『ちびくろ・さんぼ』については下記を参照。
桜の樹の下にはコスパが埋まっている1990年出版の本。日本での『ちびくろ・さんぼ』関連の絶版が相次いだ時に「なぜこのような事態が?私たちは差別問題をどのように考えてゆくべきなのだろうか?」と問題意識を持った径書房編集部の方々が出された本。
へえ〜!となったところを箇条書きで描いていく。
・原題『The Story of Little Black Sambo』を『ちびくろ・さんぼ』と訳したのは、当時の岩波書店版常務のアイディアで、漫画『のらくろ』から来ている。
・欧米では「ちびくろサンボ」の主人公サンボはアフリカ系黒人の絵柄で描かれている。しかし作者はインドにいた頃に描いた絵本だし、そもそもトラはアフリカにはいない。インドにはいる。絵本には「バター(あるいは、インドでいう「ギー」)」と注訳があるので、主人公のサンボはインドの少年の物語っぽい(しかし明言はされていない)。日本はイギリスの絵本を参照したっぽいので、普通に黒人で出している。
・日本での絵本絶版のきっかけになったのはサンリオの『サンボ&ハンナ』という黒人モチーフのグッズ。続けて、そごうデパートの黒人マネキン。これがワシントンポスト紙の目に留まり、「声も出ないくらい差別的」と大々的に批判を浴びた(サンリオは、差別についての指摘があった日にすぐ販売中止と回収を行なった)。アメリカでは「サンボ」というのは黒人(アフリカ系)蔑視の表現として使われている。この「サンボ」という名称を問題視した団体が、『ちびくろ・さんぼ』も差別・人権問題であると出版元へ批判をするようになり、慌てた日本の出版社は一律絶版にとした。ちなみに、日本では、「サンボ」というのは『ちびくろ・さんぼ』の絵本の男の子を差しており、蔑称だという認識はなかった。ここの違いで揉めたと言える。
・ちびくろさんぼの父は「ジャンボ」、ちびくろさんぼの母は「マンボ」。これらで「mumbo jumbo(訳:わけのわからない呪文、ちんぷんかんぷん)」となるので、一家三人揃ってアウトなのは常識というのが欧米基準。「サンボ」の蔑称は、スペイン語の「ZAMBO=猿、がにまた」を語源としているという話が定説らしい。これを知らなかったのが日本(本当か?流石に一人くらい指摘した人いたのでは?)。
・作者は白人のイギリス人女性で、二人の娘のために描いた絵本だとされるが、有色人種に対する差別意識があったのでは?と言われてしまっていた。
・そして急に、インドのシェルパ族の言葉には「サンボ=優秀な」「マンボ=たくさんの」「ジャンボ=大世界」という意味があるらしく、サンボ・マンボ・ジャンボの類の名前の人は結構いるという爆弾が投下される(おい!!!!今までの話が全部変わってくるじゃねーか!!!!!)
・チベットのメジャーな言語にも同じような表現があり、お坊さんが全員サンボの名前を持っている寺院もある。ジャンボはサンスクリット語由来(!?!?)、マンボも恰幅がいい母?(たくさん食べる、たくさん子供を産む)みたいな意味合いっぽい。
欧米「サンボは差別用語だからダメだよ!」
日本「あっはい」
インド・チベット「勝手にサンボを差別用語にすな」
ヒュウ〜死ぬほどややこしい時代背景!話し合え!今日は、本付属の小冊子+60Pまで。
全然関係ないんだけど、この小冊子を入手するにあたって書かれていた文章が、あまりにも太古の昔に見た『同人ペーパー取り寄せの儀』の文面で笑ってしまった。
径書房くん「『ちびくろサンボ速報』は、送料のみ実費でお送りします。ご希望の方は切手を貼った返信用封筒を同封の上お申し込みください」
私「いつの時代の話!?!?!?!?」