読書:名画のティータイム 拡大でみる60の紅茶文化事典 / Cha Tea 紅茶教室

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世界史系のコンテンツを見ていくと、紅茶・コーヒー・チョコレート・お砂糖=奴隷!植民地!コンキスタドール!という身も蓋もない連想ゲームをするようになってしまうのだが、それはそれとしてお茶文化にはロマンがあるよねというミーハーな気持ちで手に取った本。超有名なイングランドの貴族ものの海外ドラマ『ダウントンアビー』でも、たびたび貴族のティータイムという文化を見せつけてくれることで盛り上がったような記憶があるので(うろ覚え知識)、やっぱこの手の雅な文化は世界中どこ行っても憧れの武器となるのだなあ、としみじみ実感した次第である。

名画のティータイム 拡大でみる60の紅茶文化事典 / Cha Tea 紅茶教室

女主人は客を招き、すすめた通りに着席した客へ、笑顔でお茶のおもてなしをする。ティーフードに顔を綻ばせる少女、上目遣いで周囲の状況を伺う貴婦人、エチケットマナーを武器に社交する女性たち、目を光らせる使用人たち。茶会を通して財政状況、人となり、そして今後の見通しを見定めるこのコミュニケーション文化は、見目の良い装飾に彩られ、光景はさながら一枚の絵画のよう……みたいな、こういったご婦人たちのお茶の描写、なんだか知らんがめちゃくちゃ見覚えがあるぞと思っていたら、急に気づいた。これは、なろうの悪役令嬢系小説に出てくるヤツそのままの描写だ〜〜〜!道理で既視感しか感じなかったワケだ。悪役令嬢系、必ずといっていいほどお嬢様方のティータイムが出てくるもんな。進研ゼミで何度も見たやつだったか〜。とまあ、思わず本の意図しない方向に意識が向かいつつあったが、気を取り直して要約すると、そんなご婦人たちの様子を描いた名画の数々を紹介してくれるのがこの本である。

西洋のお茶文化の見目麗しさを楽しみ、まあ見覚えある絵画の一つや二つ出てくるだろうなと楽観しながら読んでいたところ、マジで見覚えがのある絵画が一つも出てこないまま終わってしまい、自分の美術における教養のなさにはビックリしてしまった。

ともあれ、そんな絵画たちの紹介を見つつ、それを描いた当時の文化(アフタヌーンティー、温室、東洋からの茶文化や茶器の輸入、女主人や客人のもてなしについて、茶会の社交や目的、家政のあり方、銀食器が象徴するもの、シノワズリー、砂糖、サロンなど)の詳しい説明を見ていくのだが、その度に脳裏に「これも、なろうの悪役令嬢系で見たことあるやつ…!」と不埒なコメントがよぎってしまい、なんだかもう本当に著者には申し訳ない気持ちでいっぱいになった。まあ、純粋にティータイムの文化を象徴する絵画やその背景を眺めるだけでも十分ニコニコできるので、西洋のティータイムにキラキラした憧れを感じる心を最大限に保ちながら(植民地や奴隷のことは極力思い出さない)、この本を読むのがよろしかろう。

あかね

静岡に住む、30代後半のものです。当時何に興味かあったのかを振り返るとき用に、読んだ本やYoutube動画、考えたことなどを書いていきます。