「2022年」の記事一覧

読書:モーム語録 / ウィリアム・サマセット・モーム、行方昭夫

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ウィリアム・サマセット・モームの作品集からのハイライトを抜き出した語録本。今でいう、Youtubeでいいところを集めた切り出し動画みたいな位置付けかとは思うが、さすが、大体の人間がうっすらタイトルだけは聞き覚えのある『月と六ペンス』という小説で有名になった作者の語録だけあって、大変良かった。

モーム語録 / ウィリアム・サマセット・モーム、行方昭夫

ウィリアム・サマセット・モームは昔の大作家、具体的にいうと1874年〜1965年(没91歳)の間に活躍した方とのことで、今の時代を生きる私(イキリ)と感覚が合うものか……?と、読む前は少し不安視していたものの、大半の価値観にはしっくりくることが多くて、さすが大作家だと思わされた。

この本は小説や自伝から抜き出された語録集なので、前後の文脈は分からないことが多いのだが、持ち前の人間観察眼を武器に、簡素に明確に、誰が見ても分かりやすい文体で、シニカルではあるが度を過ぎない表現でスラスラ書かれた文体・内容はとても理解しやすい。本当に売れてる作家の力量ってこんな感じやで、と突きつけられた感じがした。

そこそこに厚みのある本のだが、なんとか読み通せたのは、初っ端から『幸福とは、快楽の持続した状態であるとしか定義できないのだ(P4)』ときて、「わ、私と同じ価値観だ〜!!」とテンションが上がったことが要素として大きい。人生は幸福になるためにある、という考えは捨てて良い。幸せでない、などと幸福の尺度で全てを図ることはしなくて良い。大体の不幸には、なんらかの埋め合わせがある。幸も不幸も人間の人生の模様である、みたいなくだり、「Fateのマーリンはモーム読んだ?」みたいな浅い感想も芽生えるのだが、概ね共感はできる。

共感できないところは、やっぱ時代ならではの女への価値観と恋愛観に関する語録の一部かなあ。でも、「最も長続きする恋愛は報われぬ恋である」「恋愛がある限り、憎悪、悪意、嫉妬、怒りは必ず付き纏う」ところは、この価値観で書かれた小説読みてえな〜!と思わされたな。

「金銭とは第六感のようなもので、それがなければ他の五感もあまり働かない」という箇所は、暖房電気代をケチろうとして寒さに震えていた先日までの私を思い出すし、「私は苦悩が人を気高くなどさせないことをはっきり知った。苦悩は人をわがままにし、卑屈にし、ケチにし、疑い深くする。人を本来の性質より良くはしない。悪くさせるのだ」の件はブッダが苦行を否定したところにも似通って、素直に頷くことが出来た。

語録をパラパラと見るだけでも、確かに評判通りの、観察眼鋭い大作家だったんだなあというのが伝わってくる。著書『月と六ペンス』と引用の多かった『人間の絆』、読んでみるかなあ。

漫画:鬱ごはん 1巻 / 施川ユウキ

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漫画『バーナード嬢曰く。』で有名な著者の方のメシ漫画。WEBサイトに掲載されていた話はいくつか見た覚えがあって、その時は面白かったなあと感じはしたものの、特に買ったりはしていなかった。しかし……Kindleセール!還元ポイントつきます!とTwitterで情報が流れてきたため、何も考えずに脳死で購入ボタンを押した。ワンクリって便利だなあ…。

鬱ごはん 1巻 / 施川ユウキ

就職浪人中の主人公・鬱野たけしが、暗い気持ちで一人飯を食い、鬱々とした内省で終わる一話完結型の漫画(特に飯を食って気分が明るくなったりするような話にはならない)。おいおい無職で外食連チャンはなかなか勇気があるなと今になってこそ思えるのだが、20代の時は私も普通に外食してたし、無気力のままオートマチックにコンビニ弁当を毎日買っていたりしてたわ。自炊ができるようになったヤツの上から目線の驕りみたいなの出ちゃった。

面白かったところメモ。

・厭世的な思考の鬱野くんが、ただただ心の中でつまらん考えをしつつ飯食ってるだけなのだが、言語化能力の鬼って感じで大変面白い。なんかそういうの活かせる仕事ないの?

・わさび入りの寿司を食う時、鼻で空気を吸っておくと、つーんとしたワサビの刺激が鼻腔の空気のカーテンによって遮られるという豆知識を覚えた。今度やってみようかな。

・また唐突に出てくるやんけ「ちびくろサンボ」!!この絵本、死ぬほど擦ったの懐かしいな。

・食欲が湧かず、渋々何かを口に入れているという展開が割とある。マジでそんな人種いる?私は身体が許せば1日6食でも余裕だが?などと、あすけんの女に介護されてイキっている身としては抜群に共感できなかったのだが、だんだん鬱野くんにつぶやきに感情移入してきて、最後の方には「鬱気味だと食欲湧かないっていう人はいるらしいから……生きるためやり過ごす重労働のひとつって感じなんだろな……」くらいには思えるようになってきた。

・たまに飯が粗末な扱いを受ける回があるな。飯自体にはあまり欲望がない人間ってこういうコト…!

