年末年始の急激な体調悪化と帰省を言い訳に、随分と読書をサボることが定着してしまったが、なんとか伊集院静先生の本を一冊読めたぞ。
私が知っている著者の情報については、(全くの個人的偏見なのだが)LEONとかで掲載していそうな大人の男についてのエッセイを書いていそう、島耕作の著者と対談とかしたことありそう、という色眼鏡で曖昧なイメージだったのだが、この著書『君のいた時間 大人の流儀Special』は、亡くされた愛犬・ノボくんについてのエッセイをまとめられたもので、なんだかちょっと意外性を感じ、読み進めることができた。
内容としては概要以上に語るべきことはないのだが(本当にノボくんが家にやってきて育ち、老い、亡くなるまでのエッセイ)、犬という種族の家族を作るということは、家庭環境に大きな影響を与えるんだなあという、当たり前と言っては当たり前ことなのだが、その想像を補強する説得力のある文章でしみじみとさせられた。あとは、人間ではないが家族であるという範疇の対象についてのエッセイなので、家庭内の、限りなくプライベートであることを思わせる描写も多々あり、伊集院静先生に対する印象が少し変わったかもしれない。
とはいえ、近所の犬の飼い主を「人妻」「新妻」と呼んだり、「今まで付き合った女たちの大半に犬の爪の垢を煎じて飲ませたい」「私が下半身のことでこれだけ厄介ごとを抱えたり悩んだりしたんだ」などと、私の中にある『昭和のオッサン偏見像』もそこそこに補強してくれたので満足したりした。愛犬が亡くなられることが前提なので湿っぽい話になりそうだものだが、そこは今まで500冊の本を出してきた先生、気持ち軽く読ませてくれるので、犬好きなら共感できるエッセイなのかも。