるを得ない運転免許合宿の教官みたいな組み合わせ。
でもまあ、女ってテーマで私も考えたことはあまりないな……あまりないというか、20代の頃までは自分の性を取り巻く環境についてアレコレ悩んだかもしれないが、30代に入ると過去の9割を忘れて生きいけるようになったというか、ひとりぼっちに最適化した環境にいるから女も男もないというか……。
人間生きることは苦であるらしいから、もう性別なんてオマケなのよ。地獄のバリエーションの問題。女には女の地獄があり、男には男の地獄があるってワケ(?)。人間関係のクソみたいな悩みは極力避けたいとは思うけど、社会との関わりは絶対に必要だもんな。社会の人間のアレコレに対してバッサリ切り捨てるよりかは、できる範囲で悩んだり考えたりできる人間の方が最終的に人生楽ができそうだよなあ、となんかそんなボンヤリした考えに至らせてくれる、著者の解釈が光る本だった。