本のサブタイは『4063の科学データで導き出した、あなたの人生を変える最後の時間術』。いわゆる生産性や時間効率を高めるとされる『時間術』に対する、近年の科学的見解についての本。
著者の方のファンでここ数年サブスクに入っているので(ニコニコのパレオチャンネル)、もちろんこの本は予め予約をして買ったのだが、なんだか途中、ワークショップ的なところでモタモタと時間がかかってしまった。私はワークショップに対する苦手意識が本当に強い。しかし、具体例がなければ無いで「これをどうやって落とし込めば…」と迷子になる可能性もあるのだがから、結局は本をなんとか読むしか方法がないのだなあ……。
以下は、本を読んでいた時に行った、出版社から出ている『時間感覚タイプテスト』の結果になる。
人生の喜びを失い、自分を過信して失敗する私の未来はどっちだ。いざ鎌倉!
この本の面白いところは、「時間術」という世間の認識に対して、以下の回答でバッサリ切ったところ。
・真実1:時間術を駆使しても仕事のパフォーマンスはさほど上がらない
・真実2:時間の効率を気にするほど作業の効率が下がってしまう
・真実3:「時間をマネジメントする」という発想の根本に無理がある
どれも「そうなんだ!?」といったん驚いてから、「でも確かに言われてみればそうかもしれない、時間の効率を気にするってことが、すでに作業全てに加算される認知の負荷に繋がるのかも」と思えた。
私は『規則正しい生活』みたいな、マネジメントされた自律、またはセルフコントロールについて興味関心があるのだけれど、時刻という数値でスタートとエンドの区切りを行うことについては本当に苦手である。自分で定めた日々の学習ノルマはあるんだけど、夜20時 学習〜みたいなスケジューリングは破りがちだったりする。ただ、自分のタイミングで「おっと、そろそろしなきゃ」と思った瞬間にすることは出来るので、なんとか日々帳尻を合わせられているだけだとも言える。
そんな中、本に書かれていたような『スケジュール帳・ToDoリスト・締切設定などの大半の時間術は、科学的に大した効果が認められていない』『時間術が高めるのは、効率化というよりも幸福感である』との記述に、「おっと…!?話が変わってきたぞ」と助けられたような気持ちになった。
以下メモ。
・時間術が与えるものは「セルフコントロール」を満たすもの、つまり自分の人生を自分でコントロールできているという『認識』が満足や幸福をもたらすのである。
・時間の効率化を優先すると、想像力が下がる。判断力も下がる。問題解決能力も下がる。(多分、効率化ということは、すでに無駄のない作業という手順が決まっているということでもあり、考える余地や想像力を膨らます時間が排除される?)
・時間術で有効なのは『生きがい』かもしれない。人生で大事なことが明確だった人は、ストレスに強く、幸福感が高く、健康的で、判断に迷いにくい上、各々のタスクの重要性を見極められるようになり、必要なタスクを選ぶ傾向にある(重要度は低いが緊急性の高い仕事を優先しすぎず、長期的に取り組むべき緊急性の低いタスクにも着手できる)。
・効率的に生産性を高めたい、将来的なメリットを得たいと思うあまり、長期的に見て人生を狂わせてしまうことがある。
・時計に頼ってスケジュールを区切ることは、創造性やセルフコントロール感を減少させる(時間で区切ることは、自分で決めているようで、自分ではない外部の何かに急かされているのと同じ?)。スタートとエンドのタイミングは自分で決めて良い。あなたが時計で時刻をチェックしているとき、時計も時刻であなたをチェックしているのだ、みたいなホラー感ある。こわ。
・認知の忍耐とは、あいまいなことを保持し続けられる力である。(みんなすぐに答え得て楽になりたいもんね…)
時間術は、効率化や生産性についてそこまで有力な手段ではないし、効率化とか気にしすぎると「このレシピに書いてある『弱火でじっくりコトコト1時間』の工程、『強火で20分』にできんか!?」みたいな雑念が生まれがち。作業に没頭できることが一番人生に貢献しそうな状態なのに、その雑念で濁すよりは、生きがいを自分に明示して、判断の指針にした方が、長期的な人生全般の幸福度に対して、ほぼ間違いなく効果がある、みたいなニュアンスを捉えた。普段ビジネス系の本は見ないのだが、この本はそのカテゴリーを越えたとても良い本だった。