・あ!?お!?主人公、親から仕送りされてんの!?だから無職でも食う金があったのか!と思ったら「仕送りが停止されてしばらく経つが、なんの問題もなくフリーターとしてライフスタイルを成立させてしまっている」と話が続いて、鬱野くんと同じような表情になってしまった。

・鬱野くんのセリフの文字数が多いせいか、1巻を読み終わるまでに思ったより時間がかかるので笑ってしまった。コスパという意味では良いのかもしれない。しかしキャラクターが最初から最後まで確立されてるな……と思っていたら、かなりの割合で作者の実体験が元になっているそう。なるほど。

以上。面白かったし、2〜3巻も今ならKindleセール!と煽られているので、明日あたりにまた買うか。

雑談:寒さを甘く見て死ぬタイプの輩

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ここのところ急に寒くなってきたものの、「うーん、でもまだ我慢できないほどではないかな……超極暖のヒートテックを重ね着して、布団の中でも布団の外でも電気毛布を被れば凌げるし……何しろエアコン暖房は電気代が高いし……」という感想を抱き、気合いで耐えることを選択していた。
この状況に重ねて「寒いから布団の外に出たくない(暖房をつけていないため)」が合わさると、水分は取らないわトイレは我慢するわ、いざ起き上がると寒暖差で震え上がるわで、こんなの当たり前にしてたら確実に死に近づくという当たり前のことにダブルで気づき、今日からは心を入れ替えて、ちゃんとエアコン暖房を入れることにした。金をケチって寿命をケチるな!(自分に言い聞かせる)

アニメ:チェンソーマン 第9話 京都より

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数年前から週刊少年ジャンプを定期購読しており、当時連載中だったチェンソーマンの漫画も並行して読んでいたんだけど(その上で単行本を全巻買ってもいるんだけど)、アニメの方は「グロさフルカラーで地獄はしんどい」という至極真っ当で健全な理由で、まだ観てはいなかった。

チェンソーマン 第9話 京都より

私はマキマさんが一番めちゃくちゃに好きなんだけど……早川家も好きなんだけど……全編地獄だしな……と常に目を逸らし続けたのだが、ついに先日、私が一番好きなマキマさんのシーンがアニメで流れたと知り、遅ればせながらチェンソーマンのアニメを観たのだった。

で、出たァ!!マキマさん!!!!マキマさんの、理由のわからない死者蘇生からの罪人を使った呪殺コンボだ!!!!!!!!!!このシーンを見た次の日くらいに漫画一気に買ったの覚えてる!!マキマさん!!マキマさん!!!!!!!!!!!

「グロさフルカラーで地獄はしんどい」などと言っていた口で大はしゃぎしてしまったが、この訳のわからない、底の知れない、人外の女、みたいなキャラクターが昔から好きなんだよな。このシーンを見るたび、両手を叩いて喜ぶ猿みたいになってしまう。そして一回このアニメを見た感じ、思ったよりもグロ映像も割といけそうだったので、1話からちゃんと見直してみたいと思う。

読書:おはなし りょうり きょうしつ・6 こまったさんのグラタン / 寺村輝夫、岡本颯子

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2日連続で、こまったさんシリーズの続きを読む。
このこまったさんシリーズという児童書は10巻まで出ており、それぞれタイトル料理にちなんだストーリーが展開される作りになっている。今まで(1)スパゲティ、(4)オムレツ、(7)サンドイッチは読んだことがあるので、今回は(6)グラタンを読むことに。なんだかんだで全巻コンプリートできそうな気がしてきたな。

おはなし りょうり きょうしつ・6 こまったさんのグラタン / 寺村輝夫、岡本颯子

例によって、異世界に召喚されて、タイトルの料理であるところのグラタンを作ることになるのだが、今回はこまったさん(花屋の既婚女性)の旦那さんがメインで料理を作り、こまったさんはそれを口うるさくサポートする感じだった。この展開は初めてじゃないか?

今回の舞台(夢の異世界)は、旦那さんの趣味の電車の模型で、マカロニグラタンのマカロニのトンネルを抜けていく、といった情緒性はとても良かったし、久しぶりにマカロニグラタンが食べたくなったりもした。私も子供の頃、母親の作るマカロニグラタンが好きだったなあ。あと、親族と宴会をするときにカニの甲羅を利用して作ったカニグラタンも好物だった。カレーやシチューは断然肉がメインで入っていて欲しい派なんだけど、グラタンは魚介類だったかも……といったように、絵本を見て、懐かしい気持ちに浸るということが出来たのは、このシリーズで久しぶりかも。いつも我に返って野暮なツッコミをしていたりしたからな